042:迷宮のオアシス
4人で入浴することになり戦乙女の話題から好きな食べ物など話題の移り変わりを経て僕が入りにくい話題になっていく……
「なぎささんは、胸が大きいのはお嫌いですか」
「ウタハさん。なぎさを誘惑するの止めてもらっていいですか」
胸を持ち上げながら見せつけていたウタハの頭を掴んで湯船の押し込む。押し込んだ先から口や鼻から出た息がブクブクと泡を立てて浮かんでくる。
「リリスさん。いいじゃないですか。身体も私の魅力の一つですから……」
「ふふふ。私を忘れてもらっちゃ困るのじゃ」
ウタハは酔っぱらっているように頬を赤くしている。いつもと違って今日は積極的に迫ってくる。それを見たユニは負けじとペタンコの胸を見せびらかせた。
「ユニは、これから成長期ですものね」
「甘いのじゃ。身体強化!なのじゃ」
リリスはユニの胸を見て安心したのかニコニコしながらユニに『成長期』という言葉を返すが、ユニはニヤリとして取り出した丸薬を高々と揚げて飲み込んだ。
ユニ少女のような姿から変態し大人の女性になっていく。
「どうなのじゃ」
ユニは顔一面に満悦らしい笑みが浮かんでいる
「なかなかやりますね。やっぱり胸があると男の人は喜びますよね」
「なぎさ。ユニは将来こうなるのじゃぞ。待たなくても大丈夫じゃぞ」
ウタハとユニは大きな胸を見せびらかせて2人で納得したように無邪気にじゃれあっている。
「ユニ、ウタハ。その辺にしておいてはいかがですか」
お風呂から上がったリリスの手にはデモンズアクスが握られている……! さらにバチバチとした雷がリリスの周りを飛び回る。
「ま、まま待ってリリス。雷をお風呂に落としたらみんな感電…… みんなが被害を……」
「大丈夫です。弱目にしておきますから」
お風呂の中に弱め (自称)の雷が落とされたのだった。
──ちなみにリリスはサキュバスなので、これからどんどん成長して一番プロポーションが良くなることは誰も知らなかった──
▽ ▽ ▽
テントを出ると朝日が眩しい……
スカイブ帝国の地下もそうだが、地下室は光量が少ないので薄暗い。この階にある天井の鉱石を素材にしたら素晴らしい地下室が出来上がるだろうと見るたびに考えてしまう。
「なぎさがそんな顔をしているときは素材のことを考えてるでしょー」
──見抜かれていた──
この先にある村を抜ければ地下26階に向かう階段がある。こういう初見の地では情報収集が鉄則。階段を下りる前に村に立ち寄り情報を集めておく必要がある。
この世界に来て情報収集の重要性を実感している。今までマスメディアから一方的な情報を受け取り、必要に応じてインターネットを使って調べてきた。自らが収集した情報を取捨選択する必要性については同じだが収集難度は段違いである。
この階にある村に名前は無く、トーナメント優勝者が何回も迷宮に潜っているうちに住み着くようになった者、この地の美しさに魅せられた者も加わり徐々に人が増えていったという。
冒険者はこの村で必要な物を素材や食料と物々交換をする。村民がこの階を中心に狩りで取得したアイテムやこの地で育てた肉や野菜などを提供している。
この地の民にとって食料は限られており貴重品だ。冒険者にとっても25階以降の食料補給をしたいという双方のニーズから価値のある商材となっている。
村を見て回っている時に気になるものを見つけた。
「輪っか…… なんだろうこれ……」
触ると、黄金色をしているが黄ばんでいる。触るとプニプニして何だか気持ちいい。例えるならシリコン素材で作ったリングだ。
「にーちゃん。これを気に入ったのかい。この階に初めて辿り着いた者が拾ったらしい。何に使うかは分からないけどなー」
なぜかこれを妙に気に入ってしまった。代々伝わる宝だと言っているが、ぞんざいに扱われているように見えるが…… 交渉の末、食料で1日分で譲ってもらうことが出来た。
村は思った以上に人が多く街の喧騒を離れのんびり生活をしている人々が集まっている。しかし油断してはいけない、そこの村娘も子供も年老いた老人達もトーナメント優勝者であり強者のオーラを感じる。
下の階層を目指す冒険者と村民でのいざこざも見られるが、冒険者は軽くあしらわれ「俺たちに負けるようじゃ先に進むのは厳しいぜ」と言われているが、先に進む実力が無い者への彼らなりの優しさなのかもしれない。
「おい! お前はウタハだろ」
体格(がたい)の良い男たちが声をかけてきた。男たちはウタハを取り囲むようにゾロゾロと集まってくる。どうやらトーナメントの雄姿(ゆうし)がこの地まで轟いているようだ。僕は緊張感を感じいつでも反撃が出来るように身構える。
「握手してください」
ガクッときてしまった。しかし端から見ているとアイドルの追っかけに囲まれているように見える。強面の漢が少年のような顔で握手を求めている姿を見ると、どの世界も人への憧れというのは一緒なんだなと微笑ましく思える。しばらく時間がかかりそうなので、漢たちはウタハに任せて村の中を見て回った。
ウタハがいない僕たちは、冒険者にとって名をあげる格好の餌食となった。名立たるチームを瞬殺したチーム『なかよし』を倒して名をあげようとする者たちが、神の啓示を掻い潜るために親善試合という形で挑戦してくる。
「相手をしてやるのじゃ」
ユニは血気盛んで挑戦に乗ろうとするが、ここで戦ってしまっては折角強さを隠してきた意味が無くなってしまう。力を見せるにしてももっとよい場面があるだろう。
しかし、あまりにも多くの挑戦者にユニのストレスは爆発寸前となってしまったので、隠れて丸薬を飲むことで大人の姿に変態し護衛役ということにして一緒に歩いた。
腰の剣1本で挑戦を受け続けるが、形容する必要がないほど一瞬で粉砕する。流れるような美しい動きに挑戦者は皆無になった。が…… それ以上に、大人ユニへのアプローチが酷くなり、ウタハ、大人ユニ、リリスの美女軍団を引き連れる僕への嫉妬心が酷くなっていくのを感じていた。
ウタハと合流しユニが元に戻ったことで、大人ユニの姿を求めて探し回ってる冒険者が続出した。何度も何度も居場所を聞かれたが「護衛に頼んだだけなので知らない」で通し、先の階に向かったのだった。
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