040:うたう戦乙女
トーナメントで優勝したウタハの祝勝会を開催することになり酒場へ向かっていた。すれ違う人々からは(ウタハのみ)注目を浴び握手やサインをねだられる。一度立ち止まってしまうと人々に取り囲まれてしまう。それを見た人々が集まり…… 噂が広がって人が集まり…… 2陣3陣と襲う波がウタハ人気を感じさせる。
全てが終わった頃には夜は更けこのまま酒場に行っても2の舞になりかねないので、スカイブ帝国の外に造った隠れ家兼訓練場へ見つからないよう闇に紛れて移動した。
祝勝会は酒場でのテーブルを埋め尽くすほどの食事からアットホームな自炊唐揚げパーティーになった。
唐揚げは大量のリト肉を一口大にカット。衣は卵と醤油少々に冷水を合わせて良く合わせたものに小麦粉を入れてざっくりまぜる。塩胡椒したリト肉にしっかり衣を纏わせて油で揚げる。揚げる。揚げる。揚げる。揚げげる。 ……10キロは揚げたのではなかろうか。
ツベャキの千切りを巨大な皿に敷き大量の唐揚げを乗せる。手製タルタルソールとンッモレを添えれば完成。
主食はンッパ。汁にリトのガラでダシをとったスープを付ければ完成!
唐揚げは例に漏れず大人気だった。大量に作ってあるので箸を休めず食べ続けても一向に底が見えてこない。
「うまいのじゃ。うまいのじゃ」
「これは美味しいですね。箸が止まりませんよ! また作ってくださいね。あっユニさんンッレモは自分だけにかけて下さいよ」
「ほら。ユニそんなに急いで食べなくても大丈夫だから。ウタハは鼻の頭にタルタルソースがくっついているわよ」
ユニは喉に詰まらせてみたりウタハは酸っぱいンッレモが苦手なのか直接かけられるのを嫌ってみたり、リリスが2人の面倒をみながら賑やかにパーティーが進んでいった。話題はいつしか戦乙女に……
「それにしても凄い人気だね。ウタハ」
「そうじゃの。ユニたちとはえらい違いなのじゃ。戦乙女ウタハ殿、約束を忘れておるまいな」
リスを思わせるほどに口いっぱいに唐揚げを頬張りながらウタハを指でつついて言い寄っている。そのしゃべりは口の中に収納されている大量の唐揚げで良く聞き取れない。
「やめて下さいよ。戦わせていただきますけど、戦乙女というのはハズカシイデス…… お願いだからやめてください……」
ウタハは涙目になって手をバタバタしている。しかし口内はしっかり唐揚げが収められモグモグしていた。
「ふたりとも食べるかしゃべるかどっちかにしましょうか」
大量の唐揚げがみんなの胃袋に収まりパーティーは終了した。あの量を一体どこに収納したのか不思議だ。6個しか食べられなかった僕には胃袋が異次元にでもつながっているとしか思えなかった。
食事が終わるとユニとウタハが約束の戦いを始めたる。ユニと僕は体力を吸わなくても身体強化ができるように特殊製法で丸薬を開発していたのだ。
丸薬を飲んで身体強化と共にプロポーションの良い女性に変態するユニ。最初から全力でいくようだ。
試合開始と共に角をハンマーに変形させて間合いを詰め先制攻撃を仕掛ける。ウタハは辛うじてかわすが、ハンマーが地面が叩きつけ大穴を開ける。その衝撃と破片でウタハは後ろに滑るように3メートル程飛ばされるがなんとか持ちこたえた。更にユニは槍で追撃する。ウタハは咄嗟にシルバーナイフでガードするがナイフは弾き飛ばされてしまった。
近接に不利を感じたウタハはバグ宙でユニから大きく距離を取って5本の矢を同時射ちする。ユニは弓で5発の矢を速射し全ての矢を撃ち落とした。ウタハは続けて5本同時射ちで追撃するも、ユニの速射が全て撃ち落とした。
「トドメなのじゃ」
ユニの同時射ち10本がウタハを襲う。全ての矢がウタハの服の端々に突き刺さり本人もろとも壁に貼り付けた。
「ユニの勝ちじゃな。まだまだユニには勝てないのじゃ」
「ずるいですよー。私は矢を10本しか持てないのにユニさんは無限なんて。それより降ろしてくださいよー」
ウタハは壁に貼り付けらたまま、ほっぺを膨らませてプンプンしている。ユニが武器化を解いたことで、ウタハを貼り付けていた矢が消えその場に尻から落ちた。尻もちをついたところがよっぽど痛かったのか丁寧にさすっている。
「ウタハ。君は十分に強いよ。ユニは慢心しないように考えてくれたんじゃないかな」
「はい。ありがとうございます。ユニさん私が慢心しないように相手をしてくれてありがとうございました」
「ユニは戦乙女殿と戦いたかっただけなのじゃ」
ユニはニヤリとしながらウタハに近づいて胸を前に出し横腹に拳をあてて『ドヤ』った。
「ウタハに弓で明日からの迷宮攻略をサポートしてほしい」
矢は細めにして矢筒に多く収納できるようにしてある。限られた本数で貫通させながら複数を射抜く練習を兼ねて戦ってもらう。
「それと歌ってもらえるかな」
「え! 急に言われると恥ずかしいです」
体をクネクネさせて頬を赤らめているウタハを説得して吟遊詩人として『自然回復の歌(リジェンダラリー)』を歌ってもらった。
♪私の唄を聴いて。私の愛する仲間たちよ。この言霊を纏いて常なる癒やしを与えたまえ…… ~リジェンダラリ~♪
聞き入るほど素晴らしい歌声。リリスもユニも聴き惚れている。歌の効果が発動したのか体が何か温かいモノに包み込まれた。
「素晴らしい歌だよ。後々に召喚魔法も試そう。今回は体力と魔力の自然回復を効果時間毎に歌ってもらいたい」
「自然回復は効果が薄いのですが、良いのですか?」
「今の歌はかなり効果が高いと思うよ。時間ごとに歌うのは迷宮攻略で効果を切らさずかけ続ける練習だね。どうしても時間経過や戦闘に集中していると歌い忘れちゃうからね」
「分かりました」
明日の迷宮攻略に向けて夜はこのまま隠れ家で就寝する。宿屋に戻ると、途中で人に見つかりウタハが取り囲まれてしまいそうだ。隠れ家にそれぞれの個室を『変質』した。全ての準備が整ったら就寝前の入浴タイム! みんなに声をかけると、「お先にどうぞ」と譲ってくれたので一番に飛び込む。
──それが作戦だったとは気づかずに
僕が入っていると、次々と裸になった女性たちがお風呂に入ってくる。ウタハは緑の洗礼後からプロポーションが良くなって目のやり場に困る。……ちがう意味で戦乙女と言いたい。それを見たユニは負けじと丸薬を飲んで変態したり騒がしくも楽しい入浴時間となった。
【物語解説】
ユニと開発した丸薬とは……
緑の水をゼリー化して身体強化に必要な1回分の体力を圧縮して硬化させてコーティングしたものである。ユニと1回分のゼリー量やコーティング素材のベストを何回も実験し研究した。
生産方法は、浴槽にゼリー化した緑の水を満たしてユニの角が吸った量を一回分として圧縮。それをコーティングする。この1回量を感覚で分かってしまうくらい大量に作らされた…… 一体浴槽何杯分作ったであろう。
ユニはそれなりの異空間収納を使える。丸薬で埋まってしまうくらい収納していた。
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