仲間との再開
028:新たなる旅路
「ユニ。大丈夫かい」
「楽しいのじゃ。この世にこんな楽しいことがあったとは知らなかったのじゃ」
ベオカに向けて旅立った僕たちは、ユニの牽く馬車に揺られて目的地に向かっていた。
ユニコーン化したユニが荷車を牽いて引いているが、本人の希望とはいえ罪悪感がある。
ユニは荷車を牽くのが楽しいと言っているが。そう言っているユニを信じるようにしている。
野営の時には、見張りをリリスと交代で行いユニには昼間の疲れをとってもらっている。特別扱いされたと思っているようでユニは「不公平じゃ」と騒いでいる。
昼間も夜も働きっぱなしは体にも悪いので押し通して休んでもらった。
……半分は罪悪感があったのかもしれない。
夕飯はシチューを作った。ガャジ芋とンッジンニとギネマタをカットし、タブ肉と共に炒めておく。
バターを溶かして温めたシウ乳を混ぜそこに小麦粉を振り入れダマが出来ないようによく混ぜる。それを炒めた食材に絡ませて水を注ぎ自作のコンソメを入れて温めながら良く混ぜれば完成。 ンッパを付けながら食べるのがお勧めだ。
ついでに刻んだ野菜に自作のマヨネーズをかけてサラダを作った。
料理は『変質』で必要な時に窯を作れば、鉄で作ったフライパンや鍋で色々なものが出来るようになった。 何より、リリスが火の魔法を使えることが大きい。
「このシチューとやらは美味しいのじゃ」
「なぎさの作る料理はあまり口にしたことが無いものばかりだから楽しみです」
「僕の料理は1人暮らしの時に覚えた男の料理なので雑な部分があるけどね。レシピを覚えてアレンジすれば繊細な美味しい料理になると思うよ──」
食後はやっぱりお風呂だ。
荷車に作ったお風呂を活用して僕と女性陣で別れて入浴する。
荷車は、ユニが牽く事を考えて車輪以外はかなり軽量化している。車輪さえ外せば僕やリリスでも持ち上げられる程である。
更に、ドラグナイト鉱石を混ぜているので耐久性も強くどんな攻撃も弾くほど丈夫で、中から鍵さえかけてしまえば、覗きも襲撃も出来ないだろう。
女性陣の入浴中は女子会のような笑い声や黄色い声が聞こえてほっこりする。僕も一緒に入ろうと誘われているが、ある程度の節度をもっていきたい。
女性の後は僕がお風呂に入る。
リリスとユニの残り香が良い匂いを漂わせている。おふろやで使っていた香草を使った洗身洗髪剤を活用している。
入浴は頭をスッキリさせ頭の回転が良くなる。
これから向かうベオカの道のりはメイシンガで買った地図が頼りだ。あまり正確ではないが、方向さえ間違わなければ街道沿いに進めば良いので辿り着く分には問題ない。
町から逃げるように旅へ出たので、盗賊や魔獣、獣やその他どんな障害が待ち構えているのかは分からない。
……しかし、皆を護りたいという気持ちだけは強かった。
──お風呂から出て寝る前のお茶会をしながら談笑をしていた。
「ユニ。角を武器化して戦うのって凄いね。今度、ユニに武器の訓練をしてもらおうかな」
「角の武器化は気に入っているのじゃ。ユニコーン族は物理攻撃系の種族じゃから小さい時から様々な武器の特訓をするのじゃ」
「その中でもユニは他の者と一線を画していたのじゃ。ユニコーン族でユニに勝てる者はおらんのじゃぞ」
「ユニの姿からは想像できないね。ハンマーはユニよりも大きくて重そうだし、剣や槍も随分と長いよね。よく振り回せるなって思うよ」
「大きいほうが強そうなのじゃ。なぎさの能力と違って作った武器の長さを変えられないから自分の気に入った長さで使うのじゃ」
「でも、武器としてなら変形は出来るから、再変形すれば長さの調整をすることは出来るのじゃ」
「へー凄いね。今度その武器見せてよ」
「無理なのじゃ。この武器はユニしか持てないのじゃ。角の主以外が触ろうとしても触れられないのじゃ」
「町でなぎさが角を触れたのは、ユニが落として時間が経ちすぎてエネルギーの供給が出来なかったからなのじゃ」
「そういえば、リリスも何か武器を使えるようにしてはどうなのじゃ」
「ユニ。わたしは1つだけ武器が使えるよ。私はこの武器を使うのが恥ずかしいのでもう何年も出していないの」
「見せて欲しいのじゃ」
「リリス。武器を使えたんだね。ユニを助けるとき使えたんじゃない」
「ユニみたいに動き回ってモンスターと戦うことができないの。振り回したり叩きつけたりしか出来ないのよ」
リリスが出した武器は、ゆうに2メートルは超える禍々しくも美しいシャープな斧。それを悠々と担いでいた。
「デーモンアクスっていうの」
リリスはその武器を軽く振り回し地面に振り下ろす。
ザンッ
──突き刺さる音と共に地面が大きくえぐれている。
リリスはニコニコしている。
「なぎさ、リリスを怒らせてはだめなのじゃ」
小さな声で僕に言った──
朝を迎えユニの牽く馬車でベオカに向けて出発した。
盗賊や獣など特に襲ってくるモノはおらずトラブルもなく街道を進んでいる。
「ユニ。馬車牽きありがとう。疲れたらいつでも休憩するね」
「分かったのじゃ。ユニの荷車を牽くのじゃ。この荷車は素晴らしいのじゃ」
「なぎさ。これは私のものじゃ。誰にも牽かせないのじゃ」
ユニはだいぶ馬車が気に入ったようで、暇があればキレイに磨いている。「こういうのは自分の心で拭くものなのじゃ」と言いながら。
ふろやの掃除を緑水に任せていた僕には、心が痛くなる言葉だ。
ユニの牽く馬車に揺られてベオカに向かうのであった。
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