024:ユニもいっしょ

 僕たちの力で魔人エリファスを倒したのだ!


「にーちゃん。やったのじゃ」

 ユニが抱きついて喜んだ。

 ──ユニの体は元の姿に戻っている。


「なぎさ、ユニちゃん。大丈夫だった?」

 リリスがかけよりユニと共に抱きついてきた。目には涙が溢れている。


「2人に怪我をさせちゃってゴメン。僕がもっと強ければこんなことにならなかったのに」

 なぎさは肩を落としてうなだれていた。


「にーちゃんが自分の力をまだまだ出し切れていないのじゃ。雰囲気で分かるのじゃ。ユニはにーちゃんの足元にも及ばないのじゃ。リリスねーちゃんにもかなわないかもしれないのじゃ」


「それと、助けに来てくれてありがとうなのじゃ」


「ユニ。僕の事はなぎさと呼んでもらっていいかな」


「わたしはリリスでお願いね」


「なぎさ、リリス。ユニの事はユニと呼ぶのじゃ」


「ユニ。さっきの魔人にさらわれた心当たりあるの?」


 なぎさの言葉を聞いたユニが思い出したように泣きだした。


「じーちゃーん……」

「ユニはこの状態だと普通の女の子と同じなのじゃ。魔法は使えぬが角の力で本来の力が戻り、体力をもらう事で強化が出来るのじゃ」

 ユニは滝で水を飲もうとしたときに角を落として滝に飲まれてしまったそうだ。本来、ユニコーンと角は離れていてもつながっているがどういう訳か全く見つける事が出来なかったそうだ。


「あっ、そういえばその角は滝裏の結界が張られた洞窟にあったよ」

  なぎさが思い出したように伝える。


「なるほどなのじゃ。それで角を感知できなかったのじゃ。角がないと力を抑えているユニコーン族にとって『死』しか待ち受けておらんのじゃ」

 ユニはユニコーンと角の大事な関係を力説する。


「そこで出会ったのが、じーちゃんなのじゃ。じーちゃんはユニを拾って面倒を見てくれたのじゃ。 いつも優しくしてもらって楽しい日々を送っていたのじゃ。そんな時にあのフードを被った男たちが現れたのじゃ。魔人の復活にお前の血が必要とか言っておったのじゃ」

「じーちゃんは必死でユニを護ってくれたのじゃが、人間の力では太刀打ちできずに殺されてしまったのじゃ」

「そしてユニは連れ去られたのじゃ」


「じゃあ、丁度その連れ去られている所を私たちが見つけたのね」


「ユニは一人ぼっちになってしまったのじゃ。これからどうすればいいのじゃ」


「もし良かったら一緒にどうかな」

 ユニの事が心配になりとっさに声をかけた。


「そうね。妹が出来たみたいで嬉しいわ。ユニが良ければ一緒に行きましょう」


「嬉しいのじゃ。もう1人は嫌なのじゃ」

 ユニは涙を流し抱き着いてきた。


 ……魔人エリファスの隠れ家にあった魔法系アイテムや素材などはしっかり回収させてもらった。


「ユニの角は凄いね」


「そうなのじゃ。ユニの角はどんな武器にでも変形させることが出来るのじゃ。しかも角を媒介して体力をもらう事で身体強化も出来るのじゃ。それにしても、なぎさは一体どんな体をしているのじゃ。かなり体力を吸い取ったのじゃが全く減っている感じがしなかったのじゃ。ユニはいままでにこんなに体力のある者に出会ったことがないのじゃ」


「わたしはサキュバスで力の源として精力をなぎさにもらっているけど、全く魔力が減っている感じがしないの」


「化け物じゃな」


「実は僕にもなんでなのかサッパリなんだよ。 使える魔法は水くらいだし」


「地面から突き出したのは錬金術なのか」


「内緒なんだけど、ヘルメスという錬金術師に『変質』という能力を授けてもらったんだ」


「ヘルメス……知っているのじゃ。紫のヘルメスじゃろ。珠に隠された本当の力を得たものは神をも凌駕するという伝説がユニコーン族の言い伝えがあったのじゃ」


 僕は紫の珠についてまだ何も知らない。まだ隠された力があるということか……

 今はまだ何も分からないけどみんなを護る力になるなら解き明かしていかなくてはならない。


 ユニコーン族のユニを加えた新たな生活が始まった。


 今日はユニが加わったお祝いとして夕飯はハンバーグを作った。


 みじん切りにした玉葱(ギネマタ)をみじん切りにして炒め、冷ましたものとタブとシウの肉を挽いたものを混ぜンッパの粉とシウ乳、ゴマタを粘り気が出るまで混ぜる。

 混ぜたものを拳大の大きさに丸めて小麦(ギムコ)粉をまぶして肉汁を閉じ込めるのがポイント。付け合わせにガャジ芋と人参(ンッジンニ)を油で揚げた。

 主食はンッパ。スープにリトの骨で出しを取りメカワを入れて完成だ。


 ユニはえらくハンバーグを気に入ったらしく大量に作った大半を平らげてしまった。なんか子供みたいで微笑ましい。


「ユニ。体力を取り込んで姿が変わったのはなんな?」


「それはじゃな……」

「──普段はエネルギーの消費を抑えているのじゃ。そして、角の力で本来の力を取り戻し、人の力をもらう事で身体能力を強化するのじゃ。ユニコーン族は、他者のエネルギーを受け入れる器が体内にあり、その器に体力を満たして強化をする訳じゃな」

「もともとその器は萎んでおるのじゃが、エネルギーを満たすと力が溢れて器が満たされるのじゃ。満たされた器は私の体では小さすぎので効率よく使える体に成長するのじゃよ」

「ユニの成長した姿可愛いじゃろ。プロポーションも良いし楽しみなのじゃよ。年をとっても体力をもらえばあの姿になるから、つがいになるならお勧めじゃぞ」

 

(……なぎさはユニが老人になる頃に自分自身が生きているのかの方が気になっていた)


「元々ユニコーンはパートナーを乗せて戦う種族じゃから、普段はエネルギーを抑えて必要な時にパートナーから体力をもらう。素晴らしい進化を遂げたじゃろ」


「ユニちゃん。なぎさのことどう思う?」


「そうじゃな。リリスと同じじゃ。言ってくれればいつ『つがい』になっても良いのじゃ。出会ってからの時間は問題ない。ユニは直感を大事にするのじゃ」


「………ユニコーンって凄いんだね」

 僕は、そういうのが精いっぱいだった。 



【物語解説】

 ユニコーン族はペガサス族と並んで希少種である。

 過去に神の騎士馬と言われるが文献はなく、この現世にその種族を見たものはいないと言われている。

 繁殖は人間と同様だが、種族同士ではなく別の種族と繁殖活動をして稀に同種族が生まれる程度の繁殖力である。

 ユニコーン族は角を武器に身体強化に特化した種族で、ペガサス族は羽により飛行でき魔法を得意とする。

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