023:覚醒した少女
「なんじゃこれは」
「じーちゃんは……じーちゃん……殺されてしまったのじゃ」
少女は混乱しながら泣いていた。
「落ち着いて。あなたは男たちにさらわれてしまったの。でもきっと助けるから安心して」
リリスは少女の両肩を掴みじっと目を見つめて優しく声をかける。そして少女を抱きしめた。
リリスと少女は僕とエリファスの戦いをじっと見ていた。
「2人で早く避難してくれ──」
必死に声をかけるが、2人とも逃げ出すことはしなかった。
「ぐぬぬ。魔法が効かないのか。あのにーちゃん強いけど剣は苦手なのじゃ」
少女は置かれている状況を理解したのか涙を拭いてなぎさの戦いをじっと見つめていた。
「ぐぬぬ……こんな時に角があれば……」
「角ってなに?」
「ユニはユニコーン族なのじゃ。じーちゃんと滝に魚釣りに行ったときに角を落として無くしてしまったのじゃ」
「角……どこかで見たことがあったような…… あっ!」
──リリスはメイシンガに転送された先に落ちていた角をなぎさが拾ったのを思い出した。
「なぎさー。滝で拾った角を頂戴」
リリスは大声で叫んだ。
なぎさはエリファスとの戦いを繰り広げている。しかし、剣技に苦手ななぎさは分が悪い。
エリファスから大きく間合いを取ってバックの中から角を取り出しリリスに投げた。
リリスは角をキャッチしてユニに渡した。
「無くした角ってこれかな」
「そうじゃそうじゃこれじゃ。姉ちゃんたち拾ってくれたのじゃな。よしユニも戦うのじゃー」
ユニは力強く叫び立ち上がった。
角をかざすと、角は美しい巨大なハンマーに変形した。 ──同時にユニが一瞬光った。
「角のおかげで力が戻ったのじゃ」
ユニはハンマーを握りしめエリファスに飛び掛かり振り下ろした。エリファスは寸前でハンマーを避けるが、着地したユニはさらに踏み込みエリファスに飛び掛かる。
ハンマーが刀に変形しエリファスの右頬をかすめて傷を作った。
エリファスはユニとの間合いを開くが、ユニは更に着地と同時に前に飛び掛かった。刀が槍に変形してエリファスの肩に突き刺さった。
苦悶の表情を浮かべるエリファスは大きく間合いを広げた。ユニは更に槍を弓に変形させて矢を放った。射た矢はエリファスの左頬をかすめ傷を作った。
エリファスの傷は修復されていくが表情は一変した。禍々しいオーラが体から溢れだし顔つきも表情も怒りに満ちていた。
「う~ん。やっぱりまだ力が足りないのじゃ。にーちゃん。ちょっと力をもらっていいかの。角の強化だけだと倒すのに足りないみたいなのじゃ」
ユニが駆け寄ってきた。
「ユニちゃん凄いね。僕は互角程度しか戦えなかったのに。もし僕の力が役に立つなら何でもするよ」
「にーちゃんありがとう。でもユニはにーちゃんには全然かなわないのじゃ。にーちゃんは力の使い方を知らないだけなのじゃ」
ユニは手に持っていた弓を角に戻し、僕のお腹に突き刺した。 ──不思議と痛みは無い。
「少し体力をもらうのじゃ」
角へ光るものが流れていくの感じる。
「にーちゃん体力どんなだけあるのじゃ。まったく減ってないのじゃ」
角に光が流れ込み様々な色の光が集まっていた。その輝きはとてもまばゆいものだった。
「これで良いのじゃ」
光輝く角のエネルギーを自分の額に流し込むとユニは幼女の姿から女性の姿に変態した。
「行くのじゃ」
ユニはエリファスに向かって飛びかかる。角をナックルに変形させ殴りかかったのを皮切りに全ての武器が宿ったかのように流れるような武器チェンジでエリファスを圧倒した。
エリファスも魔法で応戦を試みるが、ユニは寸前のところで全てかわしている。
「にーちゃん、さっき使っていた地形変化でサポートをお願いするのじゃ」
言われた通りエリファスの避ける方向を狙って壁を作り逃げ道を塞いでいく。ユニの攻撃で少しづつエリファスの体力を削っているが致命傷には届いていないようであった。
(……長期戦となったことでエリファスの動きを掴めてきた。これなら──)
僕はエリファスに合わせて強力な攻撃を繰り出した。出来るだけ多くの土を超圧縮したつらら状の突起をエリファスの退路に複数本突き上げた。
グシャ!
突起の1つがエリファスの動きを捉えた。
「ぐわー」
エリファスの体幹を天井まで貫き動きを止めた。
「これで最後じゃー」
ユニは拳に力を籠めてエリファスの額にある六芒星を殴り付けた。
ドゥルングジャー
「うぁぁぁぁぁ」
断末魔と共にエリファスは黒い灰と共に消えていった。
僕たちの力で魔人エリファスを倒したのだ!
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