29.
異世界から来た蜘蛛だか神様だか知らないが……そいつが世界の一部を切り取って自分の〈巣〉を作り、それが独立した一つの世界にまで成長するというのならば……正に、世界の創造主って事になる。
ピラミッドから出てきた白服の連中は『創造神さま』と言っていた。
あのダイヤモンド製と称する透明のピラミッドの中に〈異界神〉とやらが
「なあ……いま俺らが居るのは、その〈異界神〉の作った巣の中なんだろう?」私は誰に
「そうだ」と、運転手の
「なら、そいつは、とっくに我々の存在に気付いているんじゃないのか? 自分の創り出した世界なら、どんなことでも可能な
「そうとも限らんよ」と
「そんなものなのか?」
「そんなものさ」
私は、別の話題を振ってみた。「パス・ファインダーって、何なんだ? さっき俺のことをそんな風に呼んでいたが……」
「
「分かった」少女が答えた。「私らが何者なのかって説明もまだ半分だけだったから、残りを話そうと思ってたところ」
そして
「つまり、超能力者だってのか?」私は
「超能力者たちの集団が、神さまと戦っているだと?」
そこで、ハッと気づく。
「運転手さん、あんた、さっき俺を『新入り』って呼んだな? それは、つまり……」
ミラー越しに運転手の顔を確認すると、微かに
「ご多分にもれず、うちの財団も万年人手不足でね。戦力となる特殊能力者……いわゆる『超能力』を持った人間は常に募集中だ。あんたが今の仕事で幾ら稼いでいるかは知らんが、〈
私が一番稼いでいた頃の年収の、ざっと三倍だった。
「本当かよ? そんなに貰えるのか?」
「どうだ?」
「……しかし……」
「まあ、今すぐ結論を出さなくたって良い。今のところ、あんたは『お客さん』だ」
そうこうしているうちに、私たちの乗ったカローラは森と村の境界線に
「さて……これから、どうするかだが……」と
どこからともなく、コンピュータで合成された男性の声が発せられた。『車外情報収集とデータベース照会は終了しています』
「で、今回の相手の種類は?」
『ADG320もしくは、その亜種、と予想されます』
「タブレットに表示して」言いながら、彼女はドアポケットからアイパッドのようなものを取り出した。運転手の
「こいつか……」
「ああ。駆除の難度は、それほど高くない」
私は、いったい今どういう状況で、彼らは何について話し合っているのか分からず、黙って
彼女が、私の戸惑いを察知して「さっき車内スピーカーから聞こえてきたのは、この車に搭載されている人工知能の声よ」
「人工知能?」
「そう。『アンチョビ』って呼んでいる。アンチョビ2号。車載カメラやらレーダーやら集音マイクやら、その他いろいろ、車に付いてるセンサーで集めた情報を解析して、私たち財団のエージェントが過去に駆除した〈異界神〉のデータベースと照合、その
「……すごいんだな」
「まあね。財団は人手不足だけど、お金だけはあるから。車だろうがコンピュータだろうが、カスタム・メイドで最先端の技術を惜しげもなく使えるよ」
「そうか……さっき、この自動車を襲った〈森人〉どもを弾き返したバリアーみたいなやつ……『シールド』とか言ったか……それもカスタム・メイドで付け加えられた機能だったんだな」
「いや、それは……」
その時、助手席の
「どうするの?」
「基本的には、データベースにある駆除方法で行くが……そちらの
「二正面作戦? なんか危なっかしそうだな。大丈夫なの?」
「危ないのは
「まあ、そりゃ、そうだけどさ」
「夜明け前まで待って、仕掛ける」
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