第七十九話 窓際の女
転勤で越した家の近所に、窓際から外を覗いている女がいる。
身体を半身に隠しカーテンを少しだけ開いて外を窺う姿は、何かを監視している様だった。
記憶の限り女は必ずそこに居て、昼夜を問わず何かを監視している。そんな姿は少なからず不気味に見えた。
ある日、近所の者と会話する機会があったので少し事情を確認することに……。
「スミマセン……あの家の女性なんですけど、いつもあんな風なんですか?」
「あ~……ん~……アレね。あんまり見ない方が良いよ?」
「精神が危険な方なんですか?」
「いや~………あれはね……」
何やら口が重い近所の住人。気になり問い詰めると……。
「あれはね~……人じゃないんだわ……」
「え?じゃあ、人形ですか?」
「違うよ……あれは簡単に言えば幽霊だ」
「そんな……あんなハッキリと見えるのに……。皆さんも見えてるんでしょ?」
「だからヤバイんだよ……。あれはね……」
住人の話では、不倫して駆け落ちした旦那を待ち続けた妻が最後に首を吊ったのがあの部屋なのだという。
当時は大騒ぎになって警察も動いたので間違いないとのこと。
「土地の管理者もあの家を売りたくて御払いしたらしいんだけど、全く駄目でね……。あの人がああして覗いてるのは旦那の帰りを待ってるのかも知れないよ」
それ以来近所では、あの家の方角の窓は閉めたままだという。何か良からぬ妬みを受けそうで怖い為、皆そうしているのだそうだ。
後に再びの転勤で他の地に越してしまったが、時折連絡する程度に仲良くなった住人に確認する機会がある。
彼女は……今も窓に立っているそうだ……。
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