第三十五話 壁画

 とある公園に、誰が描いたか分からない壁画がある。


 街を上空から見下ろしたようなその壁画は無許可で描かれた壁画だったが、かなりの技術を用いた写実的なもの。まるで写真のように鮮やかだった為、誰も咎めるようなことはせず放置されていた。



 ある時、その壁画の上に落書きをした者がいた。赤いスプレーを使った自己満足の稚拙なサイン。公園を利用する者にとっては景観を台無しにされた気分だったらしく、犯人捜しに躍起になった者までいた。



 そんな落書き発見から数日後、街に火事が起こる。幸い犠牲者は無かったが、大きく燃えた為全国でもニュースに取り上げられた。


 火事の翌日、新聞を見た住民の一人は愕然とした。

 火事の様子を街上空から撮影した写真……その火事の場所が、スプレーで落書きされた場所と全く同じなのだ。


 この話は多くの住人の耳に入り急いで壁画が修復された。それ以来、住民達は壁画の様子を警戒して暮らしている。



 先日、壁に亀裂が入り壁画の絵が数ヵ所剥がれ落ちた。急いで修復を行っているというが、近々何が起りそうで住人は気が気ではないと口々に語っていた……。


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