第二十七話 大蛇


 その昔──祖父の友人が来客した際、森の中で大蛇を見たという話をしていた。


 森……というよりちょっとした雑木林なのだが、その先に沼があるのだという。その中から人を一飲み出来る程の大蛇が現れ、命からがら逃げたのだと。


 しかし……説明された場所には沼は無く、只の草地が広がっている場所。おおかた幻でも見たのだろうと祖父は口にしていた。



 客人は精神に問題がある訳ではなく、酒も嗜む程度。心配になり忘れた方が良いと祖父は諭したが、大蛇の話は頑として止めなかった。


 それから程無く、客人は他界した。


 客人が見たのはあの世のものか──。


 あの世のものを見たから他界してしまったのか、はたまた只の偶然か……。くだんの雑木林の近くを通り過ぎた際、ふとそんな話を思い出した。


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