第七話 禁足地
禁足地──その名の通り足を踏み入れてはいけない土地……。
禁足地にされるには理由がある。有名な『八幡の藪知らず』などの様に妖怪や霊にまつわる禁足地は、実は全国に存在している。
東北の某所には裏山一体にしめ縄を張り禁足地にしている神社がある。
建前上、信仰の聖地であり環境保護が必要とされているその場所は、実は熊が出るとも言われていた。
だが、ある男がその地で信仰されているものに興味を示し無断で足を踏み入れた。
懐中電灯で見付からないように、夜目の利く月夜を選び山を散策。山道には綱が張られていて、男は道に迷うことなく目的地へと辿り着く。
更に月夜の灯りを頼りに御神体を探すと、周囲の光景の異常さに気が付いた。
例えるなら『オレゴン・ボルテクス』と言えば分かるだろうか?大地が渦の形状をしており渦の中心へと沈んでいるのだ。勿論、大地は固いまま。樹木は中心に近い程傾き地中に沈み始めている。
その中心に見えた御神体らしきもの。男がゆっくりと近付いて確認した時、その光景に腰を抜かした……。
渦の中心には人が埋まっているのだ。表に出ているのは右肩から先と顔……丁度溺れた者が手を伸ばした様な姿だ。顔は髪がなく目も閉じている。
作り物と思い触ろうとした瞬間、御神体は目を開き男を見た。
そして御神体が口を開き掛けた瞬間──男の恐怖は限界に達し、悲鳴を上げ一目散に逃げ去った。
それ以来……男は、生涯を通してどんな山にも入ろうとしなかったという。
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