難しい話の傍らで
探検隊副隊長のドールはジャパまんの蓄えも完備、記録用の日記帳、筆記用具も鞄に詰めて靴紐から歯磨き、しまいには毛繕いも万全という準備万端を体で表したような形相で隊長を待っていた。
以前発生した
特にやる事もないので机に顔をつっぷして隊長さんやミーア先生、マイルカちゃんやライオンさんの話声に聞き耳を立てながらその時を待つのである。
そんな中、いつか聞いた声が紛れ込んだ。
「少し時間いいかしら?」
カコ博士の声である、
「カコ博士」
と、隊長さんの意識がそちらに向いた。
「急で悪いのだけれど、今少し時間あるかしら?」
カコ博士は隊長さんの名前を呼び、尋ねた。
隊長さんも私と同じように準備は早めに済ませるタイプだ。なので二つ返事で
「いま大丈夫ですよ、どうしたんですか?」
と返した。
「そう難しい事じゃないわ、今パーク職員、スタッフ、研究員を通してインタビュー調査を行っているの。ヒトとアニマルガールの共生を目的としたアニマルガールの社会モラルを育む為の教育姿勢や社会的障壁の想定、並びに…」
カコ博士は何やらむずかしい言葉を並べている。言葉を聞き取れるのと意味を理解できるのは違うらしい
「まあ簡潔に言ってしまえばパークが開演してフレンズとヒトが同じ場所で暮らしていく場合に必要なものやその上で生じる問題について一部職員にインタビューを取っているのよ。」
分かりやすく言い直してくれたので思わず嬉しくなり、見えない所で口角が上がった。
「統計学的な都合から全体を通してインタビューを取ってるけど貴方程にアニマルガールと密接な関わりを持つヒトは少ないわ、だからこそ貴方の意見は個人的に参考にしたい部分もあるの」
「ヒトとの共生か…そう言えば前にドールも言っていましたね、パークの外のヒトにフレンズを信じて欲しいって、信じてもらう為にも僕やスタッフさんだけじゃなくて、沢山のヒトと関わりを持つ必要がありますものね」
不意に私の名前が出てきたので耳が跳ねた。
隊長さんに気づかれてないかと汗が滴ったがカコ博士との話に夢中で気づいていないと分かると安心して、耳が少し垂れ下がった。
「それも目的の一つよ、パークの開演に向けてもアニマルガールの存在を広く認知してもらう事が必要だし、そのためにはメディアにその姿を晒す必要が出てくる、」
「でもヒトに対して苦手意識を持っているフレンズさんもいますよね、極端にコミュニケーションが苦手な子とか、洞窟やジャングルから出ようとしない子とか。」
「勿論よ、私達はアニマルガールを見世物にするつもりは無い、あくまでも当人の意思で希望したフレンズがヒトと関わりを持つという前提で計画されているわ」
「それなら安心です、うちにも人見知りの子がいますから」
「あくまで彼女達には自由に生きて欲しいもの…と、前置きが長くなったわね、そろそろ質問を始めさせてもらっていいかしら?」
「すみません、質問の前に一ついいですか?」
隊長さんが話の流れを止めた
「そのインタビュー、ドールと一緒に受けさせていいですか、さっきから耳がずっとこっちち向いて、暇そうにしてるんです」
「…ええ、いいわよ、アニマルガールの視点からの意見は少ないから参考になるわ」
「だってよ…ドール?」
「はい!呼びましたか隊長さん!」
私は待ってましたかとばかりに顔を出し、隊長さんに駆け寄った。軽い足取りで、高らかに床を叩く。
「じゃあ最初の質問ね、貴方が想定するパーク開演時にヒトとアニマルガールの間で起こる問題についてあったら聞かせてもらえるかしら?」
ここからは2人で答える一問一答。頑張るぞ!とドールは息を入れ直した。
おまけ
「うーん…やっぱり文化の違いですかね、僕自身フレンズさん達と過ごしてきてわかりましたが、ヒトとは違う所が多いです、特に言うなら食文化とか、この前はピクニックの様子を見に行ったらミナミコアリクイちゃんが蟻食べてたりして」
「へえ…そういえばヒトってどんな物を食べてるんですか?木の実?お魚?」
「大体なんでも食べるね」
「食性に関してはヒトがおかしいだけよ」
「それと…皆性に対する意識が無いように思います、あまり考えたくないことですが、セクハラとかが問題になるかも知れません」
「そうね、貴方以外でも性的な行為が問題になるという意見は多く頂いたわ」
「隊長さん、せくはら?ってなんですか?」
「…………」
「………………」
「「次の質問に行きましょう」!」
ドール曰く、インタビュー中、
ここだけは声が完全に重なったという。
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