大きい夢の続きを見よう

月がてっぺんから少し傾いた頃、

夜更かしと早起きが混じり合う時間に彼女はほりゃんと目を覚ました。お気に入りの洞穴の中の木の葉のベットが軋む音に合わせてのっそりと体を起こした。その勢いで大きな身体の身の丈に合った大欠伸をしてみせると眠気代わりの涙が零れた。目をこすってぼやけた視界を整える、こんな半端な時間に目が覚めてしまっては困ったりんである。熊手を持って歩き出し、おもむろに外に出た、洞穴を出れば広い草原が広がっているから、眠気覚ましに少し外を歩こう、カムチャツカオオヒグマはそう思ったのだ。

眠っている間、カムチャツカオオヒグマは夢を見ていた。内容はうすぼんやりと思い出せるL♡Bベアーズで大きい体を使って素敵な事をするのだ。内容に具体性の欠けらも無いのだが楽しい夢を見ていたという事実だけは鮮明に覚えている。皆で一緒にいるんだから楽しいのなんて当たり前だよん、と思い直すと少しだけカムニコッ★とした

雄大な星空を見上げて歩くとその先にはヤマバクがいた、草原に座り込み、同じように広い広い空を見ていた。

「あら?カムチャツカオオヒグマさん?」

「んー?ヤマバクりん?こんな所でどうしたの?」

「星絵をしていたんですよ、今日は星が良く見えますから。」

「星絵?」

「ええ、星と星を繋ぎ合わせて、絵を描くんです、良かったら一緒にどうですか?」



「そう言えば今日スタッフさんから聞いたんですけど、私達がこうやって見ているお星様って本当はとても大きいらしいですね」

「…そうなの?」

いつもならわきゃー✩と返してそうなものだが見上げた小さな空の粒にそれだけの大きさを感じられなかったからか、声が上ずった。

「ええ、とっても」

「この草原よりも?」

「ええ」

「あの向こうの森よりも?」

「ええ」

「それどころか…あっちからこっちまで合わせても、あのお星様ひとつの方が大きいらしいんです」

そう言ってヤマバクは地平線を指で繋ぎ合わせ、ひとつにしてみせた。そしてそれよりも、あの星空に漂う三等星の方が大きいのだ、と言ってみせた。

「わきゃー…」

「そう言われてもちょっとびっくりしますよね、私も最初に聞いた時は不思議でした」

「うーん…そうだ、ねえねえ、質問がありまーす!」

「はい?」

「あのおっきいお月様はさ、おっきいお星様よりもっともっと大きいのかな?」

カムチャツカオオヒグマが指さしたのはお月様、確かに目で見た限りでは、他の星達より一回りもふた周りも大きく見える、

「そうですねえ…お月様は…どうなんでしょう」

「わきゃー★きっといちばんおっきーよ!あそこをおうちにしたら、皆を連れてパーティーが出来ちゃうね!」

カムチャツカオオヒグマは嬉しそうに月を指さして言う。

「ふふっ」

ヤマバクは軽く笑みをこぼして

「その時は…私も招待してくれますか?」

「モチロン!」

ヤマバクの問いにカムチャツカオオヒグマはそう言いきってみせた。


「それじゃあ今日はありがとねー★」

「ええ、それではまた」

しばらく話し込んで、月が少しだけ傾いた。

そろそろ帰るねと言って席を立つとヤマバクが手を振ってくれた。合わせて手を振り返すと胸が暖かくなった。帰って夢の続きを見よう、皆で一緒にお月様に飛んでいって、沢山素敵なことをしよう、そう思うカムチャツカオオヒグマの足取りは軽やかだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る