無かったことにしたい日 ⑥-2-1

一声大きく張り上げた金髪ロリ碧眼美少女。同時に杖から拳大の金色の塊が放たれた。


「おぉっと!」


迫ってくる光る丸い何か。慌てて私は腰に下げていた護身用の棒でその塊を打ち払う。


光は棒に触れると消滅した。


「はぁ? なによそれ!」


――何よそれ! はこっちのセリフなんだが。今の何?


急だったので思わず金玉を打ち払ってしまったが今のはなんだったのか。エリーちゃんが選んだえっちグッズ【俺の如意棒】で払ったと同時に消えたんだがどういうことなの。


まるで手ごたえがなかった。いやそりゃそうだろうよプロジェクションマッピングが払われただけで消えるわけがない。そういう演出設定でも組まない限り――ん? 向こうがそういう演出設定をしたのか。では何のために、何を狙って?


彼女はいったい何を目論んでいるというのか。動機が不明過ぎて今後の展開に予想がつかない怖い。


「あの、私たち急いでいるのでもう失礼してもよろしいでしょうか?」


光が消えた、凄いですね、これは霊の仕業です、みたいな仕掛けで神霊アイテムを押し売ってくる宗教サプライヤーなのかな巫女とか言ってたし。この後霊験あらたかな壺でも売りつけようという算段なのかな。確かに初めて見る手品には驚かされたけど、悪いがそんなものでは私は騙されないんだ。いやこれで騙される人間は少ないのではないかと思う。


そもそも対話の土台作りから失敗していると思う。終始上から高圧的な態度っていうのは自称霊媒師にはそこそこいるけれど、目の前の美少女はこちらと友好的な関係を結びたいという気持ちが微塵もないように感じる。偉そう霊媒師の王道話術である「貴方のためです買いなさい」っていう流れを作るどころか割と敵意満々。売る気皆無としか思えない。こんなんでコロっと騙されて買っちゃうのはロリコンくらいなものではなかろうか。世の中にはそういうのがいいという変態紳士もいるらしいので策としてはもしかするとそこまでの悪手ではないのかもしれない私は素人なのでわからないけれど。でもね、私はソレではないのよ。そういうのにはなんの魅力も感じはしない。一部の紳士は萌えと判断するのかもしれないが私は萌えを感じない、ただただ不快である。つまりツボを外しているということだ。なるほど色々考えたのだろうが、敵を見誤ったようだな小娘よ。


「……あんた、魔法使い? それとも何かの魔道具?」


金髪ロリ碧眼美少女が私の持っている棒を凝視する。


なんだ? さすがに響いていないと理解し方向修正にでもきたか? だが遅かったな。お前の手管は看破したぞ小娘。今更何をどう修正しようとしても――待て。あんまりこの棒を見ないで欲しい。


いやエリーちゃんに言われるがままこれを持ってきた自分にも非がないわけじゃない気もするけどこれ、LEDライトがついているから暗闇で便利かなって思っちゃったのだよ。Gを殺処分する、ないし追い払うくらいには使えるかなと思って持ってきたのだよ。つまり自衛用と言うことなのだよ。だってまさか鉱山で少女に会うなんてかけらも予測しないではないかJK。だから私に非はないはずだ常識的に考えてJK。私は無罪。私は潔白――だのに君がそんなにまじまじ見てしまうとだな、あら不思議まるで私がそういう意図で持ってきたいやらしい中年に早変わり。どう言い訳しても周りからはそう見えてしまう構図です。これはもうどこからどう見ても私ったら悪の変態中年ですね本当にありがとうございました。興味津々なお年頃なのは察して余りあるところだけれどこの棒はちょっと思春期の乙女が凝視するようなものではないので本当にやめてください死んでしまいますここで形勢逆転とは恐るべき策士だよアンタ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る