まるっと異世界な日 ④-2-1
◇◇◇◇ヒヴァリ視点◇◇◇◇◇◇
致命傷を負った私は逆鱗裏にある核を中心に仮初の肉体を構成した。
一度この状態になってしまうと元の体を取り戻すのに一年以上眠らなければならなくなるのだが、命に係わる緊急時にそんなことを心配している余裕はない。私は新たな肉体を本体から切り離し逆鱗付近の皮膚を突き破って外へと脱出した。
再構成した体はリザードマンと人間のあいのこのような体だ。本来の体に比べると脆弱であり、肉体的能力は格段に落ちる。
だが今回に限って言えば、これは好都合だろう。私を倒した強者は人間だった。人間ならば同族を問答無用で殺したりはしないはず。
と思っていたら。
やってきたのは人間ではなかった。人型ではあったが、人間よりも醜悪な見た目をしていた。
――あれは確か、オーク。
こまった。オークは人間とは違う。殺されてしまうかもしれない。そう思った次の瞬間、私は母の言っていた言葉を思い出す。
オークは異種族とセックスをして子孫をなしている種族。
オークはメスが大好き。
待てよ。既成事実さえ作ってしまえば私は助かるかもしれない。
私は死にたくない。
死にたくないよぉ。
あぁ、オークが寄ってくる。手にはまた棒のようなものを持っている。
蘇る恐怖。
死を意識した私に選択の余地などありはしなかった。
―― 「せっくすをしていただけないでしょうか」 ――
私は自らハラミ袋になる意思を示した。
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◇◇◇◇ヒヴァリ視点◇◇◇◇◇◇
オークの城に連れて行かれた私が最初に通された部屋は沐浴施設らしき場所だった。
再構成の権能で作られた肉体には元の体の血肉汚れがついている。しかし沐浴をしなければならないほどではないと思う。乾けば砂となって落ちるものだ。
オークはきれい好きなのだろうか。そんな話は母から聞いたことがない。
身ぎれいさを保つのは知能の高さの証左だ。このオークはもしかするとオークの中でも上位種なのかもしれない。とはいえ一日に何度も沐浴をする水の精霊ミナモトシズカは賢くないので、これだけでこのオークを上位種と決めるのは早計だろう。
なんて思っていたら。
ザーッ、と頭に降り注いだのはお湯の雨。
ふぇ?
混乱している私をよそにオークは手で何かを泡立てている。
ちなみにこの時オークも裸だ。
私とオークが裸で向き合っている。
そのうちオークは私の頭をもみもみしはじめた。
すると私の頭で泡立つ白い何か。
この泡泡……なんか気持ちいいかも。
ザーッ。
ふぇ?
お湯に洗い流される白い泡。
次は同じようにオークが手で泡を作ると、今度は私の首から肩、腕と泡をつけ始める。
オークのごつい手が私の身体を撫でる。
あ。
オークが私の胸を……からの腹だの脇だの背中だのを撫でる。
あっあ。
腿だの足だのお股だの。
きた! 遂にキタ! ここで私は初めてを……。
と思ってオークの股間をみたらソレは萎れたままだった。
めっちゃ大きくなるって聞いていたのだけど。
あれ。なんで?
せっくす好きですよね?
せっくすするために生きてるんですよね?
オークって女と見れば見境なく犯すんですよね?
そのために人間の集落を襲ったりするくらいにはせっくす好きだって聞いたのですけど。
ザバーッ。
蓋をされていた箱の中に入っていたのは大量のお湯。オークは蓋をはぐり、私をそのお湯の入った箱に入れた。
え。まさかここにきて、私を煮て食べる感じですか?
私、やっぱり殺されちゃうの?
ガクブルしてたら今度はオークも私と同じように箱に入った。私にやったように自分の身体を泡泡にして、それをお湯で流して、私と同じようにお湯の入った箱に入ったのだ。
これ、なんですか?
オークの儀式ですか?
あったかいお湯がやたら気持ちいいのですが。
気持ちよすぎて頭がぼーっとします。
ねぇ、なんで黙ってるの。お湯をすくって顔とか洗いだしたくらいにして。
これなんですか。なんなんですか。何の意味があるのかさっぱりわからないのですが。
あぁ、意識が。
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