まるっと異世界な日 ④-1-2

「せっくすをしていただけないでしょうか」


現場につくと裸の子供が立っていた。


正確に言うと、裸の子供が竜の胸元辺りから生えていた。


足は竜の肉の中にある。全身血まみれ。そんな子供が何か言った。


「えっ、なんて?」


「せっくすです。ご存じありませんか」


「いや、ご存じなくはないのですが……」


装甲車から降りて、銃を構えながら近づいた時かけられた言葉はどうやら聞き間違えではなかったようだ。


でもだからこそ理解できない。意味が分からないのは私の頭が悪いからというわけではないと自負するところだがどうだろう。


いくら飛ぶ鳥を落とす勢いのファンタジー世界だとしてもこれは許されるのか。ハーレムするにもまだ奴隷すら買っていないというのに恐ろしく速い展開。オレでなきゃ見逃しちゃうね。


「オークはせっくすが大好きだと母に聞きました。オークは倒した女を服従させるのにセックスをすると聞いたことがあるであります。私は敗北を認めその慣例に従うであります」


「いやあの、そういう慣例はどうなんでしょう。寡聞にして存じ上げないのですが」

「私には命を助けてもらうために捧げられる対価がないのであります。そういう時、女ならばせっくすで助命されるというのが下界の市井の常識であると母にきいたのであります」


「……はぁ。さようですか」


こんな時、どう答えたらよいのだろう。


そんな話あるわけねーだろっ! て、私の心は叫んでるんだけど、ここはファンタジー世界。不思議の国のなんとかな世界ならそういうのもあるのかもしれない。


「ですから是非せっくすを」


「ごめんなさい是非お断りを」


「な?!」


な?! じゃねーよ無理だよ。そんな世界があってたまるか。


絶対に無理です。いやヤセ我慢とかじゃなくホント無理です。これが十歳前後にはとても見えない大人びたナイスバディ美少女とかだったら正直わからないけどどう見ても目の前のソレは見かけがスポーツ刈り野球少年。巷では男の娘が萌えだって聞いたことがあるけれど私には理解不能。それは萌えじゃないただの男色だ。セックス要求してるけどお前絶対股にちんちん挟んでるだろ。小学生のいたずらあるあるかっての。ちんぴくすらしねーわ。


「どうしてでありますか! 私はまだ若輩ですが、若い女ほど男は喜ぶのだと聞いたであります! しかも私は処女であります! 未使用ゆえ、しまりは抜群であるはずでありますよ!?」


「いやいやいや、すみませんがそれだけはご勘弁いただけないでしょうか。私としてはそんなことを成されなくともお助けしようと思っておりますので」


「え?! それは本当でありますか!?」


「ええ勿論ですとも。ですからどうかそのお身体を今後もどうか大事にしてほしいと願ってやみません。貴方のせっくすはどうかご結婚あそばされました時まで取っておいていただきたく思います」


「あぁなんて慈悲深いオークでありましょう。人間とは違うでありますね」


「…………」


いや私、人間ですけどね。そういう君はなんなの。なんでこんな場所にいるの。

と思った矢先、マキちゃんがタイムリーに聞いてくる。


「助けるのか? あれは竜魔りょうまだぞ」


「え? ……りょうま?」


坂本的な?


「人に化ける魔性だ。妖精種に近い。人類の天敵だ」


「…………」


まじかー。見た目子供だから騙された。人類の天敵ってメチャクチャヤバそうなスケール感だよ絶対ここで殺しておかないといけない的な。Gレベルの。


いやだが待ってほしい。Gなら光の速さで殺処分余裕だけどこの姿の生き物をイくのはちょっと私には厳しい。っていうか無理だ。夢に出そう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る