メッシーアッシーな日②-1-2

そこへ今まで黙っていたマキちゃんが問いかけてくる。


なんてタイミングの悪い人形だろうか。しかもその顔が、心からどっちでもいいという風で本当に困惑させられた。彼女にしてみれば人間の生死など心からどうでもいいことなのだろう。


「……助ける? どうしてです?」


だってマキちゃん助けたいなんてこれっぽっちも思ってないよね?


「いや。マスターが助けたそうにしているからだが。私にはマスターが何を迷っているのかわからないぞ。どう運ぶかを考えているのか? そういうことなら、私があれを背負ってもいいが。それとも何か別の懸念があるのか?」


「……いえ、まぁ、懸念と言えば懸念なのですが」


おっさんに任されてしまった。嫌だと意思表示する前におっさんは死んでしまった。女を助ける助けないという問題以前に、ここで黙って立ち去ってしまってはおっさんを騙したことになってしまう。


――はぁもう。はぁもう! くそが!


私は持ってきたサバイバルバッグから獲物を吊るして血抜きするのに使おうと入れておいた紐を取り出し、それで少女の右足と左手を縛って止血した。


そのあとサバイバルバッグに入れておいた救急箱を取り出して、中に入っていた殺菌消毒薬を少女の負傷部分にかける。それを終えたら今度は切り傷・火傷処置用の皮膚パッチシール(大)を手足の傷口に張り医療用テープで固定し包帯を巻く。


組織を再生する効果のある最新医療品と言えど欠損した部位を再生させる効果はない。それでも化膿や感染症を抑える効果は高いので少しの間なら皮膚の代わりくらいにはなってくれると思う。今できる処置はこれくらいなものだ。


「処置は終わったのかマスター」


「はい。あとは家に戻ってもっと効果の高い薬を検索してみます。私が使う薬を買っていたアプリがあるので。まぁそれで治せるかは疑問ですけど」


「効果が不透明な薬なのか。ふむ。ならば先日召喚した精霊従者サーヴァントを起こしてみたらいいのではないか? 確かあれは術師だったろう」


「え。いや、彼女は……」


「回復魔法が使えるかは知らんが、この先術師は必要になると思うぞ。いくら弱い敵でも数がいると面倒だ。雑魚をまとめて焼き払える戦術もとれたほうがいい」


「……はぁ。そうですか」


マキちゃんの言う先日召喚した何某というのは、サバンナを介して注文したオリエンス工業産ドール三体のうちの一体、タトヨエリーちゃんモデルの事だ。私はアレを故あって起動させず箱の中で眠らせたままにしている。

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