メッシーアッシーな日②-1-1

女なのか。


よりによって女。


私は助けるかを迷う。何故なら相手が女だからだ。


職場でセクハラの冤罪をかけられ苦しめられたトラウマがフラッシュバックする。


怪我の治療と言いその身に触れようものならば訴えられるかもしれない。


同じ空間にいたというだけで悪い噂をばら撒かれるかもしれない。


職場の女どもはそうだった。指一本触れてないのに女どもは私にセクハラをされたと上長に訴えていた。カップラーメンを食べるために給湯室でお湯を入れていただけだったのにだ。その後は面識にない女にまで私にエロい目で見られたとかいう噂を休憩室で広められていた。女とは弱い立場という立場を利用してさらに弱いものを叩き憂さを晴らす生き物だ。正義に名の下にキモメンを殺しにくるおそるべきモンスターだ。絶対に関わってはいけない生き物なのだ。


もう二度とあんな地獄は味わいたくない。いじめの材料を作りたくない作られたくない。だから私は女とは距離を置くことに努めてきた。たとえ全人類の半分から距離を取ったとしても今のご時世ネットで何とか生きていける。女など私にとっては有害な生き物でしかないのだ。関わり合いたくない絶対に。絶対にだ。


私は女を助けない。それがどんなに美人であろうと子供であろうとそんなものは私には関係ない。たとえ赤子であろうとも助けはしない。赤子は何も思わないだろうがそれを見た女が私を攻撃するからだ。会社の女はそうだった。あいつらは様々なバリエーションを持って私を追い詰めてきた。絶対に隙など見せられない。私は若い女を性のはけ口に使う気はないし、下心さえなければ男にとって女など、ほとほとただの面倒な存在に過ぎない。お前たちのせいで私がどれだけのストレスに苛まれたことか。どれだけ集団で一方的に攻撃され続けどれだけ謂れのない屈辱を味わわされたことか。


だから私は見なかったことにする。


「…………」


中学生くらいのその女は随分と出血していた。


右足のくるぶしより先っぽが食いちぎられなくなっている。


左手も手首から先が無くなっている。この状態では長くは持たないだろう。


私がここでバイバイしたとして彼女が死ぬのは私のせいではない。


「…………」


私は少女から身を翻す。


その際、なんとなくおっさんの亡骸が視界に入った。


「…………」


女は助けたくない。関わりあいたくない。むしろ死ねばいいとすら思っている。


けれども。


このおっさんは懸命にあの少女のことを守ろうとしていた。


その事実が、腹の立つくらい私の心を掻き毟る。


「…………」


娘だったのだろうか。


いやそれにしては顔が全然似ていない。


親族と言うことはあるまい。


ならば捨ておいても構わないだろう。


「助けないのか?」

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