4月9日(木)
クラス替えの結果、九人はすごくばらばらになってしまった。一組から四組まで、それぞれ二人、二人、三人、二人といった具合だ。まあ、クラス替えの時期にどっか行ったり入院したりしてたわけだし仕方ないのかもしれない。
わたしはまた四組になった。同じクラスになったのは、美世ちゃんだ。担任の先生も持ち上がりで、そのまま担当してくれるのは嬉しかった。
新しいクラスに上がったとはいえ、小学校も五年目だ。みんな顔ぐらいはわかる。また同じクラスになった子、初めて同じクラスになる子。みんなわたしが登校した瞬間にちらちらとこちらを見てきた。無理もない。一ヶ月ぐらい休んでたわけだし。でもやっぱり少しだけ居心地が悪かったので、昼休み、わたしは美世ちゃんを誘って屋上に向かった。
屋上に上がるには四階のろうかを通る必要がある。そういえば七不思議に「四階のろうかで振り返ったら何かが見える」ってあったような。あの旧校舎では結局試してなかったな、と軽い気持ちで振り向いてみた。一年生か二年生かわからないけど、小さな男の子がいた。目が合うとにっこり笑って手を振ってくれた。それだけだった。変なものは何も見えなくて、ほっとしたような寂しいような気分だった。
「人の口から口に伝わっていくものだし、どんどん不正確になっていくのは仕方ないことなのかもね」屋上で七不思議について話していると、美世ちゃんがぽつりと言った。
「やっぱり文字にして、本にして書き残すのって大事だと思う。夕夏ちゃんの日記みたいに」
わたしの日記。あの旧校舎で起きたことは、何もかも全部書き残している。これは、ひょっとしたらすごく正しい判断だったのかもしれない。記憶はどうやったって少しずつ薄れていく。あの旧校舎のことを、ロッカーのことを、あの子のことを、誰かがこうやって記録に残しておくべきなのかもしれない。こういうことが確かにあったんだって残しておくのは、きっと何か意味があるんだろう。積極的に誰かに見せようとは思わないけど……。
紺色の日記帳は、ついこの間買ってもらったばかりのはずなのに、気づけばページ数が残り少なくなっていた。
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