2月16日(日)

今日は美世ちゃんと玲ちゃんと紗綾ちゃんと四人でチョコパーティーをした。とても楽しかった。


わたしは昨日作って冷蔵庫で冷やしておいた生チョコを、玲ちゃんはチョコクッキーを、紗綾ちゃんはチョコタルトを。そしてなぜか美世ちゃんはチーズケーキを作ってきた。


「チョコばっかりだと飽きるかもしれないから、ちゃんと甘さひかえめにしたよ。はいこれ夕夏ちゃん、はい玲ちゃん、はい紗綾ちゃん」


美世ちゃんは配りながら胸を張った。さすが、美世ちゃんはかしこい。


食べながら、いろいろな話をした。いつも騒がしい女子たち(南さんとか松中さんとか)は、バレンタインの前日に集まって本命チョコを作っていたらしい。紗綾ちゃんは声をひそめてぼそぼそと言った。


「バレンタインチョコのおまじないにね、自分の血をちょっと混ぜたら好きな人と両想いになれるっていうのがあるらしくてね、南さんたち、それを雑誌か何かで読んだらしいんだけど、ひょっとしたら本当に……」


なんてことだ。わたしは注射が苦手だし、血も苦手だ。自分の血をチョコに入れるなんて、考えただけでぞわぞわする。


「あの五人ばやし、みんな誰かに本命チョコあげてなかったっけ?」

(五人ばやしとは、あの騒がしい女子たちにこっそりつけた呼び名だ。ひなまつりの歌から命名した)

「えー、じゃあみんなそのおまじないしてるのかな」

「怖いね」


血を入れたチョコ。鉄の味はしないんだろうか。ちょっとなら大丈夫なのかな。なんにせよ、おまじないにしては少し不気味だ。わたしはすっかり食欲をなくしてしまった。そのあと食べたチーズケーキさえも、なんだか変な味がするような気がした。

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