ももんがの言葉はひたすら軽く、山鼠の言葉はひたすら哲学である


深い森には、かなり強い風が吹いていたけど、風に乗るももんがのももちゃんには、それが楽しくてたまりません。


風が身体を、持ち上げてくれているようです。まるで空を飛ぶ葉っぱの様です。


ももんがのももちゃんは、ふわっと杉の木に辿り着くと、杉の花粉を頬張りました。

「杉の花粉、美味しー!」

深い森の奥で小さなももんがは絶叫しました。

ももんがは、杉の花粉が大好きです。


その美味しい花粉を味わった後、ももんがのももちゃんは杉の木から飛び立ちました。

鳥が飛び立つように、大空に...とは、行きませんが、気持ちは鳥さんです。


それでも、強く心地よい風を帆を広げた全身に受け、ヒューンと隣の木に飛び移りました。


「そうだ、ヤマネくんが昨日から元気がなかったんだ。話聞いてあげなきゃ」


ヤマネくんは可愛らしい山鼠で親友です。

ももんがのゆきちゃんは、深い森の中を飛びながら山小屋へと向かいました。


山小屋には、人間と言う生き物が住んでいてヒマワリの種がいっぱい置いてあるのです。危険な生き物は、その人間と言う生き物を恐れてあまり近づかないから、安心できます。


風に乗って山小屋の横に聳え立つ大きな木に、着地しました。


「ヤマネくん、いるかな?」


山小屋は温かく人間の匂いがした。

でも今は姿は見えないようです。


山鼠のヤマネくんは、ヒマワリの種が置いてある台の上でボーとしていた。

その台に向かって、ゆきちゃんは飛び降りました。


「ヤマネくーん」


「どわ!!!!」


山鼠は、突然舞い降りたももんがに、驚きでいっぱいです。


「ヤマネくん。何か悩みでもあるのかな?」


山鼠のヤマネくんは、深呼吸をして言いました。そして、美味しいひまわりの種を一口齧(かじ)ると


「僕はももちゃんみたいに飛べない。僕も努力すればももちゃんみたいに飛べるかな?」


飛膜のない山鼠は努力しても飛べない。それが現実です。

だけど、ももちゃんは言いました。


「ヤマネくんは、飛べないんじゃない!飛ばないんだよ!」

ももちゃんは、我ながら軽々しい意見だと思いつつも自信満々でした。


「えっ!」


ももちゃんの言葉に、ヤマネくんは、驚きました。

今まで悩んでいたヤマネくんの表情はぱっと明るくなり

「僕は飛べないんじゃない。飛ばないんだ!そう言う事だったんだね!」


どう言う事だろう?


ももんがのももちゃんは、思いましたが、ふと鹿の鹿之助が言ってた言葉を思い出しました。


『ももんがの言葉はひたすら軽く、山鼠の言葉はひたすら哲学である』


何かを納得して感激した山鼠は、「ちょっと待ってて」と言うと山小屋の外に出て行きました。


数分後、山鼠の手には可愛らしい花が握られていました。そして、その可愛らしい花を、ももんがのももちゃんの耳元に付けてくれました。


「お礼だよ」


人間用の巨大な姿見の鏡で、可愛らしいお花をつけた自分の姿を見て見ました。

とても可愛らしいお花は、ももんがのももちゃんをとても華やかにしてくれていました。


私の軽い言葉にこの可愛らしいお花だけの価値があるの?


ももんがのももちゃんは疑問に思いましたが、「まっいいや」と軽く思いました。



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