第27話【四月三十日~都祭真理~】
昨日は、楽しかった。
ここまで来て、美園の野望を止めることはできそうにないけど、フク部最後のイベントとしてはなかなか良かったと思う。美園におごらせることができて、多少の溜飲も下げたし。内藤、ぐっじょぶだわ。美園が恐れていたのは、内藤というより上原香織だから間接的には上原香織ぐっじょぶなのかしら。
四時間目の授業が終わって、左後方を振り返ると当の上原香織はさっさと弁当を持って出て行くところだった。
それにしても細いなぁ、あの子……。
私は、今日は昼飯抜き。朝も抜いている。 昨日の夕方に、ほぼ美園に反撃するというだけの理由で軽い大食いチャレンジをしてしまった。おかげで、今朝から腹痛。
あ。来た。 ぎゅるって来た。
席を立って、トイレに向かう。
◆◆◆◆
今日三回目のトイレ。やっぱり、急に胃腸に負担をかけちゃいけないわ。すっかりおなかを壊した。
ちょっとげっそりしながら、トイレを出る。手を洗っていると、隣の個室のドアが開く。出てきたのは、針金みたいな上原香織。手に持っているのは、お弁当箱の包み。
なにかおかしい。そして違和感の正体に気づく。
そういえば、流水音がしなかったわ。
「上原さん」
「…なに?」
「トイレで、なにしていたの?」
「お昼ごはん食べていたわ」
もしやとは思っていたけれど、あっさり白状したわ。リアル便所飯。都市伝説じゃなかったんだ!
「なんで?映画研究会の部室は?」
いつものように目を合わせずに会話をしていた上原香織が、こちらを振り向く。まっすぐに見る。
「あなたが言ったのでしょう。省吾……」
そこまで言って、上原香織が洗面台にまだ原形の残る昼食をぶちまけた。
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