第19話 人生の目標

 取り敢えずは一からやり直すという事で話し合いは済んだのだが、その後が色々と変な事になりつつある。


 千花夏からは、碧と共に連れ去られた後にした行為の影響で、翌日身動きが取れないほどの疲労感を味わい、終日寝て過ごしたと抗議をされた。


 それは仕方ない。

 千花夏には準備をしていないにも関わらず、碧と同様の行為を望んだのだから、そうなっても文句は言わない約束だったのに、顔を真っ赤にしてそんな事を宣う。


 そして、微妙にそれまでよりも距離感が近いのは気の所為ではないと思う。


 碧からは離婚したのなら私と付き合ってと言われるが、何時までも遊んでないで結婚相手を探せと言っておいた。



 先日、ミイコと二人で離婚届を役所に提出して、正式に夫婦ではなくなり、俺達は恋人になった。


 その帰り、俺達はミイコの妹達に襲撃された。


 そうそう、現在俺が住んでいるのは夫婦生活をしていたあの部屋だ。

 夫婦ではなくなったが、取り敢えず住む所が決まるまでは同居するようになった。


 だから離婚届を提出しても、帰る場所は同じ所なので、部屋にたどり着いた時に、ミイコに会いに来た妹達が部屋の前に居たのは仕方の無い事だった。


「兄貴、今回はバカな姉が迷惑かけたな…」

「おじき…ヨシヨシしてあげようか?」

「お兄さん!姉からつけられたキズは、妹である私が癒してあげる!」

「え?あの…どういう事?」

「やめてぇ〜!!二人ともソウくんは私の恋人なんだから!」


 詰め寄ってくる二人から俺を庇うように、俺と二人の間に割って入り、ぎゃあぎゃあと言い合っている三姉妹を頬を引き攣らせて眺めていると、いつの間にか隣に来ていた樹里亜が俺と手を繋ぎ、ニコッと笑顔を向けてくる。


 汚れを知らない子供の笑顔は癒されるなぁ。


 皆を部屋に入れて、昼飯時になっていたので飯を作ろうと思った時、三姉妹が作ると言ってくれたので、俺は樹里亜とゲームをしながら待つ事にした。


 和洋折衷という様相の食事が並ぶ。


 これにより誰がどんな料理を得意としているかが分かった。


 長女であるミイコは何でも作れる。

 次女の睦美は和食が上手い。

 三女の萌衣は洋食が上手い。

 樹里亜は可愛い。


「「「いただきま〜す。」」」


 俺達は五人で昼食を摂る。


 ワイワイと賑やかで、当然だが三姉妹はお互いに遠慮なく話をして、樹里亜はニコニコと口の周りを汚し、俺はそんな光景を見てなんだか懐かしい気持ちになった。


 母さんと涼平さんと俺の家で食事をしていた時の事を、ふと思い出す。


「ねぇねぇミイ姉!お兄さんのって、どんなの?」

「てめぇ!何を聞いてんだ!樹里亜もいんだぞ!」

「ソウくんはね、初めは優しいの。」

「てめぇも何を答えてんだ!…優しいのか?」

「ムツ姉も興味津々じゃ〜ん!」

「いや、久しぶりだから優しい方が…って何言わせんだバカ!」

「別に言わせてないしー。」

「最初の五回はね。六回目は…」

「ゴクリ。ろ、六回目は?」

「ゴクリ。ど、どうなるの?」

「ユニバース…」

「ゆ、ゆに…なんて?」

「す、凄そう…」

「ゆにばーさる!」

「ジュリは黙ってようね?」

「そう、凄いの。ユニバースなの。ね、ソウくん?…ソウくん?」

「兄貴?」

「お兄さん?」

「おじき、お腹痛いの?」


 皆が驚いて俺を見ている。

 どうしたんだ?

 樹里亜なんて、泣きそうになって…


 あれ?なんで?


 気が付くと、俺の目から水が。


「あ、いや。何でもない。」

「ほれ見ろ!バカ姉が変な事言うから!」

「え?ソウくん、私のせい?」

「いやいや、違うから。」

「お兄さん…ちょっと向こうで休もう?ベッドに行こう?」

「てめぇ萌衣!どさくさに紛れんじゃねえぞ!」

「そうよ!私の恋人って言ってるでしょ!ソウくん、ベッド行く?」

「てめぇもだバカ姉!こんな所に置いておけん。兄貴、落ち着くまでウチに来いよ。」

「こいよ!」

「ダメ〜!」


 騒がしい。

 なんか楽しいな。


 こういうのが家族なのかもしれない。

 ちょっと内容はアレだけど。


 子供は出来ないけど、一からやり直して、新しく家族を作る。


 それが俺の人生の目標になった。


 ―――――――――――――――――――――――

 第一章終わり!






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CROSSLORD 司馬楽 みちなり @shibarakumichinari

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