第14話 不倫の精算
中学卒業後、アルバイトをしながら大検の資格を取得、と。あぁ、今は高認って言うのか。
高卒の資格を取ったあと、多くの会社で正社員の面接を受けるも、尽く不採用。
そして、漸く採用の通知を出したのがウチだった訳か。
まぁコイツの育った環境のせいで、採用を出す所がなかったのは想像に難いがな。
要は孤児だった訳だが、後ろ盾のない未成年を雇うなんて、ウチもチャレンジャーだな。
入社して来た女は、如何にも鈍臭そうな地味で暗い女。
仕事は、まぁ真面目にやってるようだが、女の癖に社内の彩にもならない女にはそれくらいしてもらわないとな。
「福重さん、真面目にやってるね。頑張ってね!」
「え?あ、はい。ありがとぅございます…」
チッ、暗い女だ。
それでもコイツは18歳な訳だろ?
暇があれば食ってみるかな。10代ってのもレアだしな。
家にいる腐れ嫁とは、肌の張りが違うだろうし。
「困ったことがあったら言ってね!」
「は、はい。前原課長。」
暫くは当たり障りのない会話をして、好感度だけは上げておく。
社員旅行があった。
近場の温泉が有名な場所だったが、そこで浴衣姿の地味子を見て、欲情した。
普段地味なこの女は、中々にエロい体をしている事に初めて気がついた。
まぁあれだ。ロックオンした訳だ。
仕事に関しては、真面目にやったとしても、ミスをしない新人なんか皆無だ。
俺は地味子を呼び出しそのミスを煽った。
「福重さん、これねぇ…ちょっと大事になりそうなんだ。」
「も、申し訳ございません!」
ばぁか。
大した事ねえんだよ。
一言連絡入れれば「あ、分かりました」で済む問題だ。まぁ新人にはそんな事分かりもしないだろうがな。
真っ青な顔をして下を向き、脚なんかガクガクしている。
あ〜、その脚開いてやるからな。
なんか施設にいる妹達を引き取るのが目標で、首になる訳にはいかないらしいな。
「でも、新人だしね。ここは俺に任せてくれて良いから、心配しないで。」
「で、でも…私にも出来ること無いですか?」
面倒なんだよなぁ、真面目な奴は。
「大丈夫!任せて!」
「は、はぃ…」
部屋から出て行く地味子の尻を眺めながら、俺は電話をした。
案の定、問題という問題でもなく、解決だ。
翌日、地味子を呼び出し、事の次第を大袈裟に語ってみせた。
「と言う訳で、解決したからさ、もう大丈夫だからね?」
「…っ!あ、ありがとうございます!」
「大丈夫だって。そうだな…ご飯でも奢ってくれたら嬉しいかな?」
「あ、はい…是非。」
そうして地味子と食事をする。
未成年だとは知っていたが、ショットバーに連れて行き、ノンアルコールカクテルを飲ますと、場酔いした。
「こんなお洒落な所、初めてです。」
「あはは、福重さんももう大人だからね。こういう所も楽しいでしょ?」
「あ、はい!お、大人…」
コイツはチョロい。
男慣れしてないのが丸わかりだ。
「また連れて来てあげるよ。連絡先交換する?」
「本当ですか?是非お願いします!」
その日は普通に返して、メッセージのやり取りをしながら、警戒心を薄くしていく。
二回目に連れて来た時に、キスをして「好きになったかも」なんて言ってみると、顔を真っ赤にする。
またメッセージでやり取りをし、腐れ嫁とは婚姻関係が破綻していると言っておく。
まぁこれはあながち間違いではないが。
三度目の時、決めにかかった。
「福重さん…いや美衣子。君が好きだ。」
「前原課長…」
そしてホテルへGO。
予想通り処女だった。
んん、19歳の肌は水弾くんだな。
やっぱりエロい体をしていて、暫くは楽しめそうだと愉悦に浸った。
と思っていたが、現状は面倒になってきた。
「修司さん、何時奥さんと別れるの?」
別れられねぇんだよ!察しろよこのグズが!
「お前の所の偽装結婚と違って、色々面倒なんだ。時間もかかるし、待っていられないのか?」
「…もう随分待ってるけど、何時までも別れてくれないから。」
「もう少し待てよ。それとも、待てないなら別れるか?」
ふん。別れるって言葉には、過剰反応するのがこの女だ。どうせ離れられないんだよ。
こんな中〇しし放題の便利な女、離さねえよ。
しかも、イメチェンかなんか分からんが、髪型が変わって、いい女に見えるし。今日会った瞬間、セックスが楽しみになっていたのに、そんな事をすることも無く、なんでこんな面倒な話を…
「う〜ん。じゃあさ、私が奥さんに言ってあげるよ。家も知ってるし、任せといて?」
ちょっとまて。
何馬鹿な事言ってんだコイツは?
「いや、それは悪手だな。俺達の幸せな未来の為にも、俺達の関係は知られる訳にはいかない。慰謝料なんて取られたら、肩身が狭い思いをする事になるぞ?」
「えぇ〜。幸せな未来ね…」
「そうだ。二人の幸せな未来の為だ。もう少し待ってくれ。」
くっそが。
こんな馬鹿女の為に人生棒に振る訳にはいかない。
「そうなんだ。別れたくても奥さんが邪魔してるとかじゃなくて?」
「それは違う。こっちが有利になるように時間をかけているだけだ。」
切り時かもしれねぇな。
下手に腐れ嫁に突撃されても不味いし。
「なぁ美衣子、もうやめ…」
「じゃあ、もういいや。別れよっか?」
なん…だと?
この俺が、こんな女に振られるってのか?
どうしたんだ急に。
「本当はね、奥さんが邪魔してどうしても別れられないなら、もう二人の未来なんてないじゃない?だから、修司さんを殺そうかと思ってたんだ…」
「………は?」
え?何言ってんのこいつ?
「今日は良く切れる包丁も持ってきたし、痛くないようにしようかなぁって思ってたんだけどね?」
そう言いながら、ピンクのキャラクタータオルに包まれた包丁をバッグから出した。
「え?ちょ…」
「でもさぁ、別れられるのに別れないんでしょ?有利にするとかもうどうでもよかったの。どんな困難でも一緒になりたいって訳じゃないんだね?」
あれ?コイツの目って、こんな感じだっけか?
大きく目を見開いて、瞬きすら忘れているようで、深淵の様な目をしている。
「ま、まとうか?ちょっと待とう。な?」
「ん〜ん。なんかもういいや。修司さんのエッチも気持ち良くないし。旦那のエッチが凄すぎるってのもあるけどさ…」
あ”?
聞き捨てならない事を言いやがったな。
「旦那は下手だって言ってただろ!」
男の矜恃が傷つけられたようで、カチンときて、怒鳴り声をあげてしまう。
しかし美衣子は、タオルから包丁を出し、その刃先をツンツンしながらニヤリと笑う。
「ごめんね…あれ勘違いだった。この前ね、本気でしてくれたんだけど、それがね…とても良かったの。もう修司さんの事なんか、完全に頭になかったし。」
「お前!ふざけんなよ!浮気じゃねぇか!」
自分で言ってておかしいとは思うが、俺より良かったと言われるのは、男として我慢がならない。
「浮気じゃないよ?修司さんとの関係が浮気なの。もうね、修司さんとエッチしても気持ちよくならないし、ウチの旦那より上手い人いないってみんないってるし…」
みんなってだれだよ!
頭に来て俺は拳を振り上げた。
でも俺は余りの怒りに忘れていた。
目の前の女が、危険物を持ち込んでいた事を。
美衣子も包丁を振り上げていて、それに気が付いた俺は慌てて拳を引っ込める。
しかし、美衣子の包丁は俺の目の前に振り下ろされた。
座っていたソファに深々と突き刺さり、あわや俺の大事な息子が貫かれる所だった。
「ふ、ふぁ…!」
恐怖で変な声を出してしまった俺に、ニッコリ笑顔を見せ、美衣子は立ち上がった。
「さよなら修司さん。今迄ありがとう。」
「ちょ、美衣子…」
そしてルームにある電話でフロントに電話をした後、美衣子は自分だけ出ることを伝え、ドアのロックが間いた所で出て行った。
呆然とその後ろ姿を眺める事しか出来なかったが、ふと我に返り、怒りが込み上げてくる。
「…俺より偽装の旦那の方がいいだと?そうかよ…じゃあ俺の方がいいって、思い出させてやらねぇとな…」
俺はホテルを出たが数日後、ソファの弁償代をホテルから請求され、忌々しい思いでそれを支払った。
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