第12話 病み?
「てめぇ!まだ別れてなかったのか!」
遊びに来た妹が、宗次郎がいない事を私に問い詰め、事情を話す事となった。
妹、『
細い眉をピクピクとさせながら仁王立ちしている睦美の隣には、娘の『
「あねごぉ、おじきは?」
樹里亜は私の事をあねご宗次郎の事をおじきと呼ぶ。
宗次郎は意外と子供好きで、樹里亜が来た時は嬉しそうにしていたし、よく構っていた事で、樹里亜に好かれている。
「あぁ、うん。ごめんね。ちょっと暫く帰ってこないの。」
私がそう言うと、樹里亜は明らかに残念そうな顔をして肩を落とした。
「折角ゲーム教えてやろうと思ったのに…」
そんな樹里亜の頭を、私は撫でてあげる。
「チッ!そりゃあ兄貴に愛想尽かされるわなぁ!」
睦美は宗次郎の事を兄貴って呼ぶ。
「もぅ…ちゃんと話し合いするって言ってるでしょ?」
「あぁ!?んなもんムリに決まってるじゃねーか!大体なんで結婚してるのにあのクズと繋がってんだよ!」
睦美は浮気とか大嫌いで、旦那さん一筋。
旦那さんはこれまた気合いの入った人で、何とか言う数百人規模の暴走族の頭だったらしい。
らしいって言うのは、旦那さんはもう亡くなってる。睦美は私と違って明るくてサバサバしてるから、それなりにモテるんだけど、再婚する気は無いと言っている。
「おっ邪魔しま〜す!」
そんな話の中、突然の来客が。
もう一人の妹『
「あれ?どうしたの?」
その場の雰囲気を感じ取って、私と睦美の間に視線を彷徨わせる。
「このバカ姉が、まだあのクズと繋がってて、兄貴と離婚するかもってよ!」
大声で萌衣に説明すると、説明された萌衣は目を輝かせる。
「マジで?!じゃ、じゃあさ、私がお兄さん貰ってもいいよね?!」
何となく気がついてたけど、萌衣は宗次郎が気になっているようだった。
萌衣は可愛いタイプで、非常に男ウケがいい。
「だ、だめ!」
私は慌ててしまう。
「なんでよ〜、いいじゃん。ミイ姉は好きな人いるんでしょ?離婚したならもうお兄さんは自由じゃない?」
「萌衣もバカだけど、言ってる事は間違いじゃないよね?今更兄貴が誰と付き合おうが関係ないだろ?」
「まだ!まだ離婚してないもん!」
「もんっ!じゃねえーぞゴラ!あんな良い旦那貰って、何が不満なんだあ”ぁ”!」
「そうだよ!もう自由にしてやりなよ。そして私にちょうだい!!」
「や、やらない!ソウくんは渡さない!」
「てめぇ!じゃああのクズはどうすんだ!?今更兄貴に拘る理由はなんだ?!」
そう言われても、私は言葉を濁す。
だって、セックスがこの世のものとは思えない程良かったなんて、言えない…
「うそっ!マジで?!お兄さん最高じゃない!ちょうだい!」
口に出ていたようだった。
「バカか!不倫の次は体目当てかよ!我が姉ながら、情けねえ…だからって、萌衣とってのも兄貴が可哀想だろ。しゃーねぇな、兄貴は樹里亜にも良くしてくれてるし、あたしが保護してやるか!」
そんな事聞き逃せるわけがない。
だって睦美の顔は少しだけ赤くなってニヤニヤしているのだから。
「ちょ、ちょっと!結局あんたもソウくんの体目当てじゃないの!」
「はぁ?そんな訳あるか。お前と一緒にしないで貰いたいね。あたしは樹里亜の面倒を見てくれるお礼として…」
「きったない!ムツ姉汚いよ!まぁ、子供産んだ体より、ピチピチの私の方が有利だけどね?」
「んだとゴラァ!」
「ヒャッハハイ!おじきはあたいが貰うよ!」
頭が痛くなってきた。
もうみんな帰って欲しい。
樹里亜まで参戦してもう収取がつかない。
宗次郎は渡さないし、色々考えたい事もあるし。
修司さんの事はどうすればいいの?
もう訳分からないけど、本当に長い間過ごした彼と切れるなんて、出来そうもない。
じゃあ何があるから私は修司さんと一緒にいるのだろう。
「自分は硬派だって顔して親子丼企むとか、ムツ姉も相当だよね!」
「ざけんなぁ!樹里亜を勘定に入れてんじゃねぇぞこのビッチが!」
「違いますぅ〜。私はちゃんと彼氏と別れてから次に行きますぅ〜。その周期が早いだけですぅ〜!」
「十分ビッチだろうが!」
「そうだそうだ!親子丼は美味しいよ!」
「ジュリは黙ってようね?」
あ〜もぅ!
「帰れ〜!ソウくんは渡さないし、暫く来るな!このバカ妹共!」
「てめぇが一番のバカだろうが!この腐れが!」
「本当にバカだよね〜。もう帰ろう。お兄さんは私が貰うけどね。」
「おじきと遊ぶのはあたいだよ!」
「うるさぁーい!」
三人を追い出して、コーヒーをいれた。
一週間あるから、それ迄に色々と考えなきゃ。
修司さんとも会わないといけないけど、会うのが億劫になってきている。
どうしたものか…
取り敢えず修司さんと話をして、結果如何によっては、殺して私も死のうかな。
あ、それだと宗次郎が妹に取られるかもしれないし、修司さんを殺した後宗次郎も殺して、宗次郎の傍で死のうかな。
取り敢えずの方針は決まったところで、良く切れる包丁を物色する。
「これかな?」
完熟トマトに潰れることなく、スっと刃が入っていく。
「よし!おっけいー!」
さて、修司さんと会う日に備えなきゃ。
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