第3話 頭の中の…
初めて会ったのは、大好きな彼氏とイタリアンレストランで食事をしている時だった。
偶然親友の碧と、その元彼という宗次郎が店に入ってきて、私に気づいた碧が話しかけて来た。
宗次郎は興味無さそうに私と目も合わせず、大好きな彼氏、
「美衣子、分かってるな?」
修司さんは既婚者で、奥さんとは冷めきった関係だとは言うけど、まだ籍を入れている関係上、表立って私と会っているのは良くない。
でもそのうち離婚するから、その時は一緒になろうと言われているので、何時もデートがホテルというのも我慢出来る。
そんなこんなで、知り合いに会った時には、上手く誤魔化して欲しいと言われているので、修司さんは先に帰らせ、私は碧の席に向かった。
碧は知っているから、今更誤魔化しようも無かったんだけど、それを修司さんに言う訳にもいかなくて、何時も通り私が誤魔化したという事にして、安心して貰う。
こういう心配りは、妻になる為には必要だと思う。
以前『…ても、俺が幸せにしてやる。』なんて言われて、私はもう彼から離れられない。
碧達の席に向かうと、余りちゃんと見てなかった宗次郎と軽く挨拶をして、その後は碧と話をした。
この時点では、私の宗次郎の印象は、格好良い男の子って感じだった。
元彼という事だけど、なる程お似合いのカップルだと思った。
たしか以前聞いた事があって、元彼とは身体の相性がとても良くて、多分セックスに関しては宗次郎以上の相手は居ないだろうと言っていた事を思い出した。
宗次郎に聞こえないように、碧に耳打ちする。
「この人が例の人?」
そう尋ねると、碧はニヤリと笑う。
「そうなんだよね〜、顔も良いでしょ?」
「うん。確かに格好良い人だよね?でも相性って言うけど、やっぱり好きな人とするのが一番だと私は思うなぁ〜。」
「それはそうなんだけどさ、って言うか、私は未だに宗次郎の事好きだし?」
私達はそんな話ばっかりしている。
所謂下世話な話題が多くて、でも碧は宗次郎のエッチがどう良いのかは、詳しく教えてくれない。
知られたくないらしく、その時はどんな変態的な内容なのかと、興味津々だったけど、現在結婚して宗次郎とエッチをしている私としては、こんな緩いのが碧の好みだと思い、とても意外だった。
イケメンだし、優しいし、エッチは身体は気持ち良いけど、性的興奮はするものの、性的快感が訪れなくて、物足りなさしか感じなかった。
でも、宗次郎とエッチしてからというもの、修司さんは激しく求めてくれるし、身体の調子が良いのか、セックスも凄く気持ち良い。
宗次郎はこんなに愛情を示してくれるのに、利用しているのが後ろめたい気持ちにもなっていた。
それがまた、不倫を加速させる。
多分、脳から何かしらの物質が出ているのだと思う。コントロールがとても難しい。
イタリアンレストランでは宗次郎と話さなかったけれど、何処からか熱い視線を感じて、不思議な事に、私の身体も反応していた。
そんな事は初めてで、店内に居るのが辛くなってきた。修司さんは帰ってしまったから、今日はもう会えないし、帰って大人しくしていようと、二人に挨拶をして帰ろうとした時、宗次郎が飲んでいたビールのジョッキをテーブルに置き、口許をペロリと舐めている所が、目に入った。
その舌の色が目に焼き付いたけれど、私は二人に挨拶をして店を出た。
家に帰り、修司さんと少しだけメッセージのやり取りをし、お風呂に入った。
お風呂から上がってゆっくりと本を読みながら、酎ハイを飲む。
寝る時間になってベッドに入ったけど、私は眠れなかった。
と言うか、本の内容も入ってこなかったし、宗次郎のあの姿を見た瞬間、私は濡れてしまい、修司さんに申し訳ない気持ちにもなりながらも、宗次郎の舌を思い出して、自分で慰めた。
それが背徳感と相俟って、とても複雑な気持ちで絶頂を迎え、その後申し訳なさが襲ってくる。
これが癖になり、結婚するまで宗次郎をネタに何度も同じ事をしてしまう事になった。
これは修司さんに対しての浮気じゃないから良いのだと自分に言い聞かせ、何時の間にか私の頭の中で、宗次郎をソウくんと呼びだし、指先から全身を舐められていく想像をして、気持ち良くなる。
実際の宗次郎のエッチは、全然違うものだったけど、私の頭の中のソウくんは、結婚後も活躍する事となった。
何となくだけど、結婚後、私は性欲が強くなったような気がする。修司さんには、セックスだけを求めてる訳じゃないけど、偶に物足りないまま終わる事もあり、そんな時は頭の中のソウくんが活躍する。
約半年、結婚生活を続けたけど、宗次郎とのエッチは碧が言うように相性が必要だと思う。
初めてエッチをするとなった時、やはり私は修司さんに申し訳ない気持ちがあり、それと同時に碧から聞いていた事で、変な期待もあった。
そのエッチは、まるで身体の中をマッサージされているような感覚で、初めてだけど、エッチの最中に寝てしまうというとんでもない事をしでかした。
初めてのエッチで寝られて、宗次郎は怒っているかと思ったけど、翌朝久しぶりに爽快な目覚めを経験し、隣に寝ている宗次郎が先に起きていて、私にニコリと笑いかけてきたので、少しだけホッとした。
冷たい印象の宗次郎がニコリと笑うと、その威力は絶大で、修司さんがいなかったら危なかったと思う。
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