第1話 屋上の殺人鬼①

【七月四日 水曜日】


 七月冒頭、快晴。


 季節は移り行き、頬を撫でるように心地よかった春風はだんだんと熱を含んだものへと変わり始め、そよ風の中に初夏の香りを感じさせるようになってきた。


 気温が高くなってきたのは確かだが、八月に訪れるであろう本格的な猛暑と比べれば、今の時期はまたまだ涼しい部類と言えるのだろう。


 現に、昼休みに学校の屋上で昼寝をしていた俺が、こうして生きているのがなによりの証拠である。


 これがもし、今日が本格的な夏日で、カンカン照りの太陽の光をモロに身体に受けていたのなら、俺は十中八九干からびて死んでいただろうし、ミイラ男としてこの学校の歴史に名を刻まれていたに違いない。


 怖いね、脱水症状って。




「またあの夢かよ………」




 季節の話はさておいて、俺、夏目隼人は、幼少期からとある怪奇現象に頭を悩まされている。


 その怪奇現象とはズバリ、同じ内容の夢を何度も繰り返し見るという事だ。


 始まりは、たしか小学生の頃だったように思える。




 その夢は数ヶ月に一度の頻度で発生し、俺の快眠の邪魔をする。


 しかし、それが「どんな夢なのか」と聞かれても、多くを答えられるような内容ではなく、そこがどこなのか、なぜそこにいるのかも分からない、ましてや背景や景色もない、そんな場所で、ただ呆然と過ごすだけ。


 ただ、それだけの夢。


 目が覚めた時に覚えているのはこれだけで、前世の記憶でもなければ、明晰夢でもない、本当に何のメッセージ性もない夢なのだ。


 俺が何故この夢を見るのか、何のためにこの現象が起きているのかは、正直自分でもよく分からない。


 けれど、一応この夢が原因で自分に何かしらの不幸な出来事が巻き起きたり、身体に異常が発生したりするわけではないので、なんとか許せているというか、共存できているというか。


 不思議と、この夢に対して不安を感じたり、恐怖を抱いたりしたことは今までなかった。




 ただ、ひとつ。




 この夢を見た後は、決まってなんだか寂しいというか、悔しいというか、総合的にマイナスな気分になってしまうのだ。


 恐怖や不安は感じないのに、なぜか悲しくなってしまう。


 まったくおかしな話である。


 まぁ、そう感じるのも一瞬だけで。


 少し時間が経ってしまえば、すぐに何もなかったようにいつも通りの自分に戻ってしまうため、そこまで困ったものでもない。


 ただ、沈んだ気分になってしまうのはこの現象における唯一のデメリットでもあるので、気になってしまうのも仕方がないのだろう。


 けれど、所詮夢は夢。


 絶対に現実世界には介入してこないのだから、あまり深く考えないのが一番なのかもしれない。




 あくびをしながら、チラリと左手に巻き付けられている腕時計を確認する。


 分針と秒針の位置が、昼休みの残り時間がもう十五分程度しかないことを示していた。


 自分でも気づかないうちに、かなりの時間をお昼寝と自身の悩みについて考えるのに消費してしまっていたらしく、いつの間にかお昼休みは終了の時刻を迎えようとしていたようだ。


 ここから自分の教室に戻るには、少なめに見積もっても五分はかかってしまうので、そろそろ屋上を後にした方が良いのだろう。


 若干早いような気もするが、授業に遅れて無駄な注目を浴びてしまうリスクを考慮すれば、余裕を持って屋上を出るのは正しい選択だと言えるはずだ。


 さて、教室に戻ろうかと、まだ寝起きの倦怠感がある体にムチを打って起き上がる。


 ポケットの中に入れていた黒色のマッキーペンが太ももに当たったのに対し「ペンなんて入れてったけ?」と疑問を呈したその時。


 ガチャリと、屋上の入り口の扉を開ける音が聞こえてきた。


 どうやら、何者かがこの屋上に侵入してきたらしい。


 その事実に、俺は少し驚き、咄嗟に物陰に隠れてしまう。


 なぜ、隠れてしまったのか。


 その理由は我が校の校則にある。


 実はこの屋上、そもそも生徒は立ち入り禁止なのだ。


 普段は万が一にでも生徒が自殺を図ったり、怪我をされたりしたら敵わないという理由で屋上の扉は施錠され、教師や事務員以外は入れないようになっている。


 しかし、そのカギが壊れているのを二ヶ月前くらいに偶然発見し、昼寝をしたい時や、一人になりたい時に使わせてもらっていたのである。


 つまり、現在俺は学校における規則を破っている状態にあるのだ。


 この屋上は、俺達が日常的に使っている教室がある場所からは少し離れているので、入れもしない屋上に、生徒がわざわざ訪れるとも考えにくい。


 となると、何かしらの理由で屋上のカギが壊れているのに気が付いた教師、または事務員が、点検、もしくは修理に来たという可能性の方が前者の理由よりも圧倒的に高くなるはず。


 もしそうだとしたら、少し厄介だ。


 立ち入り禁止の場所に無断で出入りをしていたのがバレでもしたら、必ず何かしらの注意や処分を下されるはずだ。


 さすがに退学はないだろうが、掃除や反省文の提出など、ちょっとした罰が与えられるのは十分にあり得る。


 それは面倒なので、何とか回避したいところだ。


 そうと決まれば、この場で取るべき行動の選択肢は「隠れて様子を見る」一択である。


 屋上に現れた人物が教師ないし学校の関係者であれば、見つからないように息を潜めてその人物が立ち去るのを待てば良し。


 現れたのが生徒であれば、ただこの場を立ち去れば良し。


 この選択こそが、今の状況では一番リスクが少ないはずだろう。


 人生はリスクヘッジ。


 すなわち、危機管理をいかにうまくやるかが重要だと俺は思っている。


 危ない橋は渡らない。


 これこそが、成功への一番の近道なのではないのだろうか。




 自分がどう動くかを瞬時に決め、屋上に現れたのがどんな人物なのかを見極める。


 離れた距離にいるため確定とは言えないが、髪の長いうしろ姿が視認できるので、おそらく女。


 なにやら周りをキョロキョロと観察しているようだ。


 何をしているのかは全く分からないが、その女がスカート、もというちの学校の制服を着ているのが遠巻きに見て知れたので、この女は生徒だというのが判明した。


 ふぅ、と安堵のため息を吐く。


 そうと分かれば、今すべき事は簡潔。


 彼女がこの学校の生徒であるなら、特に悪びれる必要もないだろう。


 今すぐこの屋上から立ち去って、教室に戻ってしまおうと、そう思った。


 幸い、昼休みが終わるまでにはまだ時間がある。


 これで、授業には遅れずに済むはずだ。




 どうやら、俺の心配は杞憂だったようだ。


 無駄に頭を使って損した。


 などと考えながら、さっさと教室に戻ろうと、物陰から出ようとした、




 その、瞬間。
















「好きだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
















 視界に、絶叫する女が映りこむ。


 一瞬、何が起きたか自分でも分からなかった。


 けれど、それは幻覚でも幻聴でもない紛れも無い事実で、目の背けようない真実だった。


 屋上に現れたその女は、なんの前触れもなく、突然、大声でそう叫びだしたのだ。


 俺は急いでまた物陰に身を隠し、今、自分の目の前で何が起こったのかを考えた。


 しかし、考えてみても答えを見つけられるはずもなく、あえなく脳が活動限界を迎え、全ての思考がフリーズ、俺はその場で知能を失った肉塊と化してしまう。




 え? 好きだ? 隙だ? 須木田? いやいやまて、おかしい。




 ふぅと一息ついて、心を落ち着かせる。


 幸い、彼女はまだ俺がここに隠れているのに気が付いていないようなので、焦らず、ゆっくりと、冷静に物事を考えてみよう。


 とりあえず、突如発現したこの出来事における可能性の整理だ。




 まずは人数。


 屋上に現れたのはあの女一人だけだと思っていたが、実はもう一人、その女にはお相手がいて、二人の愛の告白シーンをたまたま俺が見てしまっただけという可能性だ。


 それなら屋上で声高らかに恋心を爆発させていたとしても何らおかしくはないだろうし、納得も行く。


 そうだ、それに違いない。


 一人きりで愛の告白なんてするわけがない。


 さっきの絶叫は俺の見間違いだったんだ。


 頼む、そうであってくれと心の中で祈りながら、バレないように物陰からこっそりと女がいる方を覗いてみる。
















 しかし、そこにいた人物は、先ほど絶叫していた女ひとりだけだった………
















 ……いや、あきらめるのはまだ早いだろう。


 何か間違いがあった可能性なんて沢山あるに決まって……


 あっ! そうだ! 単純に、俺の聞き間違えじゃないのか?


「好きだ」ではなく、「月だ」とか言ってただけじゃないのか?


 それでもかなりおかしなヤツではあるが、一人空想告白よりはマシな気が……
















「好きです!!!」
















 …………………。


 またもや聞こえてきた女の叫び声が、俺を絶望の淵へと引きずり込んでいく。


 こうなってしまうと残る可能性は少なくなってくる。


 俺はそのあまりにも直視し難い現実を前に、最後の、そして一番あって欲しくはない彼女の真実を想像した。


 もしかたらこの子には想い人、すなわち、好意をよせる相手がいて、その人に想いを伝えるべく、ここでその練習をしていたのかもしれない。


 好きな相手の前で失敗しないように、健気に、必死に。


 いくらなんでも張り切りすぎというか、時と場所を弁えろとも思うが、もしそうであった場合、俺がその瞬間を盗み見たのは、偶然であっても最低の行為であって、決して許されることではないだろう。


 少々強引な理論ではあるが、あり得ないとは言い切れない。


 そして、それがもし事実であるのならば、俺は、彼女に謝らなければならないだろう。


 とにかく、行動しなければ彼女が何をしていたのかはいつまでたっても分からないままだ。


 勇気を出して、彼女に話を聞いてみよう。


 そう自分に言い聞かせ、彼女の方に足を一歩踏み出した。


 すると、彼女はその両手で頭を抱え、またもや突然、叫び出した。
















「こ、殺してやるぅ!」
















 俺は出しかけた足を引っ込めて、また元の物陰へと体を隠し、彼女同様、両手で頭を抱えて、ガタガタと震えだした。


 前言撤回。


 可能性はただ一つだけ。







 俺は、学校の屋上で殺人鬼に遭遇していた。







 やべぇよ……やべぇよ……本当にやべぇよ……


 アイツ、今、殺すって言ったよ? 


 その殺意はさっき告白していたヤツに向けられたものなのか?


 それとも俺か? 


 前者だったら愛が重いし、後者だったらまったく身に覚えがないんだけれど……いや、どちらにしてもおかしいけども!


 いや、待て、待て。


 殺意の矛先なんてどうでもいいじゃないか。


 とにかく、今はここから脱出するのが最優先事項だろう。


 俺がこの場所に潜伏しているという事実をヤツに勘付かれてしまうのも時間の問題。


 そうなってしまえば、覗き見に激怒した奇人による屋上殺人事件が発生してしまう。


 こんなところで、こんな死因で、俺は自分の短い人生にピリオドを打ちたくはなかった。


 何が何でも、生きたまま脱出したい。


 そして、欲を言えば五体満足でいたい。




 さて、どうやってここから脱出しようか。


 できるのなら、ヤツとはあまり関わりを持ちたくない。


 それを考慮した上で、一体どんな脱出手段が考えられるだろうか。










 屋上から飛び降りる?




 ……いや、それでは死んでしまう。落ち着いてくれ、俺。




 じゃあ屋上の床を掘る?




 ……コンクリート。しかも素手。




 必死に知恵を振り絞ってみたが、ロクな脱出手段が思いつかずに、徐々に焦りが出てきてしまう。


 こんな時、どこ○もドアがあったならどんなに良かっただろうか。


 助けて、ドラ○もん。




 ちくしょう。


 こうなったらもうあの女に気づかれる暇も与えずに出口まで走り抜けるしか方法はないじゃないか。


 多少どころか多大なリスクがあるが、もはや脱出法はこれしかない。


 少しでも助かる可能性があるのなら、賭けてみる価値はあるだろう。


 リスクヘッジなんかクソ食らえだ。




 大丈夫! やればできるぞ! 自分を信じろ! 


 そう自分に暗示をかけ、走りだすタイミングを調整する。


 そうやって少しの時間が経った後、不意に、彼女は俺が隠れている場所とは反対の方向を向いて何かをし始めたので、好機とばかりに俺は出口に向けての全力ダッシュを開始した。


 普段あまり運動をすることがないので、ちゃんと体が動くのかが心配だったが、実際に走りだしてみると、自分でもびっくりするくらいに体が軽く、足を自由自在に動かせているように思えた。


 人間、追い詰められと元々の能力以上の力を引き出せるのだと誰かが言っていたが、もしや今の状態がそうなのだろうか。


 人間ってすごい! 


 このままいけばヤツに気づかれずに屋上から脱出するのも夢ではないかも知れない!


 そう、希望を感じながら走り続けた。




 しかし、運命というものはそう簡単には俺のことを見逃してはくれないらしく、あと少しで出口だという場所まで到達したあたりで、急に彼女がくるりとこちらに振り返り、考えうる中で最悪の状況、つまり、俺と彼女の距離が一番近づいたところで、俺達の視線はばっちりと合ってしまったのだ。


 動揺したためか、俺の足はカバンに無造作に入れたイヤホンのごとく複雑に絡まり、そのまま派手に、勢いよく転んでしまう。


 不思議と痛みは感じなかったけれど、それにて終了。


 こうして、決死の逃走劇は失敗にて幕を閉じたのであった。




 ……あぁ、終わった。


 多分、このまま大した抵抗もできずに殺られてしまう。


 高校生活はおろか、俺の人生は特に何も成し遂げられないまま終わってしまうんだ。


 そう思うと、急に何もかもがどうでもよくなり、彼女に対する恐怖も薄らいできた。


 これが絶望からくる無気力状態というやつだろうか。


 なんだっていい。


 もうどうにでもなれ。




 その場でむくりと立ち上がり、転んだことによってついたズボンの裾の汚れを払った後で、彼女の顔を覗き込む。


 目の前にいる女の子は案外可愛らしい顔立ちをしていて、背は高くもなく、低くもなく、制服もきちんと着こなされていて、一見、普通の女子高生のように見えた。


 だが、これで人気のない屋上で、空想告白や殺害予告などの奇行をしているのだから世の中は恐ろしい。


 人は見かけによらない。


 彼女はそれを体現しているかのような存在だった。


 世界中の男性は、見た目だけで女性を選ばないことをオススメする、マジで。




 そんな彼女の様子を見ていると、彼女自身もまた、自分の身に何が起きたのかというのをよく理解できていないようで、先ほどの俺と同様、現在の状況が呑み込めずに混乱しているようだった。


 まぁ、無理もないだろう。


 自分の奇行を他人に見られたのだ、どうして良いのか分からなくもなる。


 しかし、その事実は俺にとっては不幸中の幸いであり、またとないチャンスでもあった。


 彼女が錯乱しているうちに、今までの一連の出来事を、口から出まかせに嘘でもついて「ごめん、許してね」的な流れに乗せてうやむやにさえしてしまえば、ここから無傷で生還できる確率は格段に跳ね上がる。


 この場から逃げ切ってさえしまえば、後はこっちのものだ。


 教師に相談するなり、警察に駆け込むなり、いくらでも彼女を追い込む方法はある。


 だから、今、この瞬間。


 俺には腹を括って、自ら彼女に話かける必要があった。


 会話の主導権を俺が握ってしまうのだ。


 そうすることによって、自分に有利な展開を築けるのであれば、そうしたほうが絶対にいいに決まっている。


 正直、あまりこの女には関わりたくはなかったが、それでこの状況を収められるならば背に腹は代えられない。


 意を決して、俺は彼女に話しかけた。




「お、おまえ……」


「い……い……」




 俺が彼女を呼ぶと、彼女は俺の声に重ねるように、言葉というか、言葉らしきものというか、ほとんど嗚咽に近い音を発した。


 い? なんだ? イカの刺身? 磯辺焼き? 


 …………何だよ、その無駄に熱い海鮮推し。




「い……今の……見てたの?」




 彼女はそう言った。


 今の、見てたの?


 あぁ、そんなことか。


 はい、全部見てましたよ、あなたの奇行。


 最初から最後まで全部、おはようからおやすみまで。




 どう足掻こうが、見てしまったものはしょうがない。


 一瞬、何も見ていないと答えようとも思ったが、こんな狭い屋上で、それなりの声の大きさで発せられた彼女の声を、今更聞こえていませんでしたと言い通すにはさすがに無理があったし、実際に全部見てしまっていたので、下手に嘘をついて、それが彼女にバレて逆上でもされるほうがかえって面倒だと思い、正直に答えることにしたのだ。


 これ以上事態が悪化するのだけはどうしても避けたい。




「み、見ましたけど……」




 そう答えると、彼女の顔はみるみる赤くなり、まるで茹でタコのように真っ赤になると同時に、目にはうるうると塩気を含んだ水分が溜まりだしていた。


 はじめから分かっていたが、あえて言わせてもらおう。




 やばいぞ……これは面倒なことになる……




「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」




 そう思った矢先。


 またもや彼女は叫び出し、全速力で出口に走っていく。


 想定外のスピードに俺も困惑してしまい、何もできずに、突っ立ったまま、彼女が走り去っていくのをただポカーンと見ているだけ。


 やがて彼女は校舎の中に姿を消し、屋上には俺一人だけがポツンと取り残されてしまった。




「何だったんだ……今のは……」




 今しがた起きた出来事に脳の理解が追い付かず、俺は混乱し、その場に立ち尽くす。


 そのまま数分の時が過ぎた後だろうか。


 俺の頭の中には「これはよくあること」なのではないのだろうかという一つの極論が浮かび上がってきていた。


 まぁ、確かに、人生生きていれば色々な事があるだろう。


 だから、屋上で昼寝をしていたら、突然奇声を上げる女と遭遇するなんてことも、実はよくあることなのでははないのだろうか。


 そう考えてみると、混乱のせいもあるのか、このような状況は世間では日常的に起きていることなんじゃないかと思えてきた。


 たとえ、その女が叫んでいた内容が一人空想告白であったり、突然の殺害予告であったりしても、そんなことは良くあることで、実は世の中では結構頻繁に起きていることで、学生時代にはあるあるな話で、ただ単に俺が知らなかっただけで。


 そう思うと、少し心に余裕ができてくるような気がした。


 そう、これはよくあること。


 世の中の常識。


 つまり、特に心配したり、恐怖に怯えたりする必要はまったくない。


 そうだ、そうに違いない。


 こんなことなんて、よくあるよくある……




「ねぇな……」




 自分を誤魔化そうと、なんとか必死に積み上げた無茶苦茶な理論を自らぶち壊し、またもや混乱の渦に引き込まれかけたその時、授業開始を告げるチャイムが鳴り、俺が午後の授業に遅刻することが決定した。

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