第0096話 偽装夫婦
「……ユリコさんは、ちゃんとガザマンさんを
「大丈夫だと思いますよ。 勇者様ならきっと引きずってでも連れてきますよ」
マイミィとマルルカの会話を聞いて驚き、マウィンが口を開く。
「え? そ、それは
場所は
マイミィとマルルカは飲み物を飲み、おしゃべりをしながら、ユリコたちの帰りを待っているところだ。 2人はテーブル席で向かい合って座っている。
二人が座っている4人がけの
マウィンは緑の
その
この子の顔を見ればガザマンとマウィンの子供だとひと目で分かる。
カウンターの向こうでは、マッチョな
彼は優しくやわらかな表情を見せている。
なんか、"がたいのいい" 彼がそんな "やわらかな表情" をするなんて、とても想像できない。 すごい "ギャップ" を感じてしまう。
店の中は
とてもこの店内で
マルルカとマイミィが、神術で店の"
クソ野郎どもを
いや、元に戻るどころか、すべて
店の中も、まるで
通常なら営業時間帯であり、
あんな事件があった
店の入り口のドアには『
ガザマンは
「あはは! 大丈夫ですよ。女性といってもユリコさんは勇者様なんですから。
たとえランクSの冒険者でも、勇者様は なんなく 引きずってきちゃいますよ。
あの
「え、ええ……まぁ……そうなんですが……ちょっと信じられません……」
カラン! カラン! カラン……
「すみません。今日はもう閉店しま……」
「ガザマンっ!?」
ガタン!
うわさをすれば
ん? ユリコは? …… ああ、ガザマンの後ろにいた。彼は大きいからな……
入り口をふさぐようにガザマンが立っており……、
ユリコは、彼よりも
状況を説明しよう……
入り口のドアに取り付けられているベル、
それを言い
彼女は驚きと喜び、
彼の名前を言い終えると同時に、子供を
その
「ガザマン……ああ神様、感謝します。 よかった……帰ってきてくれた……」
「や、やぁ、マウィン。ただいま……」
ガザマンが
吹き込んできたその風がマウィンの
風は、
「いやぁーっ! 見ないでっ!」「……うう……うわぁーーーん!」
マウィンは
マウィンに
しばらく、どうしたものかと迷っていたようだが、ガザマンは
ガザマンのその行動に
一方、マウィンは顔を
彼女は愛するガザマンには
本当は
ガザマンは妻と娘を
『ユリコさんならマウィンが
ああ、
彼は
が、いつの間にか、
「マウィンさん。大丈夫よ。すぐにその
「え?」
「ああ……ユリコさん……あ、ありがとうございます……」
マウィンは泣きやみ、聞き返し、ガザマンはユリコに
マウィンはまだ顔を隠したままであり……一方のガザマンはユリコに感謝した後、涙をポロポロと
その2人の間で
ガザマンはユリコのことが
「お
「え? あ、あのう……」
マウィンは
「マウィン。この方は神様のお
ありがたいことに、
ユリコは『私は
マウィンは驚き、期待に
彼女は顔を隠すのを忘れてしまったかのようだった。
「俺は先の戦で、右足と右目を失ったんだが、ほら見てごらん。この通り、なんともないだろう? お
ガザマンの話を聞いて、逆にマウィンの
「これは実際に見てもらった方が早そうね?
痛みも、
……それじゃぁ、やるわよ? 修復!」
マウィンの返答を待たずしてユリコは修復神術を母子ふたりに
すると……
マウィンと娘は、
すぐにその光のベールは "すぅっ" と消える……。
「はい。お
はいこれ、
ユリコは"ポシェット"から
マウィンは手鏡を受け取ると、
「……ね?
あ、もちろん、顔だけじゃなく
直後、彼女の左目から、
「ああ……神様……。ありがとうございます……うう……」
「いやいや。私は神じゃないから……」
「すみません。お
「いやいやいや。 私はまだ
「え???」
「勇者様! もう! ホント、めんどくさいですよ!
なにも考えずに、マウィンさんの感謝の気持ちをそのまま受け取って下さい!」
ユリコは、結局はマルルカから『めんどうくさい』と言われてしまうのだった。
「え……ええ。 わ、分かったわよぉ……
あー……マウィンさん。 どういたしまして……治ってよかったですね。
マルルカ、これでいいんでしょ?」
「……うわぁ~、ホントめんどくさいんだからぁ……」
「ん? なんか言った?」
「い、いえ! あ、はい! そ、それでいいですぅ……ふぅ~~~」
マルルカもマイミィも
「あのう……
マウィンが
「へ?
ああ……でもこれ、みんなには
うわさがうわさを呼んで、人々がわれもかれもと治療を求めて
この世界で生きていくのに
「しょ、
ああ、でも、なんとお
どんなに感謝しても、感謝しきれないです。
夫ばかりか、私や娘までも治療していただいて……
このご
「おねえちゃん、ありがとう!」
「いえいえ。どういたしまして。 お父さんが帰ってきてよかったね?」
ユリコの言葉に
「おとうさん?」
「そうよ、マミン。 あなたのお父さんよ。
ね? いつも話しているように、たくましくて、
マウィンは、娘に向けていた笑顔とはまた違う、優しい
「あなた。私たちの娘のマミンよ。 今2歳半。かわいいでしょ?
あなたが
この子がいてくれたから、心が
マウィンは涙声になってきたためか、ここで一旦、
「でも……うう……よかったぁ……本当に、本当によかった……
生き…て……生きて帰ってきてくれて本当にありがとう……うう……」
マウィンは涙が
ガザマンの目からも涙がポロポロと
そんな両親の顔をキョトンとしながら娘のマミンはながめているのだった。
親子3人のその
◇◇◇◇◇◇◇
「マイティさん。俺がいない間、妻と娘が大変お世話になりました。
本当にありがとうございました」
ガザマンが、カウンターの向こうで料理を作っている『黄色いハンカチ』の店主、マイティに、カウンター
ガザマンの後ろには、彼に
この店のオーナー兼シェフのマイティと、ガザマンの妻のマウィンは実は
マイティは
マイティの
マイティとガザマンの間にも直接の
まぁ……結局は見つかってしまい、先ほどのような
それでも、おおよそ2年はうまく
クソ野郎どもの襲撃が、たまたまユリコたちが、ちょうど
そうじゃなければ、マウィンはクソ野郎どもの
「うふふ。いいのよぉ。 あたしもマウィンちゃんの夫役、とても楽しかったしね、あたしもすっごく助かってたんだからぁ」
スキンヘッドでマッチョな
そう。マイティ、彼は……いや彼女?は身体は男性だが心は女性なのだ。
だからこそ、ガルゴイルは、必ず生きて帰ってくると信じている大切な部下であるガザマンの
マイティとマウィン、この
ということで、今現在、この店の中には『心だけで判断』すれば、男性はガザマンだけである!
「え? 私の妻もマイティさんの助けになってたんですか? えーと、それは……?」
「あ、ほら、あたしって
会ったばかりだし、料理も食べてないのでよく分からないけど……と、ガザマンは思ったのだが、
「でね、絶対に
でもなぜだか、あたしひとりでやってた時は
『まぁ、当然だろう……
マイティさんはスキンヘッドでマッチョだからなぁ。見た目がちょっとヤバそうだもんな。
冒険者をやっていたからなのか、
ガザマンは、心の中ではそうつぶやいていたのだが、口から出たのは……
「そ、それは なんとも
「でしょぉ? ホント、
でね。 ガルゴイルちゃんに頼まれてさぁ、ガザマンちゃんの
「は、はい。
「うふ。 マウィンちゃんが言ってた通り、あなた、ホント、いい男よねぇ?
マウィンちゃんのいい人じゃなかったら、あたし、ほれちゃう。 うふふ!」
「あ・は・は……あ、ありがとうございます……あ・は・は……」
ガザマンは顔を引きつらせながらも、なんとか笑顔を作っているが……
その様子を、彼の妻であるマウィンはクスクスと笑いながら見ている。
マルルカ、マイミィはなんとも言えない
この世界では "ジェンダー・マイノリティー" に対しての
マルルカとマイミィも、シオン神聖国の人間だったので、"
ユリコにはそのあたりの
彼女はニコニコしながら、楽しそうにガザマンたちの会話を聞いている。
「えーと、どこまで話したかしらね? んーと……?、
あ、そうそう。 それでね、あなたの奥ちゃまに来てもらってからっていうもの、まあ~、
「は、はい。
口ではそう言いながら、ガザマンは心の中でつぶやく……
『マウィンは顔の
マイティさんには申し訳ないが、むさい男が作る料理よりも、やはり美人が作った料理の方がいいもんな! マウィンはすっげぇ美人だからなっ!! ふふふ……
それに……マッチョマンひとりでやっているよりも夫婦でやっている店の方が入りやすいってこともあったんだろうなぁ……』
ガザマンが
「さっき外から見ていましたら、仲のいい夫婦が、楽しそうにやっている店のように見えましたからね。 料理はもちろん
そういった "アットホーム" な
「そうね。 多分、マルルカさんの言う通りですね。
"
「そうそう。ガザマンさんたら、本当の夫婦だと思い込んじゃって、泣きべそかいていましたもの。 ねぇ~? ガ、ザ、マン、さん! うふふ!」
マルルカ、マイミィの言葉を受けてユリコがいたずらっぽくガザマンをからかう。
「うぐっ! ゆ、ユリコさん! も、もう
あの時はホント、あまりのショックで自殺しようかと思ったんですから……」
「あらあら。 ガザマンちゃん、か、わ、い、いぃ~。
うふふ。 あたしとマウィンちゃんが
「うっ……は、はい。
その最愛の人であるマウィンの楽しそうに笑っている姿を見たら……
俺が身を引いた方が、彼女にとっては幸せなんだろうなぁ……と。
そう必死に思い込もうとするんですが、最愛の人を失うのがショックで……
心が
「……」
突然『愛してる』と言われたマウィンは、真っ赤になって
「マウィン! よかったぁ……本当によかった! ああ……心から愛している!」
「きゃっ。 あ、あなた……」
ガザマンは高ぶった感情を
ガザマンはひと目をはばからず、ボロボロと涙を流す……。
彼はこの場にいる人たちなら、
彼はこの瞬間、最愛の人のもとへと戻ってきた喜びをかみしめていた……。
「ちょ、ちょっとガザマン? ね、ねぇ……もぉ~、
マウィンは、ちょっとだけ
◇◇◇◇◇◇◆
ガザマンとマウィンの
不安の正体がなんなのかを考えていると、
それは、この食堂に
『あの時、あの男は私たちにいやらしい目を向けながらニヤリと笑ったわよね……
あれはいったいなんだったのかしら? な~んか、気になるなぁ……
どうも
「……ユリコさん! ユリコさんてばぁ~」
「あ、マイミィ? ご、ごめん。なんの話だったかしら?」
「勇者様? ガザマンさんとマウィンさんを見て、ダーリンとイチャイチャしたくなったんじゃありませんかぁ? うふふ?
「そ、そんなこと考えてないわよっ! ちょ、ちょっと
「またまたぁ~。もぉ~、ユリコさんはホント! めんどくさいんだからぁ~」
「なっ!? ……
「「うふふ!」」
そんな、"たわいもない"会話をしながら、店主のマイティが作ってくれた
だがこの後、このユリコが
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