第0094話 串焼き屋台の店主
「
「はい……ですが、妻の
マルルカとガザマンの会話を聞いていたユリコが口を開く……
「都会というのは人間関係が
「確かにそれもあるんでしょうが、な~んかなぁ……
ユリコさん。近所の人たち、みんななんか変じゃなかったですかぁ?
視線を合わせてくれないっていうか、おどおどしてるっていうか……
なんとなくですが、なんか隠しているような気がしたんですが……」
「マイミィもそう思った? 最初はニコニコしていたのに……
火事の話、特に、ガザマンさんの奥さんの話を切り出した
「そうそう、マルルカさん! そうなんですよね~。 私たちとは
「なるほど。そう言われてみればそんな感じだったわね……
そうなると……どうやらこの件の裏にはなんかありそうね?
あれ? そういえば、火災の原因ってなんだったのかしら? 誰か聞いた?」
「いいえ。何度か聞いてみたんですが、なぜかみんな、『分からない』の
「そうなんですよ、ユリコさん。 私も聞いてみたんですが、マルルカさんが言った通りの
ガザマンは
肩を落として地面をボーッと
ガザマンとユリコたちは火災現場の
火災そのものは、おおよそ2年前に起こったらしく、
ガザマンの妻がどこへ行ったのかは誰もが知らないと言うだけだったのだ。
それどころか、ガザマンの妻、マウィンの名前が出た
「さぁ、ガザマンさん。今日はもう日も
続きは明日にしましょう!」
「はい……」
「あせる お気持ちは分かりますが、勇者様が言ったように明日にしましょう!」
「はい……」
「あ。今夜の
ダーリンが神殿前の広場にあなたが
「はい……」
ガザマンは、
4人は神殿へと向かって歩き出した……
しばらく進むと、肉の焼ける
「……なんて
「本当だな! こりゃぁ、金を返してもらわねぇとなぁ……あふん、はふん……」
「くちゃくちゃ……いは(いや)、んぐっ、
「さぁ、オヤジ! あり
「んぐんぐ! おうよ! 今回はそれで
その美味しそうな
どうも串焼き
男どもは全部で5人。
不味いだのなんだの言いながらも美味そうに串焼きの肉を
「勇者様! あれ! あいつら絶対に悪者ですよ! やっつけましょうよ!」
「ユリコさん! 小っちゃな女の子が! ほら!」
「マルルカ! マイミィ! いくわよ!」
「「はいっ!」」
「ガザマンさんはあの女の子を守ってやってね!」
「あ……はいっ! 分かりました!」
この
「マルルカ! マイミィ! いい!?
血の海は見たくないから、剣の使用も禁止! いいわね!?」
「「はいっ!」」
「まずは彼等に
「「はいっ!」」
なんかまた『デコピン勇者伝説』が増えそうである。
4人は高速移動で
「あなたたち! いい
さもないと
むさい男どもはいっせいに振り返る。
「もぐもぐ……ごっくん。
なんだなんだぁ~? ねぇちゃん、お前らには関係ねぇ! すっこんでろ!
……お? おお! いい女が3人! こりゃぁいい! ひひひっ!
分かった! やめてやってもいいがなぁ、ひっひっ! ただし条件がある……」
「うひょひょ! ああ、そうだ。
「おう! そうだとも、その
そうしたら、コイツらのこたぁ
「はぁぁぁーーっ! ったく! この世界のクソ野郎どもといったら!」
ユリコは大きく長~い "ため息" を
「マルルカ! マイミィ! やるわよ!
「「はいっ!」」
一瞬、ユリコの
「あ、訂正! 頭がちぎれ飛ばない程度に
「「はいっ!
男どもは、ユリコたちのことを女性だと思ってなめくさっていた!
が! 次の瞬間!
ぺち! ぺち! ぺち! …… ぐはっ! ぐふっ! うがっ!
ズガガガン! ズガガガガン! ザザザザザザーーッ!
ぺち! ぺち! …… どはっ! うぶっ!
ズガガン! ズガガン! ザザザザーーッ!
もうお分かりのことだと思う……そう! いつものあれである!
デコピン一発! → バック宙1回 → 地面で2回バウンド……
最後は顔から着地して、そのまま地面で顔を
クソ野郎どもは全員が
皆、顔に
いや、ドバドバと流れでている!?
「もう大丈夫ですよ! ご主人、娘さんも、
「ああ、大丈夫だよ。 まぁ、
まっ、
「と、取り敢えず? 一応? って……え?」
マルルカが驚く……
「いやなに……あの程度のクソ野郎どもの"5人や10人"をぶちのめすなんざ、俺にとっちゃぁ、わけもねぇことなんでなぁ。
ハッキリ言わせてもらやぁ~、いらんお
「おっ、お節介っ!? あなたねぇ! それはないんじゃ……」
マイミィが
人助けだと……よかれと思ってやったことだが、結果的には『親切の押し売り』のようになってしまったらしい……。 もうこれ以上は何か言うべきではない。
ユリコはそう思って、お
「あらあら。お
あの
ユリコらしからぬ
ユリコの口もとだけを見れば笑っているのだが……目の方は笑っていない。
「さ、みんな! お
「「はい……」」
ん? ガザマンが動こうとはしない?
「……隊長……ガルゴイル隊長……ああ、よかった……ご無事でしたか……」
「ん? お前さんは……」
「……ガザマン!? お前、ガザマンなのか!? お前も無事だったのか!?
そうか! 生きていたのか! そうか、そうか! よかったぜ!
3年も、どこをほっつき歩いていやがった!?
「はい!
そう言いながらガザマンは
ガルゴイルには
「ああ……これか? 左腕と左目はあの戦いでな。
ん? あれ? あの戦いのさなか、負傷したお前を
「はい。私はあの戦いで右足と右目を失ったのですが……
実は先ほど、こちらの方々……
ガザマンはそう言うと何かに気付いて『はっ!』としたかのようだ。
ユリコたちにはこの
「あ! お
この
ユリコたちの方を見ながらガルゴイルを
「隊長。この
「あっ! ガーゴイル!」
「いえ、マイミィさん。 この方の名前はガルゴイルさんです。
ガーゴイルではありませんよ?」
ガザマンが、隊長と呼ばれる屋台の店主の名前を
「ユリコさん、マルルカさん! 私ちょっと行ってきます!
すぐに戻りますから、ちょっと待ってて下さい! ……
そう言うとマイミィはどこかに転移していった。
「ちょ、ちょっとマイミィ! どこに行くのよ……って、行っちゃった……」
「勇者様、マイミィはどうしたんでしょうね?
ガルゴイルさんの顔を見てなんか思いだしたようですが……なんでしょう?」
「さぁ……ま、でもすぐに戻るって言っていたからここで帰るのを待ちましょう」
「はい」
「えーと。 は・は・は…… ということで、これでご
ガルゴイルが
「先ほどは『いらんお
心からお
ユリコたちは にっこり と笑う。
ユリコが口を開く……
「あらあら。 たとえ私たちじゃなくても人の
あ、そのままじっとしていて下さいね! …… 修復!」
すると、ガルゴイルの身体が
が、すぐにその光のベールは消える。
ユリコはガルゴイルが失っていた左腕と左目を修復したのだ。
その他の
ガルゴイルは30歳である。
これが彼本来の姿なんだろう。
ガルゴイルは左腕と左目が元に戻ったことに
「ああ……なんと……」
ガルゴイルは
『なんと』と言った後、
「うふふ。お
うふふふふ!」
ユリコは彼女を見ている者を
「お、お后様、ううっ……あ、ありがとうございます。 なんとお礼を申し上げればよいのか……うぐっ……ううう……」
ガルゴイルは涙声にならないように、ゆっくりとした
「ち、違うわ!
『あらあら……またまためんどうくさいユリコさんが出たわ……ふぅ……』
ユリコの言葉を聞いてマルルカが心の中でつぶやいた。
「え!? では! どうか俺の嫁になって下さい! 俺はあなたにほれました!」
「はぁあっ!?」
ユリコは驚きのあまり
いやはや、いきなり
「もしもあなたが
俺の嫁になって下さい! どうかお願いします!」
「あわあわあわあわ……」
ユリコは真っ赤だ。
どうしたらいいのか……いや、というか、どう
それを見かねたマルルカが口を開く。
「ガルゴイルさん。あなたでは無理です。 あきらめて下さい。
さっき、ユリコさんが言った言葉をちゃんと聞いていましたか?」
「え!? なんですかっ!?」
「ユリコさんは 『私は
ユリコさんは、今は
つまり『
「……」
ガルゴイルは見るからに落ち込んでいる。
マルルカの言葉に、ユリコは『婚約者でもないわ!』と言いたかったが、この場をうまく
「隊長。ユリコさんは無理ですよ。
ユリコさんが、"あわや
その時の
ガザマンは、
ガルゴイルの
「とにかく! 上様がユリコさんを
隊長! 死にたくなかったら、どうか、すっぱりとあきらめて下さい!」
「……ま、まだユリコさんからは、
ひょっとしたら、OKしてくれるかも知んねぇじゃねぇか!? そうだろう?
そ、それで……ど、どうでしょうか? ユリコさん!?」
ユリコは、ここはきっぱりと
「はぁあ!? 何を勝手なことを言っているのよ? 私があなたを好きになるなんてことがあるわけないじゃないの!
だからすっぱりとあきらめて! 私はシン
今は正式な
それに……私には他の男なんてみんな "ゴミ" よ! "ゴミ" にしか見えないの!
あははははっ! ごめんなさいね~」
ユリコは
『 はぁはぁ 』と
ユリコの側でマルルカは "ニヤニヤ" している。
「……ご、ゴミ!? は・は・は……そ、そんなぁ……(しょんぼり……)」
そこへマイミィが転移で戻る……
「あれれ? どうしたんですか? なんかありましたぁ?」
「ま、マイミィ! あなたいったいどこへ行ってきたのよ?」
「あはは……あのう……あれですよ、あれ! ほら、ユリコさん。
盗賊との
「え? マイミィ? こっちに転移してくる前に
「でへへぇ~、そうだったんですよぉ」
「ひ、ひどい……」
「マルルカさん、そんなこと言わないで下さいよぉ~。
ガザマンさんを
「それでマイミィ? ガーゴイルはどうしてたの?
魔物だから泣いてたりはしなかったでしょうけど……」
「いえ、ユリコさん。それがね、ガーゴイルくんは、私が行ったら目をうるうるさせながら
で、おいおいと声を上げて泣くんですよぉ。 信じられますぅ?」
「ちょ、ちょっと
「はい。
どうも
「え? 群れを全部あそこへ招喚したの?」
「そうなんですよ、マルルカさん。
ひとりぼっちにしておいた
「大丈夫?
「あ、ユリコさん、その心配は全くありませんよ!
『あそこを通る旅人たちを襲うな!』『旅人たちを盗賊から守れ!』
って、
ぬかりはありません! むふーっ!」
マイミィは
◇◇◇◇◇◇◇
「動くな! さもねぇと このガキの命は ねぇぞ!」
ガルゴイルの失恋をガザマンが
ユリコたちがマイミィに、どこへ、なんのために転移していったのかを
先ほどユリコたちがデコピンで倒して、気絶しているはずだった"クソ野郎"どものひとりが、ガルゴイルの子供を
クソ野郎は治癒魔法が使えるのか、あるいは、ポーションでも使ったのか、
「さぁ、あり
で、女たちは俺の
動くとこのガキの
さぁ! 大人しく言うことを聞け!」
クソ野郎に
「チャミィ。 いいかい。 ギュッと目を閉じていてくれるかい?」
「うん、パパ。 分かった……うう……」
ガルゴイルの言葉に娘、チャミィは
「
「うぐっ……」
ガルゴイルは『
瞬時にクソ野郎の背後に回ったかと思うと……
どこからか取り出した短剣でクソ野郎の首を
「
……ゴロン! …… ブシューーッ! …… ズサッ!
ガルゴイルはクソ野郎に
その直後! クソ野郎の首は胴体から離れて地面へと落下!
その首からは
その直前に幼女とガルゴイルは、ユリコたちのもとへと移動したため、血を浴びることはなかった。
この時、ユリコたちはガルゴイルの
ガルゴイルが、ユリコたちの
「ねぇねぇ、ガザマンさん。『しゅくち』? ってなんでしょうか?」
「あ、マルルカさん。『
瞬間移動できるのは、見えている
『転移』の方は、管理システムのコンピューターが移動元と移動先の2点間を結ぶ
『
基本システムの計算能力は、管理システムよりもかなり
瞬間移動に使えるエネルギーが、その人の魔力だけであることから、視界に入っている範囲内でしか "瞬間移動" できないのである。
「へぇ~。そうなんだぁ。 ということは私たちも練習するとできるようになるかも知れないですね、ユリコさん?」
「ええ、そうね。
「「はいっ! そうしましょう!」」
ガルゴイルが子供の頭をいとおしそうになでているのを見ていたガザマンが、ふとあることに気が付く……
「あれ? そういえば隊長は
その子、チャミィが不思議そうな顔をしながらガザマンの顔を見る。
「ああ。この子はあの
たまたま、この子の両親が
「パパ……」
「
あ! あっちは見ちゃダメだよ」
「う、うん。パパ……」
チャミィが地面に転がっているクソ野郎の死体の方を見ようとしたのだが、急いでガルゴイルの胸に顔をうずめた。
その様子を見たユリコは、死体をなんとかしなくては……と考える。
『ここは
あ、そうだ! フェイザー
ユリコはフェイザー
「「す、すげぇ……」」
「あ! その手がありましたね! さすがは勇者様!
ダーリンの "
「え? マルルカさん、それはどういうことですか?」
「あ。さっきユリコさんがね……ごにょごにょごにょ……というわけなのよ!」
「なるほどぉ! そうでしたか! むふふ!
ユリコさぁ~ん。 もうすぐ私たちの仲間入りですねぇ~。むふふふふっ!」
「あ、あのねぇ……ったくぅ……」
ガルゴイルの
いや、どうやら、
ハーレムの件さえなければ、今すぐにでもシンの后になりたい…と思っているからなんだろう。
◇◇◇◇◇◇◆
「そういえば、ガザマン。 お前、"マウィンちゃん" とは
「いいえ、隊長。 それが
ガザマンはこれまでの
「ああ。なるほど。 多分だが、マウィンちゃんを守ろうとしてみんな
マウィンちゃんなら、
そこで、
「隊長! ありがとうございます! 会いに行ってきまーーすっ! ではぁぁぁ」
「あ! おい! こら! まて! 話は最後までき……
かぁ~っ!? あの
ガザマンは すごいスピード で遠ざかっていく……
「なんか
「ええ。そうなんですよ、ユリコさん。
実はマウィンちゃんが、ちょっと
ちょっと色々ありましてねぇ……
あいつ……落ち込まなけりゃいいんですがねぇ……」
「落ち込む? えーーっ!? ま、まさか、他の男と
「マイミィ!
「そうよ! マルルカの言う通りよ!」
「いや。それがユリコさん。実はマイミィさんが言うように、マウィンちゃんは今、男と
その
ユリコ、マルルカ、マイミィは、ガルゴイルの
「ああ……ガザマンさん。 大丈夫かしら?」
ユリコは、ガザマンが "
「
「「はいっ! そうしましょう!」」
ガルゴイルに『黄色いハンカチ』の場所を聞き、3人もガザマンの
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