第0026話 李下に冠を正さず
翌朝、俺は信じられない光景を目の当たりにした!
俺の心を衝撃が襲う!
「な、なな、なんじゃこりゃぁ~っ!!」
俺はなぜかベッドの上で素っ裸になっていた……いや、されていた?
……仰向けに寝ていた。いやこれは寝かされていたんだな?
俺の周りには……7人の神子たち!
7人の"フィアンセ"たちが、艶艶の紅潮した肌をして、うっとりとした満足げな表情をして寝ている……。 みんなも…素っ裸だ!
俺は事態を何となく察した……。
>>マスターの精力絶倫モードを終了し、通常モードへと移行しました。
な、なんだぁ? 精力絶倫モード?
「う、う~ん……、あ、ダーリン。 おはようございます」
「インガ! これは一体どういうことだ?」
「はい。子宝を授かるべく……みんなで3セットずつ……。
治癒系の神術って便利ですね。初めはすっごく痛かったんですが……。
3回目にはもう……うふふふ」
「インガ! 艶めかしく生々しいことを言うなぁーーっ!
えーーっ!? なんてこったぁーーっ!
み、みんなと……そういう事に!? えーーっ!?」
やはりそうだったのか……。
俺がこれまでごちゃごちゃと考えてきたことは一体なんだったんだ……。
……シオリの予言した通りになってしまった。 なんか悔しい……。
俺の声で他の6人も目を覚ます。 彼女たちは口々に朝の挨拶をする。
「みんなダメだろ! お互いの同意がないのに、こんなことをしちゃあ!」
「ダーリンの同意を待っていますと、おばあちゃんになってしまいますわ!」
ヘルガがいたずらっぽく言う。
「ダ~リン、最高でしたわぁ~。うふふふふ」
「た、タチアナ……」
「えとえと、色々考えすぎですよぉ。ドントティンク! フィ~ル! ですぅ」
「ディンク、な、なんか使い方を間違ってねぇか?
それに……感じろったって、俺はまったく覚えてねぇし……」
「ダーリン、往生際が悪いですわよ、ふふふ。もう観念されたらいかがかしら?」
「ゼヴリン……。往生際って……」
「ダーリンは私たちを妻にすると仰ったのに……今更嘘だって仰るのですか?」
「い、いや嘘じゃねぇよ、カーラ。でも俺が眠っている間にってのがなぁ……」
すると、俺のすぐ横に寝ていたソリテアが口を開いた……。
「ダーリンが起きていらっしゃる時であればよろしいのですね?」
「いや、ソリテア、お互いの合意が必要だってことだよ。
俺はこうなることを聞いていねぇし、同意してねぇぞ。それはマズいだろ?
いくら好き同士でも、合意がなけりゃ、犯罪にもなり得るぜ?」
ん?……みんな俺のことをダーリンと呼ぶようにになってる……な?
「私たちとはなさりたくないのですか?」
「そうじゃねぇ。そうじゃねぇけど……
お互いが、ちゃんと同意した上でじゃねぇとダメだっていう話だよ」
「ダ~リン、男らしくないですぅ~。腹を括りましょうよぉ~。ね?」
ぐさっ!……た、タチアナ……。
「ああ……。こうなった以上は腹を括るわ」
「よかった。ホッとしました。
それでは、早急にローテーションを組んで今後の"伽"の予定をスケジュール表にまとめてダーリンに提出致します。
今後お相手するのは、私たち神子だけではありませんし、人数も多いですので、不公平とならないように、平等となりますように調整致します。
ところで……一晩あたり5人でよろしいでしょうか?
ひとりずつお相手して、一晩に5回にされますか?
それとも5人一緒に1回の方がよろしいでしょうか?
もっと大勢の方がよろしいですか? ご希望があれば伺いますが?」
「そ、ソリテアさん……」
「毎晩全員で? その方がよろしいですか?」
「おおーいっ! そうじゃなくてだな……。これは俺の義務なのか?」
「はい、そうです。 一日も早く私たちは子宝を授からねばなりませんゆえ……。
今後はまだまだ妻が増えると思いますから……。
ですから、徐々に一晩あたりの"伽"の人数を増やすよう努力して下さい」
は・は・は……はぁ~~~。
こうして、心の準備が一切できぬまま、記憶さえも無いままに……
俺のハーレムが本格的に始動したのであった……。
こ、この敗北感は一体どこから来るんだろう……。
「もうこれで、一緒にお風呂に入ってもよろしいですわね。うふふ」
「そうだね~。そうだぁ! いっぱい汗を掻いたからぁ~これからぁ~ダ~リンも一緒にぃ~、みんなで、お風呂に入りましょうかぁ~?」
"異議なーしっ!"
「ささ、ダーリン、汗を流しに行きますわよ。お背中、お流ししますわ!」
「面倒ですからぁ~、ダ~リン、お風呂まで転移しましょうよぉ~。ね」
「わ、分かった。……転送!」
こうして俺が動揺している間にみんなと一緒に風呂にまで入ることとなった。
◇◇◇◇◇◆◇
シオリとさゆりが何となく笑みを浮かべている。さゆりの方はどちらかというとニヤニヤしているようにも見える。
朝食を終えた俺たちは、司令部へと来ている。今日は、管理者会議を行うことになった。今3人は、他の管理助手5人が到着するのを待っている。
司令部、宇宙ステーションには、カーラの家族を"ヴァルジャン村"へ送ってからやって来たので、助手のみんなを待たせていないかと心配したのだが……どうやら間に合ったようだな。
昨日神子たちが救ったメイグズは、俺の執務室で、寄進された金品のチェックを
インガとソリテアとともに行っている。
勤務の初日からメイグズひとりだけにはできないので、どうしたものかと考えていると、俺が何も言っていないのに、インガとソリテアがメイグズの手伝いを申し出てくれた。 彼女たちは神子たちの中でも特に気配りができる子たちだな。
その他のフィアンセたち……もう嫁たちというかべきか、神子たちは、神殿内の病院で外来患者の診察をしている。
ニング、ロッサナたちはその手伝いをすることになったようだ。看護師のような役割を担うらしい。
そして、いつものように、スケさんとカクさんは彼女等の護衛をする。
神殿騎士見習いの4人と、神殿騎士試験受験生の3人も、スケさんとカクさんと行動を共にさせている。
代官と一緒に悪神殿騎士が多く成敗されてしまった。それで、今の神殿は、神殿騎士不足なのだ。
だから、シェリー、ラヴ、ミューイ、ラフの4人は、今すぐにでも正式な騎士にしてやりたいし、受験生の方も3人とも真面目ないい子たちなので、もう合格は、内々では確定している。そういうこともあって、スケさんとカクさんと行動を共にさせているのだ。
騎士見習いの4人には、すぐにでも、正式な騎士にするつもりである事は言っていないし、受験生の3人にも、もちろん試験を受ければ即合格であるということは言っていないのだが……みんな快く、スケさんとカクさんと行動を共にすることを引き受けてくれたのだ。 まぁ、薄々と感づいているのかも知れないが……。
スリンディレとレキシアデーレは予定通り、今後の視察について検討する会議に出席中だ。スリンディレが17歳になった姿を見た随伴者がどんな反応をするのか見てみたいものだ。驚くだろうな。
キャルとシャル、シェルリィは、植物プラント農家の子供たちのところに遊びに行くらしい。自分たちよりも幼い子供たちの面倒を見るのが嬉しいみたいだ。
小っちゃな子たちから『おねえちゃん』と呼ばれて、照れくさそうに微笑む姿が
印象的だったな。
小っちゃな子供たちと話す時に、おねえちゃんっぽい話し方になるのも、とても微笑ましく、愛らしい……。
◇◇◇◇◇◆◆
「な~んかイメージとは大違いだなぁ……計器類やスクリーンがいっぱいあって、ピコピコ音がしている司令部をイメージしてたんだがなぁ……
真っ白で何もねぇんだな?」
「はい。すべてが脳内で実行可能ですから、計器類もスクリーンも不要です」
「ここが宇宙ステーションだとはなぁ……
重力がちゃんと制御できているから地上のように思えるな」
「はい。いきなりここで目覚めれば、ここは地上にある施設だと思うでしょう」
このとき、ふと、大学時代の物理学演習を担当していた教授が言っていたことを思い出した。 余談で等価原理の話になった時だったかなぁ……。
「宇宙船内部がテレビで映し出される時などに、よく世間では、『無重力状態』という言葉が使われるが、あれは正確には『無重量状態』と言うべきだ……。
万有引力、遠心力などの慣性力が互いに打ち消しあって、それらの合力がゼロ、あるいは、ネグレクトできるくらいに小さくなっているため、重力が働いていないように見えるだけだ。重さが無いというだけだ。系が変わることによって……」
すっごく昔の話だ……でも覚えているもんだなぁ、余談だったからかな?
しかし、重力の制御ってどうやっているんだろうなぁ……?
まさか、慣性力を利用しているわけじゃないだろうし……
な~んか、すっごいテクノロジーを使っているんだろうなぁ~。
まぁ、細かいことはどうでもいいかな。
ん? 全知師が何か言いたそうだったけどやめたようだな。
「窓もねぇんだな? 宇宙空間が見られると思ったのになぁ。残念だよ」
「それでは……外を見たいと念じてみて下さい。
鉛直方向も水平方向も共に360°外部の様子が見られます。
自分がまるで宇宙空間に浮かんでいるかのように感じられますよ」
「おおっ! ホントだ! 綺麗だなぁ……
まるで宇宙遊泳をしているようだぜ!」
「惑星ディラックをご覧下さい。我々がいたのがあの大陸です」
「ん? 裏側にもう一つ大陸があるぞ? あれは何だ?」
「はい。あれがシンさんが極悪魂の浄化区域を新設されようとしていた大陸です。
今は管理対象外となっています。ヒューマノイド種族は存在していません」
「ああ、あそこをどうするか……についての参考にするため、俺は地球へと視察に赴いたわけか……。なるほどなぁ……。でも放っておくのはもったいねぇなぁ?」
「はい。心清き者たちと王となるシンさんの子供たちのみをこちらの未利用大陸に
転送して、今管理している大陸は、生命をすべて滅ぼしてリセットし、監獄大陸として再利用するのもよいかも知れませんね」
「腐った魂の持ち主諸共、大陸を一旦リセットするのか? なるほどな……。
アイディアとしては面白ぇんだが……。
俺の子供たちに、また、ゼロから文明を築かせることになるとしたら、ちょっとかわいそうだなぁ……」
「
「いやいやいや……若い時の
苦労しなくて済むんだったら、させたくねぇなぁ、我が子には。
今はシオリちゃんもそう言っているが、自分に子供ができた時にどう言うかな?楽しみだぜ。絶対に甘甘になると思うぜぇ~。ははは」
「わ、私は……す、スパルタ教育で行きますからっ!」
「ははは……どうなるかなぁ~楽しみだぜ」
「わ、分かりました。で、では検証してみましょう!
今夜の子作り、が、がんばりましょうね!」
「へっ?」
「き、聞いていらっしゃらないのですか?
今夜のスケジュールには、私とさゆりさんが含まれていますが……?」
「あ・あ……そ・う・な・ん・ですね……は・は・は……」
あ、さゆりが頬を染めている……。
◇◇◇◇◆◇◇
大きな円卓と椅子が8脚、円卓を取り囲むように並んでいる。
俺の右隣にシオリ、左隣にさゆりが並んで座っている。
まだ、他の管理助手5人は来ていない。
「シンさん、美人助手みんなが"見れて"嬉しい?」
「そりゃ、会ってみたいわなぁ。一緒に仕事をするんだからな。
……気になるなぁ……」
「美人かどうか気になるんですか?」
「いや、お前さんの"ら"抜き言葉がな、ちょっと気になってなぁ……」
懐かしさから、さゆりと会話をする時には日本語を使ってしまう。
今も日本語で会話していたのだが、"ら"抜き言葉が気になったのだ。
「無理矢理日本人をさせられて、学校教育を受けてきたわけだが、小学校の先生が厳しかったんだよ、"ら"抜き言葉については特にな」
「へぇ、そうだったんですか。
でも……難しいですよ、『れる』がつくのか『られる』がつくのかを判断できません」
「いや、そんなに難しくはないぜ。小学校で習った見分け方を教えてやろうか?」
「え? そんなのがあるんですか?」
「ああ。あのな、まず『~しよう』という形に変えてみるんだよ。
例えば、『食べる』だったら『食べよう』ってな風にな」
「はい……」
「でな、最後が『……よう』になるものには、『ら』が必要で、
それ以外、例えば『走る』とかは、これは『走ろう』となって、
最後が『……ろう』で終わるだろ、こういうのは『ら』が要らねぇんだよ。
『食べる』は『食べられる』、『走る』は『走れる』になるってことだ」
「じゃぁ、『見る』は『見よう』で『……よう』だから、『見られる』ということでしょうか?」
「おお、飲み込みが早ぇな。その通りだ。 どうだ? 簡単だろ?
まぁ、例外もあるんだろうけどな……」
「で、美人助手を"見られる"のが楽しみなんでしょう?」
「は・は・は……ああ、楽しみだな。 そういうことにしておこう……」
そうこうしているうちに、助手たちが次々に転移してくる。
エルフ族担当者:シホ
ダークエルフ族担当者:シタン
ドワーフ族担当者:シマ
獣人族担当者:シノ
魔族担当者:シズ
ん? みんな"シ"で始まってるな? 偶然か?
「上様、無事のご帰還、おめでとうございます」
「シホ、ありがとう。まぁ、無事って言えるのかなぁ……ここにいた頃の記憶が、まったくねぇんだけどな。ははは」
みんなは口々に、俺が地球から帰還したことに対する喜びの言葉を述べる。
「みんな、忙しいところを集まってもらってすまんな。
紹介する。今度、シオンに代わって人族を担当してもらう"さゆり"だ。
みんな仲良くしてやってくれな」
「さゆりです。地球から転送されてきました。
この世界のことは、まだよく分かりませんが、一日も早く戦力となれますよう、努力し、がんばりますので、どうかよろしくお願い致します。
ちなみに……シオリさんと同様、私もシンさんのピチピチギャルハーレムのメンバーです」
"上様をシンさんだなんて!……ハーレム?……ざわざわざわ…………。"
いやいやいや……さゆりさんや、妙な空気になっちまったじゃないか……。
さゆりの自己紹介を受けて、助手たちがひそひそと相談しだしたぞ?
暫くすると……
「上様、これは納得できません。すぐに私たちもメンバーに加えて下さい!」
「へっ?め、メンバーって、まさか……」
「そうです。ピチピチギャルハーレムのメンバーです。
私たちも嫁にして下さい。地球に行く前の約束を守って下さい」
「えーと、なんだっけ? さっきも話したけど、記憶がなくなってるんだよ」
「この中の誰かを嫁にする事になった時は、必ず全員を嫁にして下さるって」
「えっ? シオリちゃん、そうなの? そんな約束をしてたのか? 俺は?」
「はい。確かに。命にかけて誓うと仰っていました……」
えーーいっ! もう考えるのはやめた!
「おう! 約束は守るぜ! みんな俺の嫁だ! よろしくな!」
"はいっ!"
「お前さんたちは俺の嫁なんだから、"上様"はやめてくれよ。いいな」
"はいっ! ダーリン!"
だ、だだ、だ、ダーリン? もう……どうでもいいや!
「お、おうっ! 俺のハニーたち! 頼むぜ!」
◇◇◇◇◆◇◆
「それで、ダーリン、人族以外の嫁候補者とはいつお会いになりますか?」
し、シオリちゃん、あ、あなたまでダーリンと呼ぶのね……。
「どうすりゃいいと思う?」
「今、ダーリンのフィアンセには、エルフ族、ドワーフ族、獣人族の女性がいらっしゃいますが……
その方たちと"まぐわう"前に、各種族の神子たちとお会いいただかなければならないかと存じます」
「でも、なぜ人族のお嫁さんばかりこんなに多いのでしょうか?
私たちは当初の計画通り、最終選考で3名まで絞り込んだのですが……」
「シタン、疑問は理解できます。これは成り行きです。
最終選考を行う前にダーリンと皆が出会って……その後、色々なことがあって、こうなりました。詳細は後で記録を確認して下さい。理解できると思います」
「承知しました。ですがこれではバランスが……
人族がこの惑星を支配することになりかねませんよ」
「そうです。それに……人族の中でも権力闘争が起きませんか?」
「シノ、そしてみんな!聞いてくれ!
懸念は分かるがな、今それを心配してもしょうがねぇと思うぜ?
この問題も含めて、今後はみんなで一緒に知恵を絞っていこうな!」
"はい。"
「それよりも、話を元に戻そう。俺はこれからどう動けばいい?
各種族の后候補と早急に会うべきなんだよなぁ?」
「はい。人族と他種族との間に差ができるのは好ましくありません」
エルフ族担当のシホの発言に、他のすべての担当者が頷いている。
「そうかぁ……。
実はここに来るまでは……俺は、すぐにでもシオン神聖国をぶっ潰しに行こうと思っていたんだがなぁ、どうやら、人族以外の后候補と早急に会わねぇといけねぇみたいだな。后候補のみんなには、人族の中央神殿に集まってもらうか?」
「それは絶対に避けるべきです。人族を優遇していると他種族の者たちに邪推されかねません」
「確かにそうだな。
「やはり……ダーリンには、全種族の中央神殿へお越しいただかないと!」
「だけど、シズ。順番はどうするの?ダーリンがおいでになる順番が意味を持ってこない?先においでになった方が重要と考えられていると邪推されない?」
「シノ、確かにそうだ。お前さんの言う通りだ。何かいい手がねぇかなぁ……」
初めに結論ありきの会議じゃねぇのって久しぶりだなぁ……。
誰の顔色を窺うこともなく……。いやぁ~こうじゃねぇとな!
「でしたら、ダーリンには各種族の神殿からの"呼び出しに応じて"出向いてやったと思わせるというのはいかがでしょうか?」
「さすがはシオリちゃんだな、なるほど。各種族の神殿からの要求に応じてやったことにするんだな?呼ばれたから来てやったんだと……。呼び出したお前らの希望通りに行ってやったんだから、順番なんかしらん!……っていうことだな?
うまい手だな。助手のみんなが示し合わせて、予め順番を決めておいて、それをやれば、角が立つことはねぇな。よしっ! そうしようぜ!」
"はいっ!"
「じゃあ、順番の方は、後でみんなで話し合っておいてくれ」
"はいっ!"
「それから、さっきの話に戻っちまうが、取り敢えず、初代王についてだが……、方針としては、各種族、王は一人だけに絞り込もうと思っている」
みんなは当然だというように頷く。
「もちろん、俺とお前さんたち管理助手との間に生まれた子に王となる資格を与えないつもりだ。サポート役に徹してもらう。王に選ばれなかった他の子供たちも、王をサポートする役に徹してもらう」
これもみんなは当然だと頷く。
「なんとか異種族間で争いが起きねぇようにしてぇんだが、なんかいい知恵はねぇかな?」
「小さい頃から各種族間の交流を深めることかと。できれば、子供たちは、みんな一緒に育てた方がよろしいのではないでしょうか?」
みんなも大きく頷いている。
「なるほどなぁシタン、もっともだ。……おっと、もうこんな時間か!
もっともっと議論してぇところなんだが、今日はこれくらいで打ち切るか……。
ちょっとこの件についてはみんなよく考えておいてくれねぇかな?
各種族が仲良く暮らせるような惑星にしてぇから、色々と知恵を絞ってくれ」
"はいっ!"
「じゃぁ、今回はこの辺でお開きにするかっ!?
おっと! そうだみんな、よければ昼飯はここで一緒に食わねぇか?
地球の料理をご馳走するぜ? どうだ?」
"はいっ!"
「一旦、人族中央神殿に戻って、みんなの昼飯を準備してからこっちへ戻ってくるから……そうだなぁ……午後1時頃にまたこの司令部に集合ってのはどうだ?」
みんなが了承した。
「それじゃぁ! 一旦、解散だ! お疲れ様!」
みんなは、席から立ち上がると、深々と頭を下げてから会議室を出て行った。
いや、獣人族担当のシノが残っている。
「どうした、シノ。そういえば、この間は呼び出したりして悪かったな」
「いえ。とんでもないです。
実は、その件の進捗をお話ししようと思いまして……」
「ああ、西部開拓詐欺の件だな。
ブーデル・ケルベルって詐欺師が見つかったのか?」
「申し訳ありません。アジトへ踏み込んだ時には既に、もぬけの殻でした。
"たぬき族"に扮したと思われる変装道具が一式現場には残されていましたので、詐欺師は獣人族ではなく、人族だったみたいです」
「そうか……じゃぁ、ブーデル・ケルベルという名も予想通り偽名だろうな」
「はい。似たような人物が、シオン神聖国の方へ向かったという目撃情報があり、現在その情報に基づいて捜査中です。
本当は今日までに犯人を捕まえたかったんですが……申し訳ありません」
「いや、ありがとうな。忙しい中、手数をかけさせちまってすまん。
でも、この短い時間でそこまでやってくれているとはなぁ……
さすがだ! シノ! 頼りになるぜ!
ホント、悪ぃけどな。この件、引き続き頼むな。申し訳ねぇ」
「はいっ! がんばります!」
「あ、でも無理だけはすんなよ?
お前さんの身体の方が大事だからな。 いいな?」
「はい……ありがとうございます」
真面目ないい子だな。
こういう子は無理をし過ぎるからな、気をつけてやらないとな……。
シノが去って行った。
入れ替わるように、一旦退室していたさゆりが戻ってきた。
「ダーリン、プライベートで頼まれていた件ですが……実は……」
彼女から聞かされた事実は、俺を暫しの間、思考停止に陥らせる内容だった。
彼女の口からは、信じられない、いや、信じたくない真実が語られたのだ……。
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