第0022話 成り済ます鬼畜
「シェルリィ、この部屋が今日からお前さんの部屋だよ。
自由に使ってくれていいからね」
神殿マンションの5階、一番西の部屋をシェルリィに使ってもらおうと思う。
「ありがとうございます。
でも……ひとりだけというのは、ちょっと怖いのですぅ。
お願いです、神様のお部屋においてもらえませんか? ダメですか?」
「そうか……。
キャル、シャル、このお姉ちゃんも
「いいともーっなの! だいかんげいなのぉ!」
(こくこく!)
「キャルちゃん、シャルちゃん、ありがとう。 よろしくお願いします」
「よろしくなのぉ~!」
(こくり!)
「まぁ、でも一応、この部屋はシェルリィの部屋としておくからね。
自由に使ってくれていいから。
キャルとシャルにもちゃんと自分の部屋があるんだよ。
そうだよね~、キャル、シャル」
「そうなのぉ! おっきいへやがあるんだよぉ~」
(ふむふむ!)
「本当にありがとうございます。 ゆ、夢のようですぅ……ううう……」
シェルリィはハラハラと涙を
絶対にこの子も幸せにしてやらなきゃなっ!
「ところで、シェルリィは
「神官になることだけ考えてきましたので……よく分かりません」
「そっかぁ~。当たり前かぁ……。
まぁ、これから色々経験して、ゆっくり自分のやりたいことを見つければいいさ。
「はい」
「じゃぁ、みんなのところへ行こうかっ! お昼ご飯を食べよう!」
「おおーっなのぉ!」
(おおーっ!)
「おーっ!」
お? シェルリィもキャルとシャルにつられて……
……まるで本当の三姉妹みたいだな。ははは。みんなかわいいなぁ~。
部屋割りを確認しておこうかな……えーっと。
10階。東から、シン(シェルリィ、キャル、シャル)、シオリ。
9階。東から、スケリフィ、カークルージュ、キャル、シャル。
8階。東から、ソリテア、インガ、ヘルガ、タチアナ・ロマノヴァ。
7階。東から、ディンク、カーラ、ゼヴリン・マーロウ、さゆり。
6階。シェリー、ラヴ、ラフ、ミューイ。
5階。神殿騎士試験受験生の3人が住む。最も西の部屋にシェルリィ。
4階。空き部屋が4部屋。
3階。東から、ニング、ロッサナ。空き部屋が2部屋。
2階。東から、ベックス、ティーザ、レイチェ、タニーシャ。
1階。食堂兼多目的ホール。厨房他。
仲間が増えたなぁ~。
空き部屋ばかりでどうしようかと思っていたが、残りあと6部屋か……。
◇◇◇◇◇◇◇
「たこやき、さいこーなのぉ!」
(ふむふむ!)
今日の昼食には、たこ焼きも出してみた!
今までのバイキングメニューには入れてなかった。
みんなは
「これは美味しいですわ! あ、2種類あるんですわね?」
「ああ、タレをかけたのと、シンプルなだし
ゼヴリンはどっちが好みだ?」
最初にだし
「えーと……私はシンプルな "だし
「おお! 気が合うねぇ~。 実は俺もなんだ!」
他のみんなも食べ
「あのぉ~、たこ焼きのぉ、"たこ" ってぇ~、何ですかぁ~?」
「そうか……知らねぇのかぁ? タチアナ、見せてやる! これだ!」
空中に、たこの動画を表示させた。
みんなの動きが
「きゃぁ~! きもちわるいのぉ~!」
(……)
「まぁ、見た目はアレだけど……
みんなが
「な、
「そうですね~、
こうなっちゃえばぁ~、平気ですね~。 美味しいですものね~」
タチアナが、たこ焼きをフォークで
みんなも "うん!うん!" と
「おいしいはぁ~、せいぎなのぉ!」
(!?)
ははは……、どっかで聞いたことがあるような無いような……。
シャルが首を
キャルの言ったことに首を
◇◇◇◇◇◇◆
神都の南約1900kmの位置にある大きな町、カレグザム。
その町の神殿も
ヘルガはその神殿で、お
ヘルガの実家があるフロルセンドゥ村は、カレグザムの東南、約40kmの位置にある。 海に
例によって、"地元ピープル" のヘルガのアドバイスに
村というよりは町のようだ。
今回の旅は非常に
ぶよぶよオーク野郎、"ケーニッヒ"に
(→第0008話参照。)
彼女、レキシアデーレ・ストリドムは、今、中央神殿を離れている。
今、彼女たちはちょうどこのフロルセンドゥ村の神殿にやって来ているらしい。
どういうわけか、中央神殿に、事前に提出されていた行動スケジュールとは大きく異なっているため、位置を特定するのに非常に苦労した。
といっても、実際に苦労したのはシオリなんだが……。
彼女がいてくれて本当に助かる。 最高のパートナーだ!
フロルセンドゥ村の入り口には、ちゃんと
ヘルガは神の
だから、検問所もヘルガの "
まさに
ヘルガの実家へと向かっている。
何やら大声で話をしていて、店の外まで
「俺が将来、
「けっ! 偉そうに! ……やい! チンショウ! お前バカじゃねぇのか?
「あーあ。 お前みたいな小物にゃ、俺の気持ちは分からんよ……」
ん?
"
チンショウか……、
そのうちに農民を率いて俺に
そんなことを考えていると、俺たちが進もうとしている方向で、何やら人だかりができている!?
見てみると、
彼女の魂の色は"青"。 とても罪人には思えないな。
俺の近くにいた野次馬の兄ちゃんに事情を聴いてみる……
「
「ああ、大きな声じゃ言えねぇがな、クソ領主に逆らったんだよ!
メイドとして、
それでな……」
この兄ちゃんから聞いた話によると……
前の領主が
どうやら今度の領主は "ひひじじいのクソ野郎" らしい!?
視察と
その巡回の本当の目的は、実は自分好みの美しい女性を探し出すことだという。
そして好みの女性が見つかると
だから、領主が巡回に出たという知らせがあると村人たちは、娘たちを領主の
話の途中、妙に引っかかる事を聞いた……
それは、
家族の者が会いに行っても
絶対に何かあるよな? 後で領主の
今
すると今度は『領主を
許せんな! ったくよう!
これはどう考えても、この世界にはゲス野郎が多すぎるよなっ!
こういう仕様なのか??
仕様といえば……地球の
はっ! いかん、いかん!
「スケさん、カクさん、念のためにヘルガを
さゆり! 俺が
お前さんはそのスキにあの子を
「「「「はいっ!」」」」
俺とさゆりは、高速移動で衛兵と女性との間に移動する。
衛兵の魂の色は赤黒い。 こんなヤツが衛兵なのか!?
「やい、衛兵! その子はてめぇには渡せねぇ! とっとと帰りやがれ!」
「だ、誰だ貴様! 邪魔をすると
さゆりが衛兵の意識が俺に向いたスキを突き、見事、女性を救出してヘルガたちのもとへと連れ去ったのだ!
しかし……どうも衛兵らしからぬ
「おっと! てめぇは、あの子のもとへは行かせねぇぜ!
大人しく
「何をバカな! そこをどけっ! どきやがれ!」
衛兵は剣を
だが! 剣は俺に触れた瞬間に "バキッ!" という音とともに折れる!
ブベッ! グハッ! ズダンッ! ドタンッ……
そう、いつものやつだ……。
強制的にバック転させられながら、地面をバウンドしていった!
俺がヘルガたちのもとへと戻るやいなや……
50人程の衛兵がわらわらと集まってくる!?
……俺たちは完全に
周りをざっと
というのも、ほとんどの衛兵の魂の色が赤黒いのだ!
なんだぁ? こんなことがあるのか?
ここにいるのは本当に衛兵なのか? まともなヤツは見た限りではいないぞ?
衛兵の
俺と目が合うと、ニヤリと笑いやがった!
ほおぅ? あれが
領主自らが、俺たちが進もうとしていた方から馬に乗ってやって来たのだ。
魂の色はかなり黒に近い赤色だ! クソ野郎確定である!
「
……おっ? いい女じゃねぇかぁ……しかも、4人が4人ともいい女だ!
うひひひっ! みんなワシがいただいてやるぜ! たまんねぇなぁ~。
おい、小僧! 大人しく女どもを差し出せば、
どうだ! いい話だろぅ? はははははっ!」
俺はスケさん、カクさん、さゆりにオリハルコン製の剣を生成して渡す。
「さゆり! ヘルガと娘さんを頼む!
スケさん、カクさん、
「「「はっ!」」」
スケさんもカクさんも衛兵どもを
彼女たちの一振りで、一度に3~4人が鎧ごと
あまりにも
あたりに強烈な "鉄さび臭" が
あたり一面が血の海だ! そして、どんどんと広がっていく!?
いやぁ~、スカッとするなぁ!
……と言いたいところだが、
だから、いちいち魂の色を見ながら斬っていく余裕は無いだろう。
二人は、彼女たちの
衛兵の中に魂の
さゆりは自分自身とヘルガ、そして、先ほど助けた娘さんを
あれ? いつの間にか、おエンも参戦している!?
俺に斬りかかって来るヤツを、おエンが
「おエン! ありがとう!」
「はっ!」
「それじゃぁ『真打ち登場!』と行きますかぁ! ……転移!」
転移して
領主にスリーパーホールドを "かる~く" 喰らわす!
俺は両腕で領主の首を "かる~く"
ブチッ! ブシューーーッ!
し、しまった! 頭がちぎれた!
またやっちまったぜぇ~! ち、
うわっ!? 血が
「おいっ! 手下ども! これを見やがれ!」
馬の
ドブシャッ!
その瞬間、頭を失った領主の身体が!?
ドピュ! ドピュ! と
いやぁ、びっくりした!
思わず "ビクッ!" としてしまったぜ……は・は・は。
領主のすぐ
「と、
その様子を見て俺は、
「
「おのれぇーーーーっ! お
領主だった
俺は馬上に立った状態から向かってくる男を飛び越えてかわそうとしたんだが……
男を飛び越えようと右足を前に出した瞬間!
ガッ! ブチッ! ブシューーーッ! ………… ドサッ!
直後、斬りかかってきた男の頭がちぎれて吹っ飛んだ!
ちぎれた男の頭はかなりの距離を飛んで行き、地面へと落下した!
何が起こったかというと……
男は俺に
頭を失った男の身体は後ろ向きに、ゆっくりと倒れていく……
ちぎれてしまった首があったところからは
「あ~あ! 急に
足があたっちゃったじゃないかぁ! 思わず顔を
……………………?
ん? お
"ひいいぃっ!"
ガシャン! ガシャン! ……
他の
その他の衛兵たちも側近たちに
ふと前方を見ると、スケさん、カクさんはヘルガたちのもとへと移動していた。
スケさんもカクさんも全くの
敵で生き残ったのは、俺の前にいる領主の側近を含めて10名程だ。
素直に降伏した者たちだけが残った。
抵抗しなかったからそいつらは無傷であった。
ちょっとでもスケさん、カクさん、おエンに戦いを
彼女
つまりここの場では……無傷か、死か、しかなかったのだ!
あたりは血の海。
すべての
馬上から地上へと降りると、領主の頭を側近たちの目の前に突き出し……
「おい、てめぇら!
このクソ野郎が
領主の魂の履歴を確認して分かったのだ!
なんと! コイツらは、この
領主とその部下になりすましていたのだ!
ニセ領主、盗賊の
盗賊の
神都から
そして、まんまと
ノルムの町で
元々は盗賊の
ノルムの町の、本当の統括神官の娘、"レキシアデーレ・ストリドム"が今滞在しているこの村が、まさか、こんなことになっているなんてなぁ……。
◇◇◇◇◇◆◇
ニセ領主の
スケさんとカクさん、ヘルガ、さゆりには先に神殿へと向かってもらった。
ノルムの町の、本物の統括神官"カルメデオ・ストリドム"の娘、レキシアデーレを見つけてもらって、俺から話があると伝えてもらうことにしたのだ。
俺が彼女に会う前に神官の気まぐれで、またふらっとどこかへ行ってしまうと
俺とおエンがニセ領主の館へ向かうのは、ニセ領主が
一応説明しておくが……
ニセ領主の側近二人を残して、残りの盗賊どもは、スケさんとカクさん、おエンが
あたりに広がっていた血の海も凍らせて、ヤツらと一緒にサメの海へと転送してやった。 このまま血の海にしておいたんじゃ、村人が困るだろうからなぁ。
転送の前に、盗賊ども全員のプライマリキー情報を"
サメに喰われて死んだ後にヤツらを待っているのは……恐ろしい地獄だ!
"
ニセ領主のバルテックの "
後で蘇生させて、ヤツらの被害者たちに
側近の二人
恐らくは被害者やその家族たちの手でなぶり殺しにされるだろう……。
当然、ヤツらには死後も地獄が待っている! 死後、魂を奈落システムへ送致することは確定事項なのだ!
「こ、この下が女たちがいる地下室です。 あの……お
「覚悟ってのは何だ?」
「め、目を
マップで地下室の状況を確認すると……
十数名の弱々しい生命体反応が確認できた。 そのすべてが女性のものだ。
急がねば……
俺たちは地下へと降りて、地下室への扉を開ける……。
直後! 鼻を
地下室の中は
目が慣れるのを待ってもよいのだが……
神術で光の輪を天井に張り付けるように10個出す。例のまるでLEDシーリングライトのようにも見えるあれだ!
光に照らされて明らかになった地下室の状況に、
監禁されている女性たちは全員が
目のやり場には困ったが、そんなことを言っている場合じゃなかった!
ここは
それぞれで、女性たちが
すぐに助けなくては!
うっ!? アイアンメイデンまであるのかっ!?
そのアイアンメイデンは閉じられている!?
うわっ! 血が
ああ……かわいそうに……。 ひでぇことをしやがるっ!
"見えざる神の手" を複数出して、女性たちそれぞれを
「
まずは女性たち全員を
……
「おエン! 上に行って、ロビーで
俺がここから女性たちをロビーに転送するから、ロビーに寝かせてやってくれ!」
「はっ!」
おエンがこの
今回復させた生存者たちを一気にそこへと転送した。
ん? この地下室の向こうにも部屋があるようだな……うわっ!
そこには被害女性と思われる
遺体が
外へと遺体を運び出すためにこの部屋に集めてあるのだろう……。
手足を
"見えざる神の手" で
アイアンメイデンの中に入れられていた女性も、既に亡くなっていたので、ここに同じように寝かせてある。
「
まずは遺体の浄化と修復を行う。
「修復は無事完了だ! 次は
……転送!」
先に転送した女性たちは、おエンの
突然俺と一緒に、多くの女性が、まるで眠っているかのような状態でロビーに出現したために驚いている者たちもいるようだ。
「
よし! 全員の
ニセ領主がこの村に来てから5週間の間に、
その中で死者は全部で11人。 そのすべてを
死亡後7週間を
その前に発見できたことがよかった!
遺体が処分されてしまっていたとしたらアウトだった。
ニセ領主の
いずれにせよ、早く発見できてよかった!
……だが、心の傷は……。
◇◇◇◇◇◆◆
被害女性たちは、俺とおエンとで
もちろん転移によってだが……。
心の傷までは治していないことを被害者家族にも説明しておく。
神殿前広場で被害者とその関係者だけで犯人の
被害者も、その家族や関係者も、
◇◇◇◇◆◇◇
ニセ領主、バルテックは
その側近2名とともに
3人のケツには "苦悩の梨" が!
これからレキシアデーレ・ストリドムとの面会もあるし……。
ヘルガの家族の
「みんな、待たせたな!」
この場にいる全員が首を横に振る。
「実はな、コイツが領主というのは "真っ赤な
コイツらはこのあたりを
だからな、遠慮はいらねぇぞ! 思いっきり
ここに集まっている被害者たちとその家族たちの中には嫌そうな顔をしている者もいる。
「まぁ、やりたくねぇヤツにまで
ホッとしたような表情を浮かべる者たちがいた。
「あ、それから、お前さんたちが
ほぼ全員に『なんでまたそんなことを!?』というような表情が現れる。
「そうするのは、コイツらに
俺の説明に、全員が納得したわけではないようだ……。不満そうな者もいる。
ヤツらの前には台があり、その上にはのこぎりやら、ハンマーやら、ペンチ等……
拷問に使えそうな器具がズラーッと並べてある。
被害者とその家族、関係者たちは
……やはり
ある被害女性の父親と
父親らしき男は、ヤツの前まで来ると、
直後! バルテックの腕を
ゆっくり、ゆ~っく~り……のこぎりを動かす!
ぎ…ぎゃああああぁぁぁぁぁぁぁあ!!
それが
その光景は、被害者、家族、関係者の
中には
そういった者の魂の色は、決まって "青"
被害者たちの
そうしている間に、アマゾネス・オーク・クイーンと連絡を取り、受け入れ体勢を取らせておいた。
「ようし、やめだ! もうこれだけやりゃぁ、少しは気が済んだんじゃねぇか?
そろそろアマゾネス・オークの
「てめぇら! ちぃ~とは
「「「……」」」
「てめぇらに
そして……生きたまま食い殺されてこい! 以上だ! ばっはは~いっ!」
「も、もう……か、かんべん……して…くれ…」
「てめぇらが襲った連中が
これは
男たちは真っ青な顔をしながら無言で転送されていった。
◇◇◇◇◆◇◆
今、神殿の
入り口の
俺の右にはヘルガ、左にはさゆりが、俺と
おエンは……どこかへと転移していったようだな。
俺たちは、レキシアデーレ・ストリドムがやってくるのを待っているところだ。
ああ気が重い……。
レキシアデーレは、ノルムの町の本物の統括神官カルメデオ・ストリドムのひとり
とにかく、まずは事実を正確に伝えよう……。
俺が入室を許可すると、入り口の扉がゆっくりと開かれた……
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