第0011話 行く道と来た道
キャルとシャルは今、俺のベッドの上で安らかな
たくさん泣いたせいか、彼女たちの目の
感動的な親子の再会に水をさすことになっては気の毒だと思い……
俺は泣いているキャルとシャルを
そして……ベッドの上にふたりを
この子たちにはつらい思いをさせてしまった。
本当にかわいそうなことをしたな……。
シオリも、俺たちと
俺がシオリに、再会を喜び合う親子の
ベッドを
キャルとシャルが自分と同じ犬族であることもあってか、心配になって、俺たちの
「
「ああ、この子たちには親子の再会を見せるべきではなかったよ。
俺の
「でも……"ずっとため
「こんな小っちゃな子たちが……
俺たちに気を使わせまいとして、がんばってたんだなぁ……。
この子たちを幸せにしてやりてぇなーっ! ちくしょう!
「シンさんはこの子たちを引き取るおつもりですか?」
「ああ、そうするつもりだ」
「うちも
うちはこの子たちと同じ
何かありましたら、
「ああ、助かるよ。その時は頼むな」
「はい!」
キャルとシャルを
この子たちがこうして眠っている間に、さっさと
「ラフ、すまねぇがな……俺はこれから、この子たちを酷い目に遭わせた野郎どもを
「分かりました。うちがちゃんと見ていますのでご安心下さい」
「よろしく頼む!……それじゃぁ~ちょっと行ってくる!……転移!」
ラフがシャルとキャルを見ていてくれていることと、これから、闇奴隷商人どもを
◇◇◇◇◇◇◇
「しまったっ! 逃げられたか!?」
闇奴隷商人たちを首まで
くそっ! 逃げやがったか……と思い、穴に近づく。
ん?
よく見ると、その穴は地中へと
マップ画面を表示させて、地中までを
『いた! 見つけたぞ! ん? 何なんだ? 地中を移動している?
しかも、かなり速いな……』
ヤツらを
……げっ! ワームか!? ワームに喰われちまったのか?
そうか!? 闇奴隷商人のボスを埋めた時に『んぐんぐ』言っていたのはこのことだったのか! ここの地中にはワームがいることを知っていて……、
『ワームがいるから埋めないでくれ!』
と、でも言っていたんだろうなっ!? うわっ。
ここを
ワームの腹の中には3人の
残念である。
俺は、ヤツらのステータスを
魔物の森の
まぁ、サメに喰われるのも、ミミズのお化けに喰われるのも
ただ…
ヤツらの魂を
ヤツらの魂を "
すべての魂は、シーケンスナンバーが生成時に自動的に付けられている。
その番号と、その他
マップ上で、ヤツらをマーキングする
『ああ、あの
SQL文を書き換えただけじゃ、対応できないんだけど……
部長…じゃ、修正は無理だろうなぁ……』
プライマリーキーの事を考えた瞬間、
俺は日本人として死ぬ前に、ある企業に導入した生産管理システムの修正をやっていた。 やっていたというよりも……
俺の
"部品"管理上の重要なデータベース・テーブルに
そのクレーム対応からも部長は逃げやがった!
客が
それでヤツの代わりに、俺が
かなりの遠方である。
もちろん、修正作業も俺がやることになっている……どう修正すれば良いのかは、初めっから分かっているだけに、客先へ出向くための時間のロスが痛い。
お客様が
自身が技術者であることから
俺が死んだことで、社内には対応できる技術者はいないだろうな……。
ユーザーに
おっと、いかんな……日本のことを考えてもしょうがないのに……。
闇奴隷商人を
◇◇◇◇◇◇◆
俺はノルムの町、神殿前広場に転移して戻ってきた。
まず最初に、シオリに事の
そして、シオリとも相談して、これから中央神殿へ向かうのはやめて、今夜はこの神殿前で
そろそろ
シオリと話した後、キャルとシャルのことが気になって自分の部屋へと向かう。
部屋の入り口のドアは開け放たれており、中から声が聞こえてきた。
「……でぇ、神ちゃまが『俺と一緒に
きゃ! なのぉ。 キャルもシャルも神ちゃまの "およめさん" になるのぉ~。
いいでしょ~。 えへへぇ」
「へぇ~、そうなんだぁ。 いいなぁ~」
ん?
まぁ……こんなことを言っているのも思春期までだろうから…まぁいいっかぁ!
俺はドアをノックしてから返事を待たず部屋の中に入った。
「ただいま」
「あ、キャルちゃん、シャルちゃん、ダーリンがお帰りよ!」
「だ~りん、おかえりなのー!」
(にっこり!)
だ、だだだ、ダーリン!?
うーーん……あんなこともあったしなぁ……
キャルとシャルの好きなようにさせておくか……。
「ラフ、ありがとうな! 助かったぜ!」
「いえいえ、また何かありましたら
うちにできることでしたら、なんでもしますから」
「ああ! ありがとう。 助かるよ」
「それじゃぁ…うちはちょっと行くところがあるんで、失礼します」
「どこへ行くんだ?
「今日、うちらが
そこでお世話になっていた
今日はここで野営すると聞いて……それで、お世話になっていたお礼に修復神術の練習がてら、
「なるほどな。 それじゃあ、俺もついて行こう。
……まぁ、お前さんも強くなってるから心配ねぇとは思うが、用心のためだ」
「キャルもいくぅー!」
(こくこく!)
「よし! じゃあ、
「わーい! わーいなの!」
(にっこり!)
「うちに付き合ってもらってもいいんですか?」
「ああ、キャルとシャルを見てくれていたお礼だと思ってくれ」
「はい。では、お言葉に
「さぁ~、それでは行こうか!」
「「は~い!」」
(はーい!)
おっ、シャルも笑顔で手を上げてる。
◇◇◇◇◇◆◇
「まぁ~かわいい! お父さんとお母さんと
俺たち4人で
「ちがうのー! わたしたちはみんな "およめさん" なのぉー!」
(こくこく!)
「あらあらそうなの。 かわいらしいお嫁さんだこと。
3人もかわいいお嫁さんがいるの? す・て・き・ね! うふふ」
最後は俺に、
ん?
犬族の女性、ラフと、犬族の子供たちキャルとシャルと一緒だからな……。
親子に見えても不思議ではないかもしれないな。
しかし、キャルとシャルが "嫁さん" ってのは……ないよなぁ~。
◇◇◇◇◇◆◆
「ラフ! キャルとシャルを頼む!」
前方から、道の真ん中を、"歩きたばこ" をしながら歩いてくるふたりの男に気が付いた。
そいつらは、火のついたたばこを持った手を身体の横に下ろし、
身体横に下ろされた手、
俺はその男らのもとへ高速移動し……
「歩きたばこはやめてくんねぇかな? あそこの看板に歩きたばこは罰金だと書いてあるだろう?」
「なんだ? てめぇは? ふざけたことを言ってるとぶん殴るぞ!
罰金なんて知るか!」
「いや、その火のついた "たばこ" がな、ちょうど小さい子供たちの顔の位置くらいにあるんだ。 すれ
「うるせえ! 危なけりゃ、そっちが
「小さな子供だぜ? うまく
それに
だから、やめてくれねぇか?」
「うるせえ
俺のたばこの火を
避けられねぇドンくせぇやつが悪い!
煙が毒だぁ?
そう言うと、手に持っていた "たばこ" を道に
「あ、ポイ
「うるせえんだよっ!」
男のひとりが、たばこを持っていない方の右手で、俺に
俺はそれを左手で受け止めて、ねじり上げる!
「痛ぇ! 痛ぇ! 痛ぇ!
これ以上は子供たちに見せられない……。
「ラフ、ちょっと先に行っててくれ。 すぐに追いつくから」
「はい。 さ、キャルちゃんシャルちゃん先に行こうか」
ラフがキャルとシャルを連れてこの場を離れていくのを確認する。
3人の姿が見えなくなったので男を地面にねじ
「あひぃ! あひぃ! ……」
「ポイ
その
ウゲッ! グヘッ! ブベッ! ……
俺は
「ゴミはちゃんと持ち帰ろうな。
男の右手をねじ上げたまま起こして立ち上がらせると、男をねじ
男の
「
と言い、男の
「ぎゃあー! あつ、熱いーっ!」
次々に火のついた "たばこ" を生成しては、男の顔に押し当ててやる。
「どうした? てめぇの理屈じゃあ、避けられねぇ方が悪ぃんだよな? そうだろう?これはてめぇが悪いんだよなぁ?」
「お、おお、俺が悪かった! も、もう
あ、ああ、歩きたばこはもうしねぇから……ゆ、
「約束するか?」
「ああ、約束する……だ、だから
<<全知師、こいつが約束を
>>はい。 可能です。
まず、この男の血液中にナノプローブを注入しておきます。
そして、何らかの動作をした際に呼び出されるイベントを使用します。
"歩きたばこ" 行動をフックさせて、その行動が公共の場で
<<ナノプローブ!? ナノプローブって、ナノレベルの小型マシンのことか?
>>はい、マスターの
<<そうか……分かった。 ありがとう。
まさか…この世界にもスタート○ックに出てくる"機械生命体の集合体、ボ○グ"が使うような【ナノプローブ】があるとはな……驚いた。
ナノプローブの設計データは、レプリケーターにセット
"ナノプローブ生成"と
俺はナノプローブを生成すると同時にそれを男の体内、血液中に転送しておく。
次に、開発画面を起動し、この男をターゲット指定して、
この間、数秒のことである。
「ほう? 約束するとな? じゃぁ、約束を
「あ、ああ、もちろんだとも! や、約束する!」
「よぉし、分かった! リブート!」
男が
「はっ! なんだ?
「てめぇが約束を違えたら、灰になって消滅するようにしただけだよ。
ちゃんと約束は守れよ? じゃねぇと……死ぬぜ」
「ああ、絶対に約束は守る。 だから
男と一緒にいた、もうひとりの男も、全身
そいつにも "歩きたばこ禁止" を同意させ、
それでは、ふたりを
「いいか? 嘘じゃねぇんだからな、
分かったな? 念を押しておくぞ! いいな!?」
「ああ、分かった! 分かった! 約束は守るって言ってるだろ! じゃあな!」
俺は男たちの後ろ姿を見送る。
ヤツらの魂の色はふたりとも"赤"だった。 自分の欲望のために人を何人か殺しているヤツらだ。
男たちは、俺からかなり離れると……
「ばーか! 誰が、てめぇとの約束なんか守るかってんだ! ははははははは!」
「お、おいっ! やめておけよぉ。 もしも本当だったらどうするよぉ」
最初、俺に
もうひとりの男は
すると『約束を破ることなんざ "へ" でもねぇ』とでも言わんばかりにバカな男はたばこを取り出し、火をつけ、俺に手を振りながら立ち去ろうとする!?
その瞬間! "ボシュッ!" という音を立て、男は灰になりながら消えた!
もうひとりの男は、
だからあれほど言ったのになぁ……バカなヤツだ。
ちなみに、
◇◇◇◇◆◇◇
俺はラフ、キャル、シャルにすぐに追いついた。
みんなで会話を楽しみながら歩いていると、前方から、何やら
「じじぃ! 邪魔なんだよ! どけよ! 道路の
トボトボ歩きやがって! クソが!」
見ると、
俺は
「やめねぇか
「小僧って、お前の方が
「お前なぁ……
人生の大先輩だぜ?
お前が、ちょっと
それに……お前もこれから "
そのことをちゃんと考えてみろや」
「
"チャッチャ"とこの男のプロパティを修正して、目の前の老齢男性のステータスとほとんど同じにしてやった!
そうしておいて、男のシステムをリブートする……
「はっ!? な、なんだ? い、
ああっ……きゅ、
め、目もかすんで見づらい……。 い、
「お前のステータスを、
年を取るってことがどういうことか
そう言うと俺たちはその場を離れる。
老齢男性の横を通り過ぎようとした時、その老齢男性は、俺の顔を見上げて、意味ありげに『はぁ~』とため息をひとつついた。 その
あのため息は、
「まて小僧! 元に戻せ! こら! まて!」
若く見える男は走って俺たちに追いつこうとするが、思うようには走れない。
ヤツには日付が変わる際に起動されるイベントに、10日でステータスが元に戻るようにイベントハンドラを記述し、割り当ててある。
だから、10日経てばもとに戻ることを男に伝えて、俺たちは
年を取るということが、一体どういうことなのかを、
若い内は、身体は思うように動くが、年を取ると色々と思うように動かなくなる。
だれもがいずれ
◇◇◇◇◆◇◆
俺たちは、ラフたちが
すると……赤ん坊の泣く声と、男が、その赤ん坊の声を上回る大きな声で
「ぎゃぁぎゃぁ! ぎゃぁぎゃぁ! と、うるせえぞ!
お前、母親なんだろう? 静かにさせろや! 酒が
「申し訳ありません。 申し訳ありません」
「口を塞いでしまえよ! うるせえなぁ!
これだから赤ん坊はきれえなんだよ! うるせえなぁ、ったくよぉ!」
「すみません、すみません。 坊や泣かないで……ママも悲しくなっちゃう……」
ラフにキャルとシャルを
「お前さん、やめな! 相手は赤ん坊だ!
お前さんも赤ん坊だったことがあるんだ。
ああやってみんなに
そう考えてみろよ、なっ!?」
「
あの泣き声を聞くとイライラする!
……ええぇいっ、うるさい!
「お前さんも
イライラしていると
グガッ! ブヘッ! ズドン!
まだ男が何か言おうとしたので、俺がデコピンを喰らわせてやったのだ!
男は強制バック
「赤ん坊より、てめぇの方がうるさいっつぅの! これで静かになるぜ!」
ラフ、キャル、シャルも宿屋の入り口から入ってきた。
俺たちは赤ん坊をあやしている母親のところへ行き……
「どうした? 赤ちゃんの
「いえ、私のお
どうしたらいいのか……」
「そうか、それじゃぁ……」
俺は、まず
そして、
「さぁ、これを飲ませてやりな!」
母親はびっくりしていた。
母親は初めは
俺の
俺だけだったら受け取らなかったかも知れないな……。 3人がいて良かった。
赤ん坊はミルクを、"ゴクゴク" という音でもしそうな
俺は
母親はそれを不思議そうに見ながら、赤ん坊に "げっぷ" をさせようとしている。
げっぷの出た赤ん坊は、大きなあくびをすると、スヤスヤと眠り始めた。
かわいい寝顔だ!
「ありがとうございました。 お礼を……」
「気にするな。
そのかわいい子は、
「はい。そうです。 なんか、どうするのが正しいのか分からなくて……」
「
だってさぁ~、子供なんて、み~んな違うんだぜ?
同じ子なんて、ひとりもいやしねぇよ? だろう?
他を
あんまり考えすぎねぇようにしなよ」
「やはり経験された方の意見は勉強になります。 ありがとうございます」
俺とラフはお
ラフが何か言おうとしたので、俺は手をラフの口の前に持って行き『ダメだ!』という意味を込めて、首を左右に振った。
これだけ俺は
目の前にいる母親の気持ちが、少しでも楽になればそれだけいいのだ!
「子育てで不安を感じることがあっても、ひとりで
誰かに不安なことを聞いてもらうだけでも、チィーとは気が楽になるからな」
「はい。そうします」
「あ、そうそう、また
そう言って俺は、新品の
「……ということで、ちゃんと
「さっきん?」
「ああ、そうだ。 なんていうか……目に見えない悪いモノを殺すことだ。
知らないうちに
もちろん、
「何から何までお世話になってしまい、すみません」
「いやいや、気にするな。
◇◇◇◇◆◆◇
赤ん坊の母親と別れた俺たちは、
「……それでねぇ、キャルはねぇ~、赤ちゃん…5人欲しいのぉ。
神ちゃまぁ、がんばりましょうね~。 うふふ」
が、『がんばりましょうね~』って、
言っている意味は分かってねぇよなぁ? 多分……。
ん? シャルが右手の指を4本立てて、にっこりと笑っている?
シャルは赤ちゃんを4人欲しいってことなのか??
ラフは
まぁ~、こんなことを言うのも、
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