第0010話 天網恢恢疎にして漏らさず
目の前で
先ほどまではしていなかった強烈な"下水のような臭い"が地下室には漂っている。
何かが『クチャ クチャ』『カリカリ』と音を立てて男を喰らっているのだ!
俺は"それ"がなんなのか確認しようと、神術で光の
周りが明るくなった瞬間、黒光りするモコモコしたモノは細かく分裂した……と思ったら、なんと! それらは「ねずみ」のような生き物であったのだ!?
「ねずみかっ!?」
あたりが急に明るくなったことに加えて、俺の声に驚いたのかそれらは
皆、俺を
その中の一匹を、 "見えざる神の手" で
こんな "ねずみ" なんかがいるところに、キャルとシャルが
喰われていた男を見る……ほぼ白骨となってしまっている。
俺がロープで
だが…なんとなく
アンデッドにでもなったら面倒だ!
必要な情報を入手したら、さっさと火属性神術 "烈火" を使って
ということで情報を得るべく、キャルとシャルを
この男は
初めは昆虫の
そのうちに、鳥や小動物を
この手の人間がよく
だんだんと犯行がエスカレートしていくのだ。
そして
男がキャルとシャルを買った "
キャルとシャルの両親がいる "
まぁ……"輪廻転生システム"の処理待ちキューに入れたとしても、恐らくは、
システムに
こんなヤツをまっとうに転生などさせてたまるか!
地獄の苦しみを味わってこい!
俺はほとんどが
死体の周りには念のためにシールドを展開してあるので、火災の心配はない。
死体が完全に焼き尽くされるのを確認し、念のために、"完全消火" 神術を
◇◇◇◇◇◇◇
「犬族専用愛玩奴隷ショップ『ドッグドッキー』……ここだな』
俺は店の中へと入る……。 28歳の女が店の中にいる。
魂の色は黒みがかった赤だ。
「あー店はやってないよ。 昨日で閉店したんだ。 帰ってちょうだい!」
「お前さんがこの店のオーナーか?」
「ああ "元" だけどね。 つぶれちゃったからね。 で、あんたなんかようかい?
売った商品に対するクレームなら受け付けないよ!」
「お前さん、"闇奴隷商人"とつながっているよな?」
「な、なにをバカなことを言っているんだい!
「ああ、いいぜ……呼んでみな。 俺は
なんなら俺が呼んでやろうか?」
「……」
その時である!? 店の扉が
「おーい、プラチマ! 迎えに来たぜ。西部へと向かう獣人の一団を……おっと客がいたのか?」
「あんた! 逃げて! そいつはあたいたちを捕まえる気だ!」
「「なにしやがる! 放せ!」」
「おい! 兄ちゃん。 てめぇは
「な、なにを証拠に……俺はただの商人だ! いいから放せ!」
"見えざる神の手"をちょきの形にして"かる~く"男の目をちょんと突いてやる。
"かる~く"だ。
ぎゃああああぁぁぁぁぁぁぁあ!!
あらら……男の目からは、血とともにドロッとした液体が涙のように流れる……。
「修復! ……
すでに "魂の履歴" は調査済だ。
男が闇奴隷商人の親玉であることは分かっている。 女は男の
「ち、ちがう……俺はまっとうな……ぎゃああああぁぁぁぁぁぁぁあ!!」
今度は右耳を摘まんで "かる~く" ひねってやった…… "かる~く" だ!
ん? なんか "ブチッ" という音がしてちぎれたな……?
「修復! まだ分かんねぇようだなぁ~、
「わ、わわ、分かった! な、なんでも話すからやめてくれ! た、頼む!」
「最初からそうすればいいのに……バカなヤツだぜ」
なんか第三者が聞いたらどっちが悪人だか分からないだろうなぁ……。
ふと、そう思った。
男も女も"闇奴隷商人"であることを認めた。
そして、手下はここにいる女の他に11人いる。
ノルムの町の西方、8km程のところにある森の中の洞窟をアジトとして、街道を旅する
そろそろ足がつきそうなので、この町での
早く行動してよかった……
「……な、なんで俺たちのことが分かった? てめぇは誰だ!?」
「俺かぁ? 俺はなぁ、この世界の"神"だよ! "神"!
はははははっ!」
まぁ、
◇◇◇◇◇◇◆
俺は"闇奴隷商人"の"ボス"とその女を連れてコイツらのアジト近くに転移した。
「てめぇらは大人しくここで待っていろ! いいな!?」
「「んぐんぐ!」」
何か言いたそうだが
「な、なんだてめぇは!? …… ぎゃああああぁぁぁぁぁ!!!」
俺は貴族の
面倒くさいので、相手が剣で
敵の攻撃を受けるといっても、実際には、体の表面にシールドを"
相手のどんな攻撃も『なんかされたかな?』程度の感覚しかないのだ!
シールドをこんなにも"薄く"、しかも、体の表面だけに展開する方法は全知師から教えてもらった。
これは結構便利だな。
最後のひとりを
3歳から12歳までの子供たちであった。
「みんな! 助けに来たよ! すぐにそこから出してあげるからね!……
俺は
みんなは泣きながら牢の外に出てくる。 俺に
「つらい目にあったね。 もう大丈夫だよ。 安心おし」
"闇奴隷商人"たちは全員
子供たちの親を "救う" 方が先だと判断したからだ。
俺が今ここで助けた子供たちは、
だから、たとえこの子らの親が殺されてしまっていたとしても、
しかも、ここにいる子供たちと、その親たち全員が、
つまり、この子たちの親を
こっちを優先させることは考えるまでも無い!
俺は "闇奴隷商人" のボスに犯行現場を
犯行現場はここから西へ30km程離れたところにある林の中であった。
その林は、西へと向かう
この林の中で
この子たちの親は、やはり
"闇奴隷商人" たちの頭を
コイツらには後で"た~っぷり"と
さて……どうしたものか?
子供たちをここには置いておけない……が、一緒に連れて行くと
全員が
それに、子供たちの母親の中には殺される前に "闇奴隷商人" たちに
やはり
俺は
俺と子供たち全員、計13人をターゲットに指定して……
「今からノルムの町の神殿前に、
それでは……転送!」
俺たちは、一瞬でノルムの町の神殿前広場に転移した。 子供たちはみんな驚いているようだ。
予めシオリには、
「おっ! シオリちゃん、待っててくれたのか、ありがとうな」
「いえ。それでこの子たちを
「ああ、それと身体を
「はい。承知しました」
「それから……なんか美味いもんでも食わせてやってくれ」
「分かりました。 シンさんには申し訳ありませんが、この子たちと一緒に私たちも先に昼食を
「ああ、すまんが頼む……えっ? もう2時なのかぁ?
昼食が遅れてしまってすまん。 お腹が空いただろう?」
「いえ。私たちは女子会でお
「おお、そうだったな。 女子会かぁ…
「はい。シンさんの話で……うふふ。 バッチグーです!」
「は・は・は……。 バッチグーの使い方が変じゃねぇか??」
ここで念話に切り替える。
『シオリちゃん、俺はこれから殺されたこの子たちの親を
だが、この子たちには期待を持たせるようなことを言わないでいてくれ』
『はい。 承知しました』
「みんな聞いてね! 俺はちょっと用ができてしまったんで出かけるけど、君たちのことはこの
ここでちょっとだけ待っててね。 それから……この綺麗なお姉さんが、
不安を口にする子もいたが、そんな子は
ん? シオリが
「それじゃぁ行ってくる!……転移!」
◇◇◇◇◇◆◇
今俺は
魔法を使って
大きなブルーシートを生成して地面に広げる。
すべての遺体を順に "見えざる神の手" で
シングルファーザーの家庭が1つあるということなのかな?
そして、俺は女性の犠牲者たちのステータスを調べる。
完全浄化神術の前のチェックだ。
幸いなことに
すべての遺体をターゲットに指定し、まずは完全浄化を
さあぁ! 今度は完全修復だ。 …… よし! 無事完了! うまくいった。
その次はちょっと手間だったが、ひとりひとり身につけていた
下着の方は、確認するのもアレなんで、当然男女は別だが、みんな同じものを装着させてある。
さてと……"蘇生させても良い魂" かどうかを確かめねばな。 魂の色の確認だ。
……ほっ! 全員がOKだ! 良かったぜ!!
彼等の魂の色、赤黒い色はひとりもいない。
それどころかみんな青色から青っぽい緑の範囲に収まっている。
なんか人族に
「子供たちは喜ぶだろうな! ……
みんなが意識を取り戻す前に、全員に、精神安定化のための、状態異常修復神術を
みんな、気持ちよく目覚めたようだ。 伸びをしている者もいるな。
「えーと、復活おめでとう! 幸運にも、お前さんたちは
みんなは、
「あー! お前さんたちの子供は、奴隷商人のもとから助け出してあるから安心してくれ!」
「子供たちは……子供たちはどこにいますか?」
「今、俺の仲間のところにいる。
すぐにあわせてやるから心配するな」
「どうして蘇生させて下さったんですか?」
「子供たちには、お前さんたちが必要だろうと思ってな……」
夫婦で
そんな中、素直に
俺は、その者たちだけを、みんなからは離れた場所へと呼び出す。
「お前さんたちが奴隷商人に
だが、
身体の中は浄化してあるし、クソ野郎どもによる
ほとんどの女性たちが、
中には自身の身体を確認している女性たちがいる。
「それと、
これは
しかも、お前さんたちの最盛期の状態だから多分17、8歳の頃だと思うんだが、その頃の身体に戻っているはずだ」
ざわざわざわ……ざわざわざわ……ざわざわざわ……ざわざわざわ……
ちょ、ちょっとぉ!
俺の目の前でスカートをたくし上げて、身体を調べるのはやめてくれっ!?
身体が
「でも……ヤツらに…ヤツらに乱暴された記憶が……
つらいんです。 身体が
「ああ、残念ながら……
だが、お前さんたちが望むのなら、嫌な記憶を完全に消してやることもできる」
「記憶が消せるんですか?」
ざわざわざわ……ざわざわざわ……
女性たちがざわつく。
「ああ、だがな、記憶にぽっかりと
何か
だから、できることなら自分でその苦しみを乗り越えて欲しいと思っている」
「……」
「
今回のことは
「……」
いや、
こういった場面を見るに付け、そう強く感じる……。
簡単に気持ちを切り替えられるものでもないだろう……。
夫がどう思っているか…とか、世間体がどうとかを考える必要なんて全くない!
まずは自分のことだけを一番に、大切に考えて欲しいものだ!
心からそう思う!
ちなみに……記憶を消したいと申し出る者はひとりもいなかった。
「ああーっ! 生き返ってもこれからどうしたらいいんだぁーー!!
何にもなくなっちまったぁ~。 これじゃぁ親子4人で生きては行けない……」
ひと息つくと、現実が見えてきたのか現状を
「大丈夫だ! 馬車も、農具も…
それに
「……」
「大丈夫だって! なんとかなるさ! いやなんとかしてやるから!
それよりも早く子供たちの喜ぶ顔が見たくねぇか?」
ケセラセラ(なるようになる)! だぜっ!
「
「俺か? 俺はこの世界の "神" だ! ほら!」
俺は
その
みんなの表情から不安が消え、全員が俺の
「まあまあまあ……
それよりも、子供たちのところへ行くぞ! 準備はいいか?」
みんなは
俺はブルーシートを
「それじゃぁ、俺の周りに集まってくれ!……よし!転送!」
◇◇◇◇◇◆◆
「おかあちゃーーん! おとうちゃーーん!」
いつものようにシオリには
だから、ちゃんと子供たちをテントの外で待たせてくれていたのだ。
感動の再会! 良かった、良かった。
『シンさん!! キャルとシャルが!』
『ん!? し、しまった!!』
テントの入り口
キャルとシャルが
俺は彼女たちのもとへ
シオリもその
「ごめんな、君たちのお父さんとお母さんは、もう天国に行っちゃったから……
生き返らすことができないんだ……ごめん、本当にごめん」
「ううう……お、お父ちゃんと…お母ちゃんは
もうあえないのぉ?」
(ううう……)
ああ……俺はなんてバカなんだ! こうなることは予想できたのに!!
キャルもシャルもその目には
「ああ……
「会いたいよぉ~。 会いたいよぉ~。
神ちゃま、キャルもシャルもお父ちゃんとお母ちゃんに会いたいのぉ-。
会わせてなの。 会わせてよぉ……会いたいよぉーーー! うわぁぁぁぁぁん!」
そして、シャルも声は出せないが号泣する……。 ああ…胸が
俺とシオリは、
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