第0009話 幼女たちが見た地獄

「神ちゃま、ころされちゃうの……たすけてなの……」


 助けを求める声は次第しだいいに弱くなってきている!?


 マップを展開てんかいして助けを求める声の発信源はっしんげんさがすと、それはすぐに判明はんめいした。

 この町の高級こうきゅう住宅街じゅうたくがいにある一軒いっけん豪邸ごうてい。 その地下室ちかしつから発信されている。


 そこには幼女ようじょふたりの生命体反応せいめいたいはんのうがあった。 ひとりは非常に弱っている!?

 そしてその幼女ふたりの生命体反応のすぐそばに、若い男の生命体反応が1つある!


「シオリちゃん、俺に助けを求める幼女の声がとどいた! 今から助けに行ってくる!

 また悪いけど、みんなをまもってっていてくれ! 頼む! ……転移!」


 俺はとにかく幼女ふたりのことが気になって、いていた!

 だから、シオリの返事へんじも待たずに現場への転移を優先する。



 転移した先は……結構けっこうひろい。 大きな地下室であった。 そして薄暗うすぐらい……。


 俺の目の前では、男が右手を大きく振り上げている!

 男の前に立つ幼女に今、まさに! 暴力ぼうりょくをふるわんとしているところだった!


 『後ろにいるものには手出てだしさせないぞ!』と言わんばかりに……

 まるで "通せんぼ" をするかのように両手りょうてひろげ、両足りょうあしを大きく開いて"大"の字のように立っている幼女!


 彼女のくちびる真一文字まいちもんじむすばれており、両方りょうほう眉尻まゆじりをつり上げている!


 その目にはちからがあり、目の前の男を キッ!とにらんで見据みすえているが、その目にはなみだがいっぱいで、今にもこぼれそうだ!


 顔や身体からだには無数むすうあざきずきずがある!


 両手両足にロープでしばられていたらしいあとがあり、血が出ていたり、血がにじんだりしている!


「えぇぇい! 邪魔じゃまをするな! そこをどけ! じゃないとぶんなぐるぞ!」


 男は、目の前の少女の顔をなぐろうと、身体を右後方へ回転させながら、おもむろにゆっくりと右腕をうしろへと引き、こぶしにぎはじめる……!


 今まさに、幼女の顔をめがけて、ストレートパンチがり出されようとした瞬間、俺は咄嗟とっさに右手で、男の振り上げられている右腕の手首をつかむ!


 "ギョッ!?"としている男を幼女から遠ざけようと、つかんでいる男の右腕をうしろへ引く。 男をたおしてゆかころがそうと思っただけなのだが……。


 ダン…ダン…ダン……ブベッ!! ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!


 男は強制的にバックてんをさせられながら……

 地下室のゆかで何度かバウンドしてかべにぶち当たって止まる!


 その直後男はおそらく右肩みぎかた付近ふきんすさまじい激痛げきつう見舞みまわれたのであろう、絶叫ぜっきょうし、すぐに気絶してしまった。


 俺の右手には、男の右腕がにぎられている?

 そのちぎれた腕からは血がダラダラと流れている!?


 ??……げっ!? 腕を引きちぎっちまった!

 えず、腕はそのままにして……傷口きずぐちだけをふさいでおいてやるかぁ……。


「傷口だけを修復!」


 と、念じながらとなえて、軽めの修復神術を意識すると、男の右肩みぎかたの、本来ほんらいは右腕があった場所の、大きな傷口だけがふさがれて、脈打みゃくうちながら吹き出ていた血も止まる。


 ちぎれた腕を持っているのも気持ちが悪い……

 それで、ちぎれた腕を男の方へと放り投げて返しておく。


 腕は血をまきらしながら飛んで行き……

 気絶きぜつしている男の顔面に直撃ちょくげきしたあとゆかに落ちた。


 おっと! 幼女にこんな光景を見せてしまったのはマズかったな……。

 ん? ふぅ~良かった! 幸いにも俺が邪魔でよく見えてはいないようだ!?


 俺はひざり、女の子の目線めせんわせる。


 俺は、とにかく丁寧ていねいやさしい言葉遣ことばづかいをするように自分に言い聞かせて……。


「君の助けを呼ぶ声が聞こえたから助けに来たよ。 もう大丈夫だよ」


「神ちゃま?」

「ああ、そうだよ。今傷を治してあげるね」


「キャルは後でいいの。 妹を助けてなの……シャルが死んじゃいそうなの……」


 女の子が後ろを振り返る。


 と、そこには、もうひとり彼女と同じくらいの歳の女の子が床に倒れており、なぐるのひど暴力ぼうりょくを受けたようで、ひど怪我けがをしている……。


 顔は紫色むらさきいろがり、頭からも…耳からも…鼻からも…口からも、血を流している!? 意識が無い!?


 幼気いたいけひどいことをしやがる! 俺はかわいそうで泣けてきた。


「今すぐ治してあげるからね……完全修復!」


 目の前の女の子、キャルと、その妹だという、床に倒れている子、シャルの双方に【完全修復】をほどこした!


 淡い緑色をした光のベールがふたりを包み込み、すぐに消える……。


「わぁ~、きれいなひかりなのぉ! ああぁ…消えちゃったぁ…」


 キャルは、自分たちをおおった光が綺麗きれいだと言った。

 ふたりの傷はえ、床に倒れていたシャルが目を開け、身体を起こす……。


「ああ、シャル! よかったぁ…たすかってよかったの……ううう」

「……」


 ふたりは涙をポロポロとこぼれさせながらった。


 ん!? シャルは一所懸命しゃべろうとしているが……声が出ない!?


 右手でキャルの頭を、左手でシャルの頭を俺がでると……


「うわぁーーん! 神ちゃまぁ~! こわかったのぉー!

 いたかったのぉ~! たすけてくれてありがとうなのぉー!!」


「……」


 シャルの方は口を動かしているが、相変あいかわらず声が出ない……。

 ふたりは号泣ごうきゅうしながら、勢いよく俺に "ひっしと" きついてきた!?


 彼女たちの勢いに尻餅しりもちをつきながらも……

 彼女たちを俺の両腕で、しっかりと抱きとめると、彼女たちを抱いたままあぐらをかき、左右の "もも" にひとりずつすわらせて、ふたりの頭をでる……。


「怖かったね。 痛かったよね。 えらいね。 ふたりともよくがんばったね……

 もう大丈夫だからね」


 彼女たちの頭を撫でながら【魂の履歴】とステータスを確認してみることにした。

 すぐに親御おやごさんのもとに彼女たちを帰してあげようと思っている。


 それで……どのような経緯いきさつで、彼女たちがこんなところで、こんな目にうことになってしまったのかを調べたかったからだ。


 彼女たちをなぶりものにしていた若い男は気を失ったままだ。

 ……事情聴取は後だな。 しばらくは放置ほうちだ。



 ステータスによると、ふたりとも5歳の犬族の女の子でふたごの姉妹であった。

 獣人族国家、ニラモリアの出身で、農業をしている実の両親がいた。 彼女たちは4人家族であった。



 "たましい履歴りれき"によれば……


 今から5ヶ月ほど前のことである。 彼女たち一家はノルムの近くの街道を西へと向かって馬車ばしゃを走らせていた。


 みんなは希望に胸をふくらませ、この国の西部にある"開拓地"を目指しているところだった。 西部に自分たちの新しい住処すみかと新しい農地を得るために……。


 一家はずっと楽しい旅をしてきたのだが……そこへせまる!


 ノルムから40km程離れた西へと向かう街道脇かいどうわきで、彼女たち一家が楽しく昼食を取っている時だった。


 ……理不尽りふじん暴力ぼうりょくに彼女たちは蹂躙じゅうりんされた。


 闇奴隷商人やみどれいしょうにんの "奴隷狩どれいがり" にったのだ。


 子供たちを守ろうとした両親は、闇奴隷商人どもに無惨むざんにも殺された。


 つかまったキャルとシャルは、闇奴隷商人によってこの町、ノルムの"犬族を専用にあつか愛玩あいがん奴隷どれいショップ"に売り飛ばされたのであった。


 愛玩奴隷としての人気が高いのは3歳くらいまでらしい……。

 当時5歳に近い年齢だった彼女たちはずっと売れ残り続ける。


 5歳になるまでは店頭で高額な価格で販売されていたのだが……

 5歳になった途端とたんに、商品として見切みきりをつけられてしまい、タダ同然とも言えるような値段で売られるようになった。


 それでもが見つからない場合は、ひそかに殺処分さつしょぶんされてしまうことが決まっていた。


 魂の履歴に記録されている映像データを見ていて胸が悪くなった。

 全身の毛逆立さかだつほどに身体からあふれ出しそうになっているいかりをグッとえる!



 ふと日本のホームセンター等で売られているペットたちの姿が頭をぎる……。

 日本人だった時の記憶である。


 俺はたまに日用品にちようひんを買いに行くホームセンターで、長く売れ残っていた犬が、突然姿を消したのを覚えている。 買い手がついたようには思えなかった。


 俺が彼の前を、その犬の前を通ると、いつもトコトコと近寄ちかよってきて、ちょこんとすわり、うるうるした目でこちらに視線を送ってきた。


 えるものなら買ってやりたかった……。


 彼は、その犬は、人にはあまり好かれないかも知れない個性的な顔立ちだったが、愛嬌あいきょうがあった。


 その犬がいなくなった日は、気がふさいだ……。


 当時の日本では流通過程りゅうつうかてい行方不明ゆくえふめいとなる、行方不明ということにされるペットの数はかなり多かった。 行方不明となったペットがどうなったかは想像そうぞうかたくない。


 家畜かちくとペットとの区別くべつ云々うんぬんの議論はおいておいて……俺はペットたちを、命を物のようにあつかうことにはいかりをきんない!



 キャルとシャルはいつ殺処分さつしょぶんされてもおかしくないという……そんなタイミングで現在、壁際かべぎわで気を失っている男に買い取られたということである。


 彼女たちの命を救った "ヒーロー" であるかに思えたあの男は、とんでもないクソ野郎であった!


 ストレス発散はっさんしょうして、彼女たちになぐるの暴行ぼうこうかえしたのだ!


 彼女たちが買われて今日で3日目。

 この3日間、男は時間がゆるせば、執拗しつように彼女たちに暴行をくわえ続けた!


 シャルが男に腹部ふくぶなぐられたさい嘔吐おうとして、男のくつよごしたことからさらに暴力はエスカレートする……。


 意識を失ったシャルに対しても、容赦ようしゃなく男は執拗しつようなぐるをかえす!


 キャルは両手両足りょうてりょうあしをロープでしばられ、さるぐつわをめられてゆかに転がされていたらしい!


 キャルが、両手両足を拘束こうそくされていたロープをなんとか解き、シャルを守るために男との間に立ちはだかったところに、俺が転移してきたということであった。


 俺はげてくるいかりを必死ひっしさえんだ!


 今すぐ壁のところに転がっているクソ野郎を、ボッコボコのギッタンギタンにしてやりたい衝動しょうどうを必死に押さえ込んでいる!!


 幼い子供たちに、むごたらしい場面を見せるわけにはいかない!

 だから、必死に! 必死に我慢がまんしているのだっ!



 まさに、彼女たちは危機一髪ききいっぱつであったのだ。 なんとか間に合って良かった!


 だが! 小っちゃな彼女たちが体験した地獄じごくのようなここ数ヶ月を思うと……

 なみだきんなかった……。


 時間がちすぎて、彼女たちの両親を蘇生そせいさせることはできない。


 俺は神であるのに、現状では如何いかんともしがたいのだ! くやしくてしょうがない!

 今回は無理だが……システムを変更することも検討けんとうせねばなるまい……。



 そういえば……シャルはなぜしゃべれないのだろう……?


 うすうすと感づいてはいたのだが……

 シャルがしゃべれないのは、外傷等によるものではなかった。


 目の前で両親を殺された精神的ショックが主な原因である。 神術で簡単には治せないのが歯がゆい!



「さぁそれじゃぁ~、さっさとこんなところからはおさらばしようか?」


「あのあの、どこへいくのぉ? もうここにいなくてもいいのぉ?」

「ああ、もちろんだとも! もし良かったら……なんだけど、これからは俺と一緒いっしょらさないか? どう?」


「うん! キャル、神ちゃまとくらすのーっ!」

(こくこくこく……)


 シャルは何度も何度もうなずいている。

 キャルもシャルも、とてもかわいらしい笑顔だ。


「これからね。俺の仲間のところに行こうと思っている。 人族の女の人がたくさんいるけど、びっくりしないでね?」


「仲間ぁ? 人族なの?」

(ん?)


 シャルは小首こくびかしげた。かわいいな。


「ああ全部じゃないけどね。獣人族の女の人もいるよ~。 たぬき族だったかなぁ?

 それとエルフとかぁ、ドワーフとかぁ……みーんな優しいからね、心配しなくても大丈夫だよぉ」


「うん、分かったぁー! キャル行くぅー!」

(こくり!)


 ねんのために、気絶きぜつしている男を"見えざる神の手"を使ってロープでグルグル巻きにしておくことにする。


 あとでちゃんと、この子たちをいじめたお仕置しおきをしないとな!

 たっぷりと……なっ!!


「じゃぁ、俺にしっかりとつかまっていてね?」

「はいなの!」

(こく!)


「転移!」



「きゃぁ~~! かわいいー! かわいいー! ……」


 神殿前広場に転移すると、金髪きんぱつゆるふわボブの神子みこ、カーラが、いち早く俺たちに気付いた。 キャルとシャルを見て『かわいいー!』を連発れんぱつしている。


 あまりのいきおいにこわくなったのか、キャルもシャルも俺にギュッ! としがみつく。


「カーラ! ちょっと待て!

 この子たちはついさっきまでひど虐待ぎゃくたいを受けていたんだ。

 だから、大きな声を出すのはNGだ! おびえちまうからな!」


「す、す、すす、すみませーーん」


 先ほどとは打って変わって小声であやまるカーラ。

 みんなも続々と集まってくる!?


「みんなに紹介するな。 この子がキャル、そして、この子がシャル。

 ふたりはふたごで5歳だ。 ふたりは言語げんごぜっするひどってきているから、どうか優しくしてやってくれ」


「みなさん、キャルです! よろしくなのぉ!」

(ぺこり!)


 シオリを始め、仲間全員が、にこやかにお辞儀じぎした。


「うん! ふたりともえらいぞ! ちゃんと挨拶あいさつできたね」

「はいなの!」

(こくり!)


 神殿騎士見習いの獣人族、ラフが近づいてきた。


「あんたたちも犬族なんだね? うちもなんだよねー。 よろしくね」

「はーいなの!」

(ぺこり!)


 えっ!? ラフは "たぬき族" じゃないのか!? "犬族" だったのかぁ!?

 そういえば彼女のステータスをしっかり確認したことがなかったな……。



 キャルとシャルの服はボロボロだ。靴も履いていない。

 だから、俺は今ふたりをだっこしたままでいた。


 そのことにようやく気付いた俺は、彼女たちの服を作成することにした。


 さてと……どうするかなぁ?


 下着と、そうだなぁ……ストレッチデニム素材のショートパンツ、太めの革ベルトつきにしようか?


 いや! ベルトじゃなくて、ゴムひもが入ったやつの方が便利だろうな……。


 上はグレーのTシャツの上に、ポケットがたくさんついているデニムのベスト。

 ノースリーブでたけながめにしておこう!


 くつは、毎度まいど馴染なじみの白のスニーカーでいいな!


 よし! イメージはできたぞ!


「キャル、シャル、今から身体を綺麗きれいにして、新しい服を着せてあげるからびっくりしないでね?」

「ふくぅ? 新しいふくぅ?」

(わくわく! わくわく!)


 シャルがワクワクしているな。 かわいいなぁ。


「ああ、そうだよ。 あまり格好良くないかも知れないけどね」

「うれしいの! はやく! はやく!」

(わくわく! わくわく!)


 俺はテントを新しく生成して設置し、ふたりをだっこしたままその中に入る。

 ふたりをテントの床にゆっくりと下して、彼女たちを残してテントの外へ出ようとすると……。


「おいてかないでなのぉ~。 こわいよぉ~」

(うるうる……)


「大丈夫だよ。 テントの外にいるからね。

 君たちが着替きがええるところを見ちゃいけないから、外に出るだけだからね」

「ほんとなの?」

(うみゅ?)


 おお! シャルが左手の人差ひとさゆびをちょんとほおにあてて小首こくびかしげる……。

 ん~~! 仕草しぐさがかわいすぎるぅ!!


「ああ、本当だとも! 外にちゃんといるからね」

「は…い、なのぉ……」


 俺はテントの外に出ると、"ちゃんとここにいるよぉ~"とアピールするために声を出しながら神術を使うことにした。


「それじゃぁ、始めるよ! ……身体を浄化! 下着、衣服、靴を装着! ……」


 まぁ、本当は声に出さなくてもできるんだけどね……。


「うわぁ~! すごぉ~い! かっこいいの~! すてきなの~!」


 ファッションセンスがない俺は、められるとみょうかない……。

 まぁ、気に入ってくれたのなら幸いだな!


 テントの入り口の前にひざまずいて、彼女たちに話しかけようと、入り口から顔だけをんだ。


「どうだい? 気に入った?」

「うん! うれしいの!」

(うん! うん!)


 喜んでもらえているようだ。

 おお~、シャルも大きくうなずいている! よかったぁ!



 ◇◇◇◇◇◇◇



「ところで、シオリちゃん、何か変わったことはなかったか?」


「はい。特に…大したことはなにもありませんでした。

 ただ……ガラの悪い男どもが『しゃくをしろ』とか『俺たちに付き合え』とか言ってからんできましたが、あの通りです」


 シオリの視線をたどると、そこには、むさい男どもが山積やまづみになっている!?

 みんな意識を失っており、くちからはあわいている!?


「シオリちゃんがやったのか?」


「いえ、神子たちに相手をさせました。

 神子たちに自分のSTRが、今どれくらいなのかを知ってもらうつもりでしたが、相手が弱すぎて話になりませんでした。

 彼女たちが、ちょんとれるだけであの有様ありさまなんですから・・」


「な、なるほど。 今の彼女たちにかなう相手はそうはいないだろうからなぁ~」


「はい。 シンさんが子供たちを救出して帰ってくるまでにそれほど時間がかかっていませんので、あとは特に何事も起きませんでした。

 みんなでお茶をしながらシンさんの帰りを待とうということになり、今から準備を始めるところでした」


 シオリはキャル、シャルに微笑ほほえみながら……


「キャルちゃん、シャルちゃん、ふたりも女子会じょしかい参加さんかする?

 お菓子かしがいっぱい食べられるよ?」


「するぅー!! おかし大好きなのー!!」

(こくこくこく……)


「じゃぁねえ……おねぇちゃんを手伝ってくれるかなぁ?」

「いいともなのー!」

(こくこく!)


『シンさん、この子たちの敵討かたきうちに行かれるんですよね?

 私たちがこの子たちの相手をしていますから……

 どうぞおも存分ぞんぶん! ボッコボコ! にしてきて下さい!』


『ははは。 さすがシオリちゃん、よく分かってるな!

 それじゃぁ! 行ってくる! 後を頼むな! いつもわりぃな!』


『いえいえ、悪いだなんておっしゃらないで下さい』


『転……おっと、その前に……』


 俺は、亜空間倉庫あくうかんそうこの中から昨夜宿泊に使ったテントを取り出して、神殿前の広場に設置し……ついでに、人数も増えたので中をリフォームした。


 子供たちの数も入れて、人数分+αで計30室分しつぶんの"バストイレ冷蔵庫つき寝室"を用意して、風呂に脱衣所、食堂も拡張しておく。


 食堂には、子供用の椅子いす2脚にきゃくももちろん用意した。


「わぁおなの! 神ちゃますごいの!」

(あんぐり!)


 シャルの驚いた顔が、またまたかわいい!!


「今からこの綺麗きれいなお姉さんが、この中でお茶やお菓子を用意してくれるからね。

 ふたりも手伝ってあげてね?」


「はいなのー!」

(こくり!)


「ちょっと俺は用事があるから出かけてくるけど、ふたりはみんなと一緒にお菓子を食べながら待っててくれるかな?」

「はーーいっ! お待ちしてますなのぉー!」


 キャルもシャルも、まるで横断歩道おうだんほどうわたろうとしてげている子供みたいだ。


 彼女たちはふたりとも、び上がるように右手をげてにっこりと笑っているからそう感じたのだ。



「じゃぁ待っててね。 ちょっと行ってくるね」

「はいなのぉー! 神ちゃまのお菓子はちゃんと取っておくのぉ!」

(うんうん!)


「ははは。ありがとうね。 頼むよ」



『シオリちゃん、ここの食堂を使ってくれ。 さすがに、飲み物やお菓子類は作っている時間がねぇから、あとは頼む!』


『承知しました。お気を付けて……』


「それじゃあ、お留守番は頼んだよ!」

「はーーいなの! いってらっしゃ~いなのぉ!」


「シオリちゃん、それじゃぁ行ってくる! ……転移!」



 キャルとシャルを虐待ぎゃくたいしていたヤツをらしめるために地下室へと転移で戻った俺は、そこで驚愕きょうがく光景こうけいにした!


「うわっ!? な、なんじゃ、こりゃあーっ!!」


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