第0005話 彼女は強かった!?
完全に俺のミスだ! タチアナを
でも……
なぜなら、この世界に来てから出会った人たちみんなには、マップ画面上で位置を確認できるようにマークがつけてあり……
このマークがつけられた対象は自動的にこの惑星の管理システムと情報を共有し、この惑星の
特別なことをする必要など全くなく、ただ
「いたぞっ! ここから4キロほど離れた
シオリ! シールドを展開してここでみんなを守っていてくれ! ……転移!」
タチアナの位置が確認できた時点で彼女をこちらに転送することもできたが……
それは
敵の正体を知るため……というのは
いい
俺が転移した場所は、町の
俺は今、その廃墟の中、
すぐに黒いローブを着た者たちが
ヤツらは全部で……12人か? 全員が魔導士のようだ。
俺の前方にはタチアナの腕を
俺はすぐにこの
シールドをすり
だから断言しよう! 人間ごときの能力では、このシールドをすり抜けることなどできるわけがないのだっ!
『おーいタチアナ! 聞こえるかぁ? 俺だ! シンだ!』
『あ、は~い。 上様ぁ、聞こえますよぉ~』
どうやら
『こいつらの目的が知りてぇから、ちょっと
『
さてと、これでよし。 では、
「クソ野郎! てめぇ! 今すぐ俺の
「クククククッ!
まんまと
「てめぇはナニモンだ!?」
「死に
私たちは女神シオン様の
お前たち、
「シオンなんて神は知らねぇが、神に
しかも、か弱い女性を……ぷぷぷっ! 笑っちゃうよなぁ!」
「お黙りなさい! このクズがっ!
我々がしていることこそが正しき
これだから
『何かマズいことをすれば
こうして平気なんだから、
って、
なんでも
何をやろうが
こんな論理を展開するヤツがいる以上……
シオン教は、少なくともこの惑星では許すわけにはいかないな!
シオリがいいって言ったら、
ん? まてよ?
よく考えてみると、これはシオン教徒に限った問題じゃないよな?
この俺はこの世界の
その点をどこかの不心得者に利用されているかも知れないな?
同じ
こりゃぁ、神殿関係者にもクギを
おっと、いかんいかん! 今は目の前の敵に集中だ!
「で? てめぇたちは、これからどうするつもりなんだ?」
「はははははっ! 特別にお教えてあげましょうかねぇ」
どうもコイツの口調にはイライラさせられるよなぁ……
だが、がまんがまん!
「クックックッ! まずは
クソ野郎はタチアナを自分の方へ引き寄せて、
「このメス
どうだい、メス豚? 私たちの性奴隷になれるんだよ? ありがたいだろう?」
く~っ! 今すぐこのクソ野郎をぶっ殺してやりたいぜっ!
が、がまん、がまん!
タチアナに嫌らしい視線を送っていたクソ野郎が、再び俺の方を見る。
「私たちが飽きたら、このメス豚たちには最もふさわしい場所……
そう!
クソ野郎が! 平和の
「バカか? てめぇは。 それがなんで人々の魂の解放になるんだ?」
「口の減らないガキですねぇ……
お前さんたちが信じる神の
神殿にとっては最大級の
「だ・か・ら! なんでそれが魂の解放になるんだっつうのっ!」
「分からないのですか? おバカな小僧ですねぇ……あははははっ!」
う~、イライラするっ!
「……お前たちに
それが魂の解放につながるんじゃないですかぁ! それが分かりませんか?
頭の悪いクソガキですねぇ……って、お前の
ああ……時間の無駄だったな。
コイツらの論理展開にはついて行けないな。 バカバカしい……。
「やめて下さ~い! シンさんを殺さないでぇ~!
なんでも言うことを聞きますからぁ~! どうかやめてぇ~!」
タチアナは一所懸命に演技しているな?
『タチアナちゃん……ノリノリだなぁ?』
『でへへへぇ~』
念話で呼びかけたが……どうやらタチアナはこのシチュエーションを楽しんでいるようだ。
「はははははっ! うるさいですよ、メス豚!
お前は
楽しみにしながらそこで静かにお待ちなさい!
あの小僧がこれから灰にされるのを、絶望しながら
ははははは! ……皆の者やれ!!」
直後! 黒いローブを身に
「きゃーーっ! シンさん!」
「ははははは! 小僧よ、灰になっておしまいなさい!」
『おーい。 タチアナ、俺は大丈夫だよぉ~。
俺はお前さんの後ろにある
『あ~よかったわぁ~。 心配しましたよぉ~。 もぉ~』
『ごめんごめん』
『それでぇ~、これから私はどうしたらいいのでしょうかぁ~?』
『
ヤツらには、お前さんの攻撃神術の練習台になってもらおうかなぁ……
『承知しましたぁ~。 でもぉ、大丈夫でしょうかぁ~?
『ああ、大丈夫だと思うぜ。 それよりも思いっきりひっぱたいたらダメだぞ。
多分ヤツの頭が
『あはははは~。またまたぁ~、ご冗談を~』
『いや、俺は
『……?』
俺がもといた場所、敵の魔導士どもがファイヤーボールを撃ち込んだ場所には、
"いかにもそれらしく"灰の山を生成しておいてある。
「あははははははっ! 思い知ったか小僧!」
「きゃ~っ! シンさ~ん! シンさーーん!!」
タチアナはよよと泣く。
『タチアナ、いい演技だ!』
『てへへぇ~!』
「なんだか
白状しましょう! 私はねぇ、女性が嫌がる表情を見るのが大好きなのです!
メス豚。 お前にも期待していますからね! あはははははっ!」
『タチアナ今だ! やっちまえっ!』
パァーーーーン!!
黒ずくめの男がタチアナの左腕を
タチアナは右手で軽く、本当に軽くではあるが、黒ずくめの男の
グキッ! ブヘッ! ズッバーーン!
俺は最初、男の頭がちぎれてしまったんじゃないかと思った!
男は回転しながら、
タチアナは
一方、黒ずくめの男の手下たちは、
『おーい! タチアナ! 気持ちは分かるが急いで俺のところに来てくれ!』
『は、はは…はい! ただちに!
タチアナは小走りで後ろの廃屋へと逃げ込み……
手下の魔導士たちは、黒ずくめの男の方を見ながらまだ
「タチアナ、
ごめんな、俺が
「こ、こわかったですぅ~。
でもぉ、シンさんがぁ必ず助けて下さるとぉ、信じておりましたぁ~」
俺はタチアナを
彼女の
なんて
おっと! いかんいかん! 敵はまだいるんだ、気を
「さ、それじゃぁ残りのヤツらを片付けるとするか! そうだなぁ……
ヤツらはファイヤーボールを撃ってきやがったから、こっちもそれをお
「はぁ~い!」
「ヤツら、女性ひとりだときっと
俺はこのままここで隠れて見てることにするわな。
いざという時には俺がちゃんと守ってやるから、まぁまずはひとりでやってみな」
「は、はは、はいっ! やってみますぅ~。 緊張しますぅ~」
タチアナはゆっくりと廃屋の外に出た。
黒ずくめの男は
魔導士たちはタチアナが廃屋から出てきたことに気が付いたようである。
ヤツらの中で他の魔導士たちよりも少し
タチアナに対してやっかいな魔法でもかけられるとマズいな……
他の魔導士たちに気付かれないように
ブチッ! とな。
まぁ、タチアナも魔法攻撃に対する
タチアナは
両手を前方の魔導士たちの方へかざして
「みなさん消し飛びなさ~い! ふぁいやぁ~ぼぉ~るぅ!」
……? なに!? な、なにも起きないぞ!?
タチアナは
「なんだよ、
はったりかましてどうするつもりだったんだ? バァカ! ははははは」
「ゲヘヘヘヘヘヘヘヘッ! さぁ、たっぷりとかわいがってやるぜ!!
さあ! こっちへきな!」
男たちはタチアナの言葉に一瞬たじろいだんだが……
何事も起こらなかったので
ヤツらは彼女を
彼女のSTRの強さが分かったので警戒しているようだ。
『お~い、タチアナちゃ~ん、どうしたんだぁ~?』
『しししし、シンさん! どうしましょう! 火が出ませぇ~ん!!』
『大丈夫だよ、落ち着きな。 ちゃんとターゲット指定してから撃ったかぁ?
ヤツらのターゲットカーソルはチカチカ点滅しているかな?』
『あ゛! すすす、すみませ~ん。
わ、忘れていましたぁ~! 今すぐやり直しますぅ~』
『ははは。そうか。
じゃ、もう一回やってみな。
念話でタチアナに攻撃神術発動手順を確認してみたら、やはり手順が間違っていたようだ。
彼女は再び両手を、
「あはははははっ! お~いメス豚ちゃんよぉ~、おめぇはバカなのか?
おいおい……はったりはもう通じねぇってことも分からねぇおバカさんなのか?
それとも恐怖で頭でもおかしくなったの……」
「ふぁいやぁ~ぼぉ~るっ!!」
ズババババババババーーーン!!
魔導士の男が
………………
一方、黒ずくめの男は隣の廃屋の側で
魔導士たちの姿は
一瞬、転移で逃げられたのかと思ってしまうくらい……何もない。
ふ~んそっかぁ~、ファイヤーボールでやられると灰も残らないのかぁ……。
いやぁ勉強になったなぁ~。
俺が魔導士どもにやられたふりをするために作り出した灰が
演出だとバレなくてよかったなぁ。 は・は・は……
「タチアナ、見事だ! しかしすごい威力だな! 最大火力でぶっ放したのか?」
「……い、いえ、最小火力で撃ったつもりだったんですぅ~」
彼女は強かった!
いや! 俺が強くしちまった…のか? ふぅ。
「ん……まぁ良くやった。 お前さんに練習させることができてよかったぜ!
ふぅ~。しかしさすがに最初の
タチアナはどぎまぎしているかのようだ? なんとなく笑顔が引きつっている?
「みんなもさっきのお前さんみたいに『イザ! 撃とう!』としたときに失敗するといけねぇから、みんなにもちゃんと練習させねぇといけねぇよな? どう思う?」
「は、はいぃ~。 私も同感ですぅ~。 練習は
「ところで、どうでもいいことなんだが……
お前さんの知り合いに、ジェームス・ボンドってヤツはいるか?」
「ジェームス・ボンドさんですかぁ? 全く
その方が何か私と関係があるのですかぁ~?」
「いや何でもない……忘れてくれ」
「はぁ~い!」
タチアナの名前を聞いた時からずっとモヤモヤしていたんだが、さっきふとそれがなんなのかに思い当たった。
日本人だったときに見た映画で、ある国の007と呼ばれる"男性スパイ"の活躍を描いたシリーズモノの第2作目……
今、目の前にいる
この映画でタチアナ・ロマノヴァは、頭が良くてとてもチャーミングな女性として演じられていて……当時の俺はこの映画を見て彼女に
それでなんとなく役名を覚えていたんだと思う……あースッキリしたぁ!
「ん…んんんん……」
黒ずくめの男が意識を取り戻したようだ。
俺はすかさず"見えざる神の手"で、ヤツをロープでグルグル巻きにしてやり……
開発画面を表示させてヤツのプロパティを修正し、ごく
もちろん魔法・魔術は一切使えない設定にして、魔力もゼロだ!
そして、イベントハンドラを記述して……
どんなに努力しても能力が上がらないようにもしておいた。
服に何か隠し持っているとマズいので、衣服と下着はすべてひん
「なっ、なっ、なぜです!? 小僧、なんで貴様は生きているんですか!?」
「はぁあん? てめぇらごときにこの俺がやられるわけがねぇだろうが?
へそが
「んぬぬぬぬっ! おのれぇ~! みんな! 何している!
この小僧をすぐに殺しなさい! …………!?」
「おやおや……寝ぼけてんじゃねぇよ、てめぇの仲間なんざとぉ~っくにあの世に送ってやったぜ!
まぁ~、いるのかいねぇのかわからんけど、たとえ本当に女神様?とやらがいたとしても、そいつの元には絶対に行けねぇんだけどな! ははは!」
俺は魔導士たちが消し飛んだ場所から伸びている12本の糸をたぐって……
この "奈落システム" は魂を苦痛と恐怖で徹底的にすり減らし、魂の生成元となる純粋なエネルギーに変換するシステムである。
魂にとっては永遠とも感じる長い時間をかけて、ゆっくりゆっくり繰り返し苦痛と恐怖を与えられながら
「くそぉ~覚えてなさい! 転移!
……あれ? 転移! ……なぜです!? なぜ転移できないのですか!?」
「ああ、転移どころか他の魔法も
「お前は一体何なんですか!?」
「俺か?……神だよ。 てめぇが
「ば、バカなことを! 神はシオン様だけだ! お前は悪魔だろ!」
「ところでさぁ、俺の大切な
「あーそうですとも! ぐふふっ! うふっ!
女騎士がゴブリンに
もう興奮しましたよ!」
何を思いだしたのか、クソ野郎の表情が曇る?
「チッ! あ゛~っ、くっそうっ!
神殿のメス豚どもがゴブリンどもに
お前はホント! 余計なことをしてくれましたね! 台無しですよ!」
スケさんとカクさんが
「うるせぇっ! てめぇの
スケさんは心に大きな傷を
てめぇにはきっちり
『もう殺して下さい』と
「ははは! やれるものならやってごらんなさい!
私には女神、シオン様がついています! お前の思い通りにはなりません!」
気になったので管理システムにアクセスして、女神シオンの存在をサーチしてみたのだが……ヒットしなかった。 まあ、当然だ。
「それで
「くーーっ!
メス豚どもを1万5千匹の魔物で
一瞬で
「で、どうやったんだ? どうやって魔物
「……」
この男、ナルゲン・ニムラは、口をつぐんでしまったので、試しに"
「ゆ、
「誘魔香? それはどこで手に入るんだ?」
「め…女神様から
お前なんかじゃ逆立ちしても手に入れられませんよ」
となると……女神シオンは実在するってのか?
もしも俺が分からないだけで本当に女神シオンが存在するってことになると……
アマゾネス・オークにも
こいつはこちらで始末しておくしかないかな?
『もしもしシオリちゃん、聞こえるか?』
『はい、うえさ……シンさん。ご無事でしょうか?』
『ああ。無事タチアナは救出した。
それでこれからクソ野郎を処刑しようと思うんだが……
『はい。承知しました』
『俺も処刑が済んだらすぐにそっちへ向かうから、悪ぃけどちょっと待っててくれねぇかな?』
『はい。分かりました』
『あ、シオリちゃん、それでそっちは異常ねぇか?』
『はい。みんな無事です。誰かに襲撃されるようなこともありませんでした』
『ふぅ。そうか、良かった。 じゃすぐにタチアナをそっちへ送るんで頼むな』
『はい』
「タチアナ、俺はこれからこいつを処刑する。
それで、
「はぁ~い、分かりましたぁ~」
「それじゃ、みんなと
タチアナを転送させた後、俺は大きな
「おいナルゲンとやら! これからてめぇを処刑する! 覚悟はいいか?」
「ああ……女神様!! お助け下さいませ! 私はここにおります!!
邪教徒に殺されようとしています! どうかお助けを!!」
ナルゲンは必死に祈る……だが何も起こらない。
俺は粉砕機を起動して、"見えざる神の手"でナルゲンを
粉砕機の
「し、シオン様!! シオン様!! お助け下さい!! シオンさま~~っ!!」
必死に救いを求めるナルゲンに手を差し伸べる者は誰もいない……。
俺は"見えざる神の手"の力を
ナルゲンは粉砕機の投入口に足から落下していく……。
グワシャヴワシャガガガガギュゥングヴァシャ………
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」
うへぇ~! 胃の中のものが
残酷なシーンだ。 ナルゲンは足からミンチにされていく……。
タチアナに見せなくて良かった……
ほどなくしてナルゲンは
ヤツの魂も魔導士たちと同じように"
これでもう神である俺ですらナルゲンの魂には手出しできない。
たとえ
粉砕機は浄化神術で
念のためにナルゲンだった
レプリケーターを使えばもっと簡単にナルゲンだった挽肉を消し去ることが可能であったが、次に肉料理とかを生成した際に、ナルゲンだったものがそのまま使われるような気がして……
いや必要であれば分子・原子レベルで材料として実際に使われるんだろうが……
なんとなく嫌だったのだ。
もちろん日本人だった頃に殺人を
記憶がある限りにおいて俺の初めての殺人だった。
クソ野郎を
後ろめたささえ感じている。
人を殺すというのはこういうことなのか……
そんなことを考えながら、
◇◇◇◇◇◇◇
シンが去った後すぐ、廃墟にひとりの女性が出現した。
どこからか転移してきたようだ。
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