第0002話 嫁候補?と神殿騎士
[[[[[[[神様!! 助けて!!]]]]]]]
「シオリちゃん! 俺に助けを求める声が聞こえるんだが!?」
すかさずマップ画面を表示させて"声"の発信源を特定する。
発信源には数名の人族の生命体反応があり、その周りを取り囲むように約50体の魔物、ゴブリンの魔物反応があるのが確認できた。
これはちょっとヤバい状況だよな!?
俺はサッと左手でシオリちゃんの右手を
「シオリちゃん、救助に向かうぞ! …… 転移!!」
【全知師】がサポートしてくれたので、どうすれば現場に急行できるのかが自然と分かった。 そう! まるで、ずっと前から知っていたかのように……。
そして、シオリちゃんと現場に転移してきたのだが……。
「どうすりゃいいんだ! この状況を!!」
俺のすぐ後ろには、切り立った
そして……俺たちの
ゴブリンどもに俺たちは
ゴブリンたちは、突然俺が出現したためにたじろいだのか、ちょっと距離を置き、攻撃の機会を
なんと!
>>攻撃対象を強く意識しながら【
俺
念じるだけだと失敗しそうなので、右手を肩の高さまで上げて……
手のひらを前方に向け、左から右へと払うように腕を動かしながら叫んでみた!
「
ズバババババババババーーーーーーン!!!!
俺の手の動きとは、ほんの少しだけのタイムラグがあったが、手の動きに合わせるかのように、向かって左から右に、順に大きな爆発音を立てながらゴブリンが
す、すげぇな……。
予想以上の威力に俺はちょっとビビった。
爆発が収まった直後、辺りには強烈な "鉄さび臭" と "
爆発には
俺たちを中心とした放射状に、ゴブリンの血や
「うげっ! うわぁぁ、血や肉片を浴びなくて助かったぁ~!」
思わず心の底からの思いが口から
>>只今の攻撃についての分析結果を報告します。
右手の動作を伴わずに【爆殺】を念じて実行した場合は……
99.9%の確率で血および肉片を浴びていたものと推測します。
「…………」
ん~~! なんかモヤモヤするぞ! その報告っ!
おっと、そんなことよりも、女性たちは大丈夫だろうか?
振り返るが……一瞬、目のやり場に困る!?
女性たちは全裸か半裸、どちらかの状態だからだ!
俺は嫌らしい目つきになっていないか気にしながら……
ドキドキしながらもサッと女性たちの状態を確認する。
女性たちは現状が理解できないのか ボーッ としている。
うわっ! 左手の
意識も無いみたいだし……重傷だぞ! 早く治療しなくては!
「全知師! 俺に怪我の治療は可能か!? できるなら、方法を教えろ!」
>>お答えします。
マスターは怪我・疾病の治療も、死者の蘇生でも……何でもできます。
まぁ、俺はこの世界の管理者、"神"なのだから当然か……。
>>治療方法を説明します。
治療ターゲットを意識して【修復】と念じることで……
ターゲットに対して物理的損傷・欠損を含む治癒が可能です。
なお、その対象を"最盛期の状態にまで修復する"ためには……
【完全修復】と念じて下さい。
<<ありがとう、全知師! やってみるよ。
う~ん。 女性たちひとりひとりを状態確認しながら治療していては手遅れになるかも知れないな?
全員をいっぺんに治した方がいいだろうなぁ。やってみよう。
女性たち全体に手をかざしながら……
全員が治療対象だと強く意識して【完全修復】と
直後、女性たち全体が淡い緑色をした半透明な光のベールに包み込まれる……
その女性全体を
すると、女性たちの切り傷、打撲等はもちろん……
引きちぎられたように無くなっていた腕までもが、なんと! 復元されて、完全に修復されていたのだ!
な~んか、肌までが
あんな格好をさせておいては可哀想だし……
何よりもこのままでは彼女等を直視できないからなぁ。
そう考えて俺は、全知師から服の生成方法&装着等々のアドバイスを
チャッチャと服を着せるとするか!
再び女性たち全体をターゲット指定して……
「身体浄化!」
まずは、体の汚れを落としてやってから、その後、下着や服、靴下、靴を生成して順に装着させる。
女性たちは、いきなり体にフィットした下着や衣服等が パパッ! と
なんか何でもアリだなぁ……。 でも、まぁいいっかぁ!
これで目のやり
最初は、グレーのロング
しばらく彼女等には徒歩で移動してもらうことになるかも知れないと思い直して、ワンピースの下にブルーのストレッチデニム素材の
なお、
虫に刺されないように、靴下はハイソックスでいいかな?
色は……面倒なので白でいいか! センスもへったくれもないがなぁ……。
ごめんな、ファッションセンスの悪さについては俺もちゃんと自覚しているよ。
『間に合わせだからこれで
ん? なんか女性たちは皆、胸のあたりを気にしているようだけど?
なんだ? どうしたんだ?
>>お答えします。
この世界の人族の女性たちにはブラジャーを身につける習慣がありません。
全知師だ。 全知師が
そ、そうだったのか! でもまあ、やり直すのもなんだしなぁ……。
着けておいた方が胸の形も
まぁこのままで
そんなことを考えながら、彼女たちをボーっと見ていると、その中のひとりが俺の顔を見て "ハッ!" とした表情を浮かべ……
俺のもとへと近寄ってきて
「ああぁぁ、神様……」
その女性、ソリテアは消え入るような "か
「ん? お前さんは俺が誰だか分かるのか?」
「はい。 私どもは
貴方様の
ん? 印? そんなものが俺にはあるのか?
ああ、そういえば、この世界に来てからまだ鏡を見たことがないな……。
空間に手鏡を生成して、自らの顔を写してみたところ……
俺の
"燃えさかる炎のように見える金色の紋様" が浮き出ているのだ。
いや金色の光を放っているといったほうが正しいのか……
「なるほど。 お前さんたちはみんな神子さんなのか?
またなんでこんな
「私ども7人は、この国の主要な7つの神殿、それぞれで選ばれた"神の后"候補者でございます」
「神の
「はい。そうです。 后候補者でございます。
私たちは、中央神殿から派遣された馬車に乗り合って……
神殿騎士様に護衛されながら、中央神殿へと向かうところでございました」
「ふむふむ。 なるほど。」
「その旅の途中……この先の
襲われた瞬間を思い出したのか、この神子の顔色は青い……
思い出すのも辛そうだ。
あれ?
……どこだろう? 無事だと良いのだが……。
マップ画面に切り替えて周辺の生命体反応を調べてみたが……
すぐ近くには反応はないようだぞ? と思った瞬間である!
「ん! マズいっ! シオリ! ここは頼んだ! …… 転移!!」
この先の林を抜けたあたりに……
街道に近い開けた場所にゴブリン3体の魔物反応と、それらに重なるように
ゴブリンに襲われている! しかも女性だ! 急がねば!!
気だけが
転移後の目の前には予想通りの光景……
ひとりの女性が今まさに3匹のゴブリンたちに
女性は意識がないようだ! くそっ!!
"見えざる神の手"(サイコキネシス)により3匹のゴブリンたちを
グブヴェチャ!!!
かつて聞いたことがないような嫌な音がした……
ゴブリンは3匹とも地面に叩き付けられた瞬間、絶命したんだが……
俺は怒りにまかせて、神の手で、何度も何度も"バンバン"と
クソ野郎どもがっ!!!
「……ううう……うう……」
その声に俺はハッと
女性のもとへと駆け寄り、
全裸のうら若き女性を前にして目のやり場には非常に困った!
とにかく! まずは治療を優先させねば!
ゴブリンによる
だが、
この女性のステータスを表示させ……
まずゴブリンに襲われる前に妊娠していたかどうかを確認した。
これは体内外の異物を完全に除去する『完全浄化』が使えるかどうかを事前に確認するためである。
『完全浄化』を行った場合、受精卵・胎児等も "異物" として処理されてしまい、浄化、除去の対象となってしまうからだ。
「妊娠してねぇな。 ならば使える! …… 完全浄化! 完全修復!」
精神的なダメージ、つらい記憶は消せていないが……
これで体だけは完全に浄化・修復された。
「スケリフィという名前なのか……
ん!? この娘も17歳なのか!? ……ああ……かわいそうになぁ……」
"魂の履歴"を見てゴブリンに襲われる前の彼女がまだ男性を知らなかったことを知った瞬間、俺は、こんなことになってしまった彼女のことが、余計に
【魂の履歴】というのは、生を受けてから死ぬまでを記録しているデータのことである。 生命体の死後、この履歴は"
「この娘さんが意識を取り戻して望むのであれば、ツラい記憶も消してやろう」
おっと、このまま全裸では気の毒だな。
この娘さんはどうやら
彼女の周りには
騎士かぁ……でもまぁ、あまり時間をかけてもいられないしなぁ。
ということで下着や衣服、
視線の
それらしき視線を向けていたモノ、怪しいモノは確認できない?
一応、念のためにマップで周辺の生命反応を確認してみたが……
周囲には我々以外の反応はない!?
「うーーん、気のせいか……」
その時、女性が
「んん……」
おっ、娘さんが意識を取り戻すようだな……と思った直後!
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁっ!
娘さんは
気を失う前の状況を考えれば無理からぬ
ちょっと
「もう大丈夫! もう大丈夫だから! 落ち着いて……落ち着いて!
ゴブリン共は退治したから! 終わったから! もう終わったんだから……。
安心して!」
どれほどの時間が
状況を説明しようと彼女をゆっくりと座らせてから俺は彼女に向き合う……。
そして、体だけは"
記憶消去を望むか否かを彼女に聞こうとしたら、彼女は俺の顔を見るなり胸の前で
「ああ、神様……助けに来て下さったのですね……ああ……」
「ん? お前さんも俺が誰だかわかるのかい?」
「もちろんでございます。
ああ……助けて下さりありがとうございました!」
「そうか。 やはりこの印で分かるのか……」
「はい。ところで、お
「ああ、さっき助けた。
ありがとうな。 お前さんが神子たちを守ってくれたんだね。
……もう少し早くお前さんを助けに来てやりたかった……すまん。
つらい思いをさせてしまった……」
俺は
俺の
「ああ、神様……私のような者のために涙を……もったいない……」
「……改めて聞くけど……どうする?
体は完全に
記憶の一部にどうしても思い出せない空白部分が生じてしまうし……
予測できない問題が生じる可能性があるのでちょっとアレかも知れねぇが……」
「お
しかしながら、
「分かった。 だがもし、
その時は俺が何とかしてやるからな! 絶対に!」
彼女は俺に感謝の言葉を
その
シオリたちと
ちょっと先が血の海のようになっている?
その"血の海"の中に何か金属の
俺の視線につられて、そちらを見たスケリフィの顔が見る見るうちに青ざめる!
「ま、まさか! カークルージュ!?」
血の海に近づくにつれ"それ"が……"塊"が何なのかがハッキリしてきた。
俺は胃の内容物が逆流し、のど元まで押し寄せてくるのを必死に
「ああ、まさか! カークルージュなの!? ……そんな……
スケリフィはそう
フラッとよろめいて倒れそうになった彼女をサッと抱きかかえるように支えて、ゆっくりと地面に寝かせる……。
先ほどこちらに向けられた
そして、血の海に足を
"塊"、それが何なのかを確認するためだ。
やはり、最悪なことにその"塊"は、
その側には切断されて、グチャグチャに
それらに
女性のものと
その状況から判断すると……
頭部は身体から
最後は
……
俺は遺体の
"魂の
彼女の"魂の履歴"によれば、彼女はゴブリンに
彼女は持っていた自身のロングソードで右の
ゴブリンたちは
ゴブリンたちには
"救い"という言葉を使うことさえも
彼女が自らの死を
俺はボロボロ涙を
日本人としての
「ユリコ……」
日本人であったころの俺には、かつて
彼女の名前は『
だが、俺とユリコが大学2年の夏に、別れは突然
とあるビルの
遺体発見前の
ユリコは、
首に鉄筋が
……ユリコを殺した犯人は未だ特定されていない。
正確に言えば……俺が地球で『日本人としての
俺も
とはいっても、俺の
最後まで必死に犯人を追い求めたとは言い切れないのが
多分俺が死んだことで、もはや、地球上には
犯人に
今、目の前で
<<全知師。
死者を
>>お答え致します。
蘇生の前に、体の修復や浄化を先に
修復等の前に蘇生を行うと、苦痛等により再度
<<なるほど……ありがとう、全知師。
「カークルージュさんや……
ひょっとするとお前さんは復活を望まないかも知れんが……
俺は放ってはおけねぇ! 文句があるなら後でちゃんと聞いてやるからな!
大きなお世話なのかも知れねぇが……ここはひとつ我慢してくれ!」
「まずは……完全浄化! 完全修復!」
頭部を残して、血の海、胴体部分、
直後、頭部が淡い緑色をした半透明な光のベールに包まれると……
頭部の修復が
切断された
体の修復は十数秒で完了したが、この段階ではまだ
よし! 体の修復の方は成功だ!
さて、次は
「よしっ! 準備はOKだ!
さぁ~頼むぜ~! 無事に
一瞬、
その直後、彼女の
「んんん……」
あ~~良かったぁ! 生き返ってくれたぁ~っ!
……でも、死んでいた時間がかなり長かったよなぁ、脳は大丈夫なのか??
ガッツポーズをしてから、ふと心配になってしまった……
彼女は俺の
カークルージュはスケリフィと違って暴れないな?
死の直前には
「おい。大丈夫かぁ~? 気分は悪くないかぁ~?」
「ここはどこですの? あなたはどなた?
……あっ! ああ! その
私は
自殺してしまいましたから、もう絶対に無理だと思っておりました……
あああ、よ、よかったぁ……」
目に涙をいっぱい浮かべている。
おや? 自殺したことをちゃんと覚えているのか?
それなら、死の直前についての記憶もあるんだよな、きっと。
よかったぁ! 脳にダメージがあるかと思ったが、そんなのは
しかしすごいなぁ、一切取り乱さないとは……
いやぁ~、えらく
「いや、お前さんは死んでねぇよ。
いやいや正確には一度死んだんだけどなぁ。俺の
それがマズかったら
俺はお前さんにはどうしてもっ! 生き返って欲しかったんだよなぁ~」
「えーっ? いやぁん。神様が私をそんなにも大切に思って下さるなんてぇ~。
し・あ・わ・せ! うふふ……。 わわわ、分かりましたわ!
さぁ
なな、なんだなんだぁ??? お、俺は何かやらかしたのか??
俺がタジタジになっていると後ろから声がする。
「あぁ、カークルージュ! 無事だったんですね!?」
「あっ、スケリフィ! 良かったわ!! あなた
「ええ、私は危ういところを神様に助けていただきました。
それで……あなたは大丈夫だろうかと思って街道の方を見たら……
血の海があって、バラバラになった人らしきものがあったものですから……」
スケリフィは涙がこみ上げてきたのか言葉につまり……
「て……てっきりあなたが殺されてバラバラにされてしまったと……。
でも、ああ! あなたが無事で本当に良かったぁ!!」
「あーなるほどぉ。
でもね、あなたが見た血の海の中のバラバラ死体は……多分、私ですわ。
つい先ほどまで私はこの場所で死んでいましたからね。
でも……うふふ! 神様がね……
『俺には君が必要なんだ! 絶対に生き返らせてやる~っ!!』って、
私はつい今し方生き返らせて
うふふ、すごいでしょ!?
な~んか、女子二人で話の花が咲いているようだな……。
今のうちにシオリと
<<全知師。
シオリたちをこちらへ転移させたいんだが、どうするのがいいだろう?
>>お答え致します。
マップ上で、まず転移させたい対象を指定して……
その後、『転移させたい場所=転移先』を指定します。
そうした状態で【
<<なるほど。
自分と自分に接触しているモノを瞬間移動させる場合には【転移】で、
自分と接触していないモノを瞬間移動させる場合には【転送】を使う……
という認識で合っているか?
>>
【転送】の場合は非接触の他者だけはなく自身をも含めることが可能です。
<<ありがとう、全知師。よく分かった。
まずはシオリに
『あ・あ、シオリちゃん、聞こえるか~? みんな無事か~?」
『はい、聞こえます、うえさ……こほん……シンさん。
実は先ほど
それ以外は特に何も問題はありません』
『おいおい、襲撃って!? 大丈夫なのか?』
『はい。
賊は剣で斬りかかってきましたが、殺気に気付いた私が賊の顔面にパンチを食らわせたら林の方に吹っ飛んで行って……それっきりです』
『実は俺の方も、なんか一瞬だけ殺気のこもった視線のようなものを感じたんだが、そうなると俺の気のせいではなかったようだな?
どうだい? 襲ってきた奴を追跡できそうかい?』
『いえ、賊にマークを付けておこうと思ったのですが、残念ながら……。
マップを表示させて調べたんですが……私たち以外の生命体反応は確認できませんでした。 取り逃がしてしまい申し訳ありません』
『いや、お前さんたちが無事ならそれで十分だ。
しかし、俺の方もマップには生命反応が出なかったんだよ……
"転移能力"でも持っているんだろうかな、そいつは?
……ナニモンなんだろうなぁ?』
『はい、敵であることには間違いないのでしょうが……
念のためにと思い、現在は再度の襲撃に備えて、全攻撃属性耐性の防御シールドを展開しております』
『でも流石だよ、シオリちゃん! いやぁ良かったぁ! みんなが無事で!
ありがとうな! よく頑張ったな!』
『いえ……』
『おっと、そうだ用件を忘れるところだった……
俺はこれから、街道に出て馬車がどうなっているか確認してからみんなをこちらへ転送しようと思っている。
だから突然転移させられても驚かねぇよう、みんなに心の準備をさせておいてくんねぇか?』
『はい、承知しました。 すぐに準備させます。 それでは後ほど……』
また、
御者がどこにもいないのは気になるな。うまく
考えてもしょうがないか。
「転送!」
初め金色の8個の光の粒が現れて……
その光の粒それぞれが人のような形を形成するように光の粒が増えてゆく。
そして、最大限に光ったかと思ったら、それら光の集合体は人へと姿を変えた。
地球人だった時に見た、某有名宇宙探検モノのSF、「スター○レック」の転送シーンのようだ。
ただ、あのSFでの転送シーンよりも
転送の
<<全知師。
光の粒が現れてから実体化するところを見ると……
転送ってのは、転送対象を分析、分解し、目的地へビームか何かにのせて運んで再構築するって原理なのか?
>>お答えします。
いえ、亜空間内にパスを通して対象を移動させるだけです。
光の粒が現れるのは無意味です。 単なる演出にしか過ぎません。
『かっこいいから』とマスターの指示で導入された視覚効果です。
俺は「ス○ートレック」での転送原理を思い出して質問してみたのだが……
何をやっているんだ過去の俺は……。 もちろん全く記憶はないけどね。
<<全知師。
俺が指示を出したのに申し訳ない……
今後は光の粒の演出は "なし" で
>>承知しました。
以後は最速で転送、転移を実行するように設定を変更します。
ちなみに、「スタートレッ○方式」の転送も原理的には可能であるらしいのだが、処理コンピュータに対する高い負荷と、エネルギー消費効率の悪さから採用されてはいないということらしい。
転送されてきた神子たちは皆、一瞬で街道まで移動したことに驚いているようだ。
念のために我々を中心とした半径200メートルの球形の
「みんな無事で良かったよ! シオリちゃん、ありがとうな。
しかしどう思う? 襲ってきたのは盗賊なんだろうかなぁ?」
「うえさ~……シンさん、
どうも
「えーと。ということは……
ゴブリンの襲撃には、何かおかしな点でもあったということか?」
「はい。そうなんです。
そもそもゴブリンだけでなくすべての魔物は……
種族創造時に管理者、および、管理者の
ですから、本来ならゴブリンが襲撃するようなことは起こりえません」
「えっ?そうなのか?」
「はい。 ゴブリンが、シンさんの
それどころか、神子たちを
これはもう、
「ん? 俺が今日初めて会った神子たちなのに俺が何もしてねぇのに俺の
「あ、言葉が足らず申し訳ありません。
うえさぁ……シンさんが地球へ出発する前に出された指示に従って、シンさんから事前に与えられていた権限で、私が彼女たちをシンさんの庇護下におきました」
「俺の指示?」
「はい。 上様……シンさんが
選ばれた后候補の神子たちは、私に与えられた権限によって、シンさんの
「あ、そういうことね……なるほど……。
「で? ゴブリンは本来、俺たちには攻撃できねぇハズだったのに……変だ!
ということなのか?」
「はい。
ゴブリンに限らず、あらゆる魔物の
『管理者およびその庇護者への攻撃』
について設定するプロパティがあって、デフォルト値は『 不可能 』に設定されています」
「ほう? そんなのがあるのか? で?」
「はい。 そしてそのプロパティへのアクセス権、プロパティ値を変更する権限は、管理者か、管理者から管理権限を
現在この惑星ディラックでは、シンさんと私以外は、このプロパティ値を変更できないことになっているのです」
「なるほど。基本クラスの設計上、魔物たちは俺たちに手出しできねぇ仕様で……
しかも、普通はこの設定が変えられねぇんだな?」
「はい。この基本クラスを
もちろん、クラスをインスタンス化したもの、つまり、実際にこの世界に生存する魔物に対してもこの制限は有効となるのです」
なんとまあ……生命の創造はオブジェクト
「うへぇ~、となるとひょっとして管理システム側のバグなのか??
セキュリティホールでも開いているのか? こりゃまいったなぁ~。
うわぁ~、
まっくろクロスケもびっくりして腰を抜かすくらいの "超ブラックIT企業" で、社畜なんてそんな生やさしいもんじゃない、"
どこの誰が書いたか分からない"スパゲッティコード"を、
「それで管理システムのソースコードはあるのか?
本音を言えば見たくもねぇんだけどなぁ……」
「いえ、ありません。
この実験宇宙空間アファインで利用している宇宙管理システムは、シェアNo1の
多くの実験宇宙で使用されていて、高いセキュリティと
ソースコード利用ライセンスもソースコード自体も取得していません」
いやいや、全然残念じゃないよ。
助かったよ。 デバッグしなくてすむからホッとしたよ。 は・は・は。
「で、開発者側には今回の件をフィードバックしたのかい?」
「はい。ゴブリンの記録データが書かれている
「ううう……魔石を回収できなくしてしまってすまん。
"
「い、いえ……シンさんを責めるつもりはないですぅ……」
俺は冷や汗がタラタラ流れた。
シオリちゃんも非常に困った顔をしながら、同じく汗をタラタラ流している。
しかし、これでは開発者側のサポートを受けるのは絶対に無理だなぁ……。
『ちょっと妙なことがあってさぁ~。 なんか不具合があるようなんだけどさぁ~、調べてくんないかなぁ~?』
こんなこと言われたって、開発者は手も足も出ないもんなぁ……
担当者は困っちゃうだろうなぁ……。
「俺たちの方で
……みんなを強力に
「はい? 加護……ですか?」
シオリがちょっと首を
クールビューティな顔立ちのシオリのこの仕草!
……ちょっとギャップがあってかわいいな。
「おーい、みんなー! ちょっと集まってくれー!」
神子たち、騎士たちには
もちろん【完全修復神術】も使えるようにする!
【完全修復神術】を使えば死者の
また、攻撃してくる相手には反撃ができるように【攻撃神術】も使えるようにしてやろう。
もちろん使える攻撃属性は全部! 全攻撃属性が使えるようにしてやる!
そして、各属性について最初は攻撃力を『中の下』くらいに設定しておいて……
使用すればするほど攻撃力レベルがアップするようにしよう。
当然、上限は
おっとそうだ!
そこそこの相手でも
そうだなぁ、強さはオーガ並みでいいかな?
彼女等はまさに "恐ろしい" ほどの美人になってしまうな……クックックッ!
アメコミヒロイン並どころじゃねぇな!
それ以上の強さになっちまうだろうな!
いやぁ~~、な~んかファンタジー世界っぽくなってきたなぁ!
ふっふっふっ! チートじゃぁ!!
ちなみに……どうやって神術使用回数を判定して、攻撃のレベルアップが自動的に行われるようにするかというと……
攻撃発動直後に呼び出されるイベントを利用する!
"使用回数の増加に伴って"攻撃力がアップするようにプログラミングしたイベントハンドラを作り、このイベントに割り当ててやるのだ。
ふふふ、イベントドリブンだな!
地球人時代にシステム開発に
大人2人で使うくらいの大きさのテントを
外見からはとても大人11人が入れるような大きさに見えないが……
テントの中は亜空間内に展開された50畳ほどの広さの洋室につながっている。
部屋の中には真ん中を通路として、両脇に6台ずつ、計12台のベッドが余裕を持って置かれている。 俺はこの中でみんなのプロパティ値を編集するつもりだ。
プロパティ値を変更した場合、その変更結果を反映させるために、基本システムの
その再起動が完了するまでの間は一時的に意識を失ってしまうのだ。
これは俺自身が経験済である。
ということで、プロパティ値の変更は横になった状態で行った方が安全なのだが、さすがにうら若き
だから安心して横になってもらうためのテントを用意したというわけだ。
「えーと、みんな、聞いてくれ!
俺はお前さんたちみんなを強力に加護することに決めた!!
今回のゴブリン襲撃事件で俺は、大切なお前さんたちをもっとちゃんと守ってやらなきゃいかんと痛感したからだ!! それで……」
みんなはどういうことなのか
俺は話を続けた。
「今後良からぬことを
どうしても嫌だという者にまでは、無理矢理に力を授けようとは考えてねぇから、嫌だったら申し出てくれ!!」
…………
こんなことを言われても意味が分からないかも知れないな。
「まぁ、後からやっぱり嫌だ!ということになったらその時は簡単に元に戻すことができるから安心して欲しい。 ではみんな、このテントの中に入ってくれ!」
「えとえとぉ、いっぺんに入るのは無理そうですがぁ……
ひとりずつ、順番に入るのでしょうか?」
「あ、小さく見えるけど中は結構広いから、まずは入ってみてくれ。
それと……中にはベッドが用意してあるからな。
奥から順に、横になって
お色気ムンムン系の
彼女の髪は一瞬にして目を
……ちょっと
中からは驚いたような声が聞こえてくる。 ま、当然か……。
ん? 自分たちは関係ないと思っているのだろうか?
「あ、お前さんたちも中に入ってくれ。
当然だが、俺はお前さんたちのことも大切に思っている。
ちゃんと加護するからな」
「あ、ありがとうございます!
私たちのような者でもご加護を受けてよろしいのでしょうか?」
「ああ、もちろんだとも!!」
「しかしながら……
全員が中に入ってしまったら、万が一にも敵の襲撃があった場合には
私たちは
「スケリフィさん、心配無用! 大丈夫だ!
周囲には防御シールドが展開してあるからな。
それに、みんな一度に加護を
ささ、ふたりとも中に入って! 入って!」
ふたりは納得したようでテントの中に入ろうとする……おっと、そうだ!
「あ、そうそう!
今後は、俺はスケリフィさんを『スケさん』、
カークルージュさんを『カクさん』と呼びてぇんだがダメかな?」
ふたりとも呼び捨てにして欲しいと言っていたが……何度か頼む内に
一瞬『人生、楽な時もあれば、苦しい時もあるぜぇ~』というような内容の、あの有名曲がBGMとして聞こえたような気がした!?
「じゃぁ、ふたりは俺のことを『シン』と呼んでくれ」
「さすがに神様を呼び捨てにはでき
せめて……せめて『シンさん』と呼ばせていただけませんか?」
「そうです。私もそうしたいですわ。かみさ……シンさん」
スケさんがそう申し出て、カクさんもそうしたいと言ってきたので同意した。
『シンさん』かぁ~、世を
だがなぁ、『スケさん』『カクさん』と
どうも白い
俺たち3人は一緒にテントの中に入った。
俺たちが入ると、みんなは
俺はスケさんとカクさんにもベッドへ行くようにと
◇◇◇◇◇◇◇
「……というわけで
だから俺が目を開けても良いと言うまでは、安全のためにベッドに寝て目を閉じていて欲しいんだ。
あー、それからぁ、もちろん加護を
俺は加護の内容等を説明し、みんなの準備が完了するまで待った。
「では始める……と、そうだ【
【神眼】というのは相手のステータスを見る能力だ。
この能力を使えば、相手の
与える加護の内容等を説明し
「じゃぁ、今度こそ本当に加護の付与を開始する!」
俺は開発画面を呼び出して、まず俺とシオリを
その状態のままプロパティ・ウィンドウを表示させて【
攻撃への
次に同じくサブプロパティの『耐性の種類』に"すべての攻撃属性"を指定した。
これで、物理攻撃だろうが毒攻撃だろうが、精神攻撃、魔法攻撃であろうが……
どんな攻撃をされても "へいちゃらぴー" だ!
『なんかやられたのかしら?』
ちなみに……【魔法・魔術】は俺たちが使う【神術・神聖術】の劣化版で【神術・神聖術】には
決定的な違いは、【魔術・魔法】はMPが不足すると使えなくなるのに対して、【神術・神聖術】にはそのような制限が全くない。
さて次は……【
こちらもサブプロパティ『Enabled』を "true" にセット。 これで有効になる。
サブプロパティ内の『ステータス情報表示』を"true"に……
『 ターゲットカーソル表示 』を "true" にセットして、それ以外はデフォルト値のままにしておいた。
ステータス情報を見れば相手の能力が判定できる。
そして、ターゲットカーソルの色を見ることでターゲットの善悪が分かる。
だから最低限必要だと思われるこの2項目だけを【神眼】で確認できる項目として指定した。 これらだけで、まずは十分だろう……。
次に治癒系神術の【修復神術】だ!
【修復神術】のサブプロパティ『Enabled』を "true" にセットし……
他のサブプロパティの内『死者の蘇生』以外のすべてを "true" にセットした。
ここまでは順調だな。
さてと次に
ん? どれくらいの数値にすれば良いんだ?
<<全知師。
オーガの Strength 値って平均でどれくらいなんだ? 教えてくれ。
>>はい。
おおよそ50です。 ちなみに
<<そうか……。
ところで、STR値を大きくすると筋肉がムキムキになってしまうのか?
腕や足が太くなるとか…?
>>いえ、そんなことはありません。
見た目はほとんど変化しません。
<<分かった。ありがとう。
ほっとした。 よかったぁ~。 女心はよく分からんが、STRを上げて腕や足が太くなっちまったら、この子らはきっと悲しむだろうからなぁ……。
ということで、STR値には50をセットしておいた。
最後は【攻撃神術】だ!
【攻撃神術】プロパティのサブプロパティ『 Enabled 』を "true" にセットして、攻撃属性を指定するサブプロパティのすべてを "true" にセットした。
つまり、全攻撃属性が使用できるようにしたことになる!
すべての攻撃属性指定サブプロパティには
それらの中に『攻撃力』指定欄と『攻撃の種類』欄という、全攻撃属性共通項目が存在する。
それで全攻撃属性を全く同じ設定、『攻撃力』欄を "
そして、『攻撃の種類』欄ついては "Auto" をセットした。
この "Auto" をセットするということは、 "攻撃力レベルに応じて" 使用できる攻撃神術の種類が自動的に増えるように指定したことになる。
あ、そうそう!
攻撃神術の行使回数で、攻撃力レベルが上がるようにしておかなくっちゃな!
プロパティ・ウィンドウで、『イベント』タブを選択して、【攻撃神術発動直後】イベント欄をアクティブにした……
すると、イベントハンドラを記述するウィンドウが新たに表示されてきた。
その中に、
キーボード入力の方が俺には楽なんだがなぁ……。
どうも "念じる" っていう入力方式は使いづらいんだよなぁ。
さて最終確認をと……。
よし、OK! それじゃリビルドして……よし! ビルドも成功だ!
「はーい、みんな聞いてくれ~!
準備が整ったんで、今から加護を有効にしようと思う!
一時的に意識を失うけど、大丈夫だから心配しねぇように! いいかな?」
みんなは『うんうん』といった感じで
「よし! では有効にする!」
ん?
『リブート!』
リブート命令を実行した後に、ちょっと間があってから『全ターゲットの再起動が成功しました。 全プロセスは無事に完了しました』というメッセージが俺の脳内に流れた。
「はい、みんな~お疲れ様! 加護の付与は無事完了した!
もう目を開けてもいいぞぉ~! 起き上がってもOKだぁ~!」
のびをする子や、あくびをかみ殺したような表情をしている子……
おっ、3人ほどかわいい顔をしてスヤスヤ眠っているな?
まぁ、しようがないわなぁ~。
すぐに
ちょっと
と、そんなことを考えていると突然!
>>警告! 警告! 危険! 極めて危険!
<<どうしたんだ!! フライデー! ……じゃなかった、全知師!!
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