第4話 先輩と帰り道②
雨上がりの下校。
これまでは憂鬱なものでしかなかったが、今は隣に『完璧美少女』最上みれいがいる。
しかも、俺の彼女として。
今日は人生最高の下校シーン間違いなしだと確信していたのだが……はっきり言おう。さっきから先輩の様子がおかしい。
ちょうど下駄箱で靴に履きかえたあたりから、先輩はなぜかずっと下を向いている。
まあ雨上がりだからそこらにまだ水たまりが残っているし、間違えて踏み入れないように気を付けているんだろうな、先輩かわいいな、と思っていたが、どうやらそうではないようだ。
ザッ、ザッ、ザッ、しゃがみ!
「うんうん、ダイジョブ」
さっきから、散歩進んではしゃがんで地面に目を凝らし、小声でダイジョウブダイジョウブとなにやらブツブツ言っている。
時折小さなガッツポーズまで付いたりしているが、はっきりいって先輩の姿は端から見て全くもってダイジョウブな様子ではない。
3歩進んで2歩さがらない分、少しづつ前に進んではいるが、出発してからまだほとんど進んでおらず、校門すら出ていない。
『完璧超人』の最上先輩のことだ、なにか大切な行動なんだと思ってまだツッコミを入れていないが、そろそろ限界だ。何よりこれではいつまで経っても最高の下校シーンが始まらないではないか!
「せ、先輩? さっきから何やってるんです?」
「ん? こういう雨上がりの日は気を付けないとね。アリさんたちも嬉しくって、普段よりたくさん表に出てきてるから」
「え? アリさん?」
「そうそう。踏んじゃわないように気を付けてるの。あ、清澄クンストップ!」
バっと俺の前に両手を広げて「進んじゃダメ」ポーズを取る先輩。
どうやらアリを踏んづけないように、地面を凝視して確認していたようだ。
先輩がやるから何をやってもかわいく見えるのがまた何とも入れないけど、アリを庇うあまり、左足が思いっきり水たまりにハマっちゃってますよ。
「あ、も~清澄クンのバカ~! 靴下濡れちゃったよ~」
『完璧超人』最上みれいの意外な欠点その②
アリを踏まないように、帰り道は常に下向きで移動
正直常識からはかなり逸脱した行動だけど、靴下が濡れたおかげで先輩の生脚を拝むことができたので、俺、全て受け入れます!
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