Ad-Baby〜スポンサード赤ちゃん〜

asai

Ad-Baby〜スポンサード赤ちゃん〜

国民の収入が減る一方、養育費や税金による支出が増え、子供を産む人はほとんどいなくなった。


少子化でモノが売れなくなり困った企業はお金を出し合いある財団を作った。


財団法人 ”Ad-Baby” である。


財団は出産を奨励し、生まれてくる赤ちゃんの養育費を出す代わりに、

特定の企業のサービスを死ぬまで強制的に使ってもらった。


飲み物は全てA社、日用品はB社、学校は学校法人C、

製薬会社はD社、法律事務所はE、冠婚葬祭はF社など、ありとあらゆる業界で細かく決められていった。


このシステムの中で育った人間はAd-Babyと呼ばれた。

Ad-Babyは消費者としてだけでなく、スポーツや芸能界で活躍した者は企業の広告塔としても振る舞った。

ブランディングとCSR、そしてきちんと商品の売りにつながる広告としてこの制度は上手く機能した。


大人になったAd-Babyはこのシステムに感謝し、提供されるサービスを妄信的に享受した。


ある日、財団に出資していた製薬会社Dの薬に深刻な副作用が発覚し、

使用していた多くのAd-Babyは体調不良を訴え、亡くなった。


Ad-Baby達は法律事務所Eを利用して、製薬会社Dを訴えたがもちろん敗訴した。

Ad-Babyは二度とこの悲劇が起きないために、

危険な財団の廃止を訴えるために、アンチテーゼとして集団自殺を選んだ。


しかしメディアが取り上げることはなく、死人は冠婚葬祭のF社によって丁重に弔われた。

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