第6話 木棚の後ろに、ベタに階段が隠れている

 隠し扉、何て素敵な響きだろう。

 街の人の噂をよーく聞いていると、木の棚が空きになった時にだけ使える簡易アジト、宿屋のような機能があるようだった。そう言えば有ったのか?

 記憶には無いが、夢の世界の新しい状態に冒険して見る。ギルドにそれはあり、使われていない未知への挑戦の一歩と言った感に踏み込む。

 サトウカズマは、行方不明の情報の確認も欲しい。必殺技を思い付いた。


 バニルを装着する、サトウカズマの姿が有った。洗顔成分で上手くやり、滑る上に泡が間を保つ。やや上を向くがバニルがさっき飛んだのがヒントだった。

「いやー、バニルが剥がれなくって」

「バニルが離れ無い。仲間にはそう伝えておきます」

 いつも通りの、通常通りのやり取り。不自然さはそこからだった。

「して、本棚の後ろの階段が気になるんですけれども」

 こっそりと伝えるように、バニル的にする少年の姿。圧力としては、悪魔的なのも心強い。

「そうなんです。そこなんです。在庫が無くって、営業が、宿屋になってしまいます」

「是非とも、よろしくお願いしたいのですが」

「ああはい、それでしたらギルドの依頼を受けると言う前提でどうぞ」

「案外お金は、いらないと?」

「ええ案外ユルいですよ」

 段々、夢のお姉さんの姿に見えてくる。ツンと酒の匂いがするが、そんなの気にしない。彼女は制服で、いつもの受付で手続きを粛々と取った。

 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……。大層荘厳な音で木棚が横にスライドし、上の階への階段が現れて来る。隠し階段って奴だ。



 部屋は良く、窓辺に寝そべり、階下を覗く事が出来る。と言っても外だ。祭りのメインに赤にピンクに彩られた光は終わり、暗闇が支配していた。

 ルームサービスはこう言うのが欲しいっ、と強く願ったものだ。

 一瞬で洗濯が終わる。ありがたかった。

『建造中の、デストロイヤーがある。耳聡く、行け』

 ギルドの依頼は単純一択、これだけだった。「この街を守る」今はやる気が満々だった。

 暗い部屋の壁に、紙が飾られている。羊皮紙や地図のような感じだ。黄金色に、そこに字が出るので荘厳そのもの。慣れ無い空気と荘厳と言う言葉にドギマギする。顔は洗い、バニルはフックに上手く干してある。

 機嫌がよさそうだ。

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