第4話 魔王みたいな存在を倒してみたいとは思わないか?

「女神さま、シビれました」

「え?」

 彼女は思わぬ言葉に振り向いた。そして、注文を付けた。

「もう一度、言って頂戴」

 声が、何だか上ずっている。

「女神様っ、そのっ、痺れましたっ!」

「ええーっ、続けて」

「シビれました。私」

「うん」

「私、耐久力がある方なんです。行儀良くするのは好きなんです。趣味主義思想、大好なんです。行儀良くするのっ。脚が痺れて。でもっ、正座はもう、限界ですっ!足を崩させて、下さい」

「そりゃあ、当然だと思うわ。どうぞ。私わかんない」

 夢魔の彼女達は正座している。とんでも無い脚線美を視界の片隅、片目でやり過ごす。彼女が目をギュッとやるのを見て、こりゃあ敵わんわとオヤジ心が出たのも事実、イタタタッ、と冒険者なら手に取るように分かる現実を、目の前にした。



 夢の中、風呂に入り目覚めるトラップを回避、事前の準備があってこその芸当、用意周到さの勝利だ。盗まれるとすら思った『クズマ』のウケ。ここからは、話の中のシミュレートで、この事を説明した。透明薬で、道を進み宿に行く。恥ずかしいから、君を使って局部を隠す。

「なーんだ」

 プカプカ浮く、機嫌の良い仮面、バニルを湯に浮かべるのでは無く、大きい酒を運ぶような木製の桶に浮かべた。まんまるに浮く月夜を見る、彼は答える。

「逆にしろ」

 悪魔は機嫌が良く、命令する。表面をツルツルに、ピカピカに洗い上げたいようだった。確かにオトコ供の乱痴気騒ぎはヨダレが飛んでてもおかしく無い。

 近くの銭湯に金を渡し、タオルを貰い、洋服の片隅で、装着すると痛い、呪いのバニルを運ぶ。

 ここまでは、こうだった。オトコ同士なので、上手く動線を外し、視線を外したが清潔さだけは、守りたかった。

 あると明確に有る、透明化アメに夢の中の配置の違い。都合の付くリアリティを思う。

 ふと、思い付き、こう言った。

「魔王って倒して見たくねー、いや」

 少年は考え直した。

「なんだ」

 ピョインと、バニルと言う仮面はひっくり返った。

「魔王みたいな奴を倒して見たいと思わないか?」

「おー。それは……。……いいな」

 自力でひっくり返った彼は答える。普通なら、自分で出来るのね?としょげると所だ。


 少年心は夢の中、『魔王を倒す』と言う夢を叶えるのもちょっと違う方向に行くが、良いと強烈に思い執着するようになった。

 妄想の中

「それは、ヤバイ様な」

 一番の美貌を持ち一番の美人にモテる妄想をいだき、夢のスタッフの中でもナンバーワンのあの人と言った感だ。彼女は身をかがめる様に、座った姿勢から横にスライドする様に身をよじらせ挑発的に上を向く眼で迫るのだ。

 決まった。彼女に、こう言われるのなら命がけでも良いかも知れません。背景は暗く、彼女だけ、火の光が当たる。悪の組織に囚われている様だ。

「よーし、彼女を助けて、悪い奴らから救い出し、抱き上げる。禁止を喰らった美貌の店のナンバーワン」

「おー、良いな。オトコだな」

 言葉とは裏原に真剣だ。

「それは、ヤバいような……」

 彼女の声が妄想で再生され色気を帯びる。憂いる双眸が、まぶたも真剣に心配し行動を決定付ける。黒い床に暗い室内、彼女だけが、炎の光で照らされてギリギリ見える。

 ギリギリ見える室内、そこから救い出ーす。はっきり言って、気分はこう「そこから、救いだーす」きっと魔王がいる。存在するに、違い無い。

「風呂を楽しませろよ」

 彼は言った。女神よりはっきり言って、こっちだ。腹積もりは決まった。

「確認しよう。カズマくん、オレには今、主に移動用の素体が無い。女神に連れられて、君を起こす予定だった。オレを装着すれば、激痛が走る。オレは、ギミックで負けたんだ。

「こっちにそうやって来たの」



「中身ってどうやったら分かるの?」

 元の世界の延長の夢の中、なので延長線上の影響力はサトウカズマの世界の物だ。この結論に至るまで、数千年の時を費やす。何故か一瞬で見破った女神様は、一瞬の内容を言い渡す。

「多分、バニルの呪いの部分を浄化したわ。綺麗さっぱりね。意識はあっちだけど、その元々、悪い奴だから問題無い」

「問題ない位に悪魔だから、問題無い」

 本来女神様の仰る通りですと言う意味だが、少々、話が違う。

 どうやら、浄化した部分は浄化したものとしてある程度、女神様への崇拝の証として送られて来たらしい。記憶を削る事は出来無い。夢の中は、牢獄だが記憶が作用しているだろう。バニルはさっさと、本体以外はさっとしまうように消し、協力してくれた。天国のこの表情は、そのうちいびきをかくだろう。『コロス』瞬間的にこう思う女神だ。

 送ったのは協力者で、他意はない。

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