第17話 知的な存在としての死と尊厳

 

 つまり、パンゲア大陸の三つの国には、運命的な相互の共通項と相違点があって、いずれはだから争い合うという、そういう流れになっていくのはどうしようもないことでした。


 エルフ族は、下品で粗暴なオークの一族が根っから嫌いで、本音では「蛇蝎のごとくに」忌み嫌っていたのです。


 ノームたちの一族は中立を保って、二つの国の緩衝材というのか、ともすれば憎しみで破裂しそうな相互の関係に、危うい均衡をもたらしていましたが、新しくノームたちの国の国王になったウィルヘルム三世という人は、権謀術数に長けた策略家で、巧妙にオークたちを焚きつけて、二つの国を争わせて、漁夫の利を得ようとしたのです。


 たくさんの間諜スパイを二つの国に密かに送り込み、あらぬ噂やゴシップ、与太話、あることないことを振りまいて、もともとウマの合わない二つの国の敵対感情を、煽れるだけ煽ったのです。


 根が単純なオーク族の方に、策謀は先に効果を発揮して、元来にエルフたちの「お高くとまった鼻持ちならない」態度に反感を覚えていた    国の若い労働者階級に、「反エルフ共同戦線」”AECW”を名乗る過激派組織ができて、自国に訪問しているエルフの観光客や、交易の商人、あるいは大使館に勤務するエルフの外交官までを、闇討ちしたり、そういう事件が多発するようになったのです。


 クレープが目撃したのは、そういう両方の国の反目感情のの発露として、国境を警備する     共和国の軍隊の駐屯地で、いざこざがおきて、    国の軍の施設が、AECWに夜目を盗んで焼き討ちされた、その火焔だったのです。


 …カサンドラ公国の国境警備隊の女隊長で、国王親衛隊の精鋭中でもエルフには珍しくマッチョで勇猛果敢なタイプの       は、テロリストの機関銃掃射の音で目覚めた。


 「何事?!敵の襲撃か?」


 警備隊の駐屯所は人間のファイヤーレスキューと同じシステムや構造を成していて、一朝事あれば、ものの数分で全員が配備について、危機対応できた。


     のテロリストは全員覆面をしていて、例のAE  らしかった。

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