第15話 戦乱の予感


しばらく風を切って大空を疾駆した挙句に、クレープたちは、国境にある、峻険な、通称を「死の分水嶺」と呼ばれる見晴らしのいい峠の頂上に辿り着きました。


素晴らしく雄大な猛禽類よろしく、リュックは優雅に巨翼を折りたたみながら、着地しました…


降るような満天の星空には、さそり座の主星のアンタレスが赤く輝き、その横には昴の五つ星がネックレスを丸めたようにこじんまりと纏まって光っていました。

典型的な秋の星図でした。


「リュック、大丈夫?随分飛んだわね?かなり発汗して、湯気がたってるわ。でも『一日に千里を駆ける稲妻の麒麟』なんて異名をとるリュックの潜在能力からしたら準備運動程度だろうけど…」

クレープは愛馬を気遣いました。


と、その時、クレープはふと、地平線の彼方に微かな炎らしき赤い影が見えるのに気付きました。


「何だろう?夜景にしては様子が変だわ。真っ赤に燃えている。それに相当大きな炎だわ。大きな火事でもあったんだろうか?」


少し馬身を休めたリュックを駆って、そちらの様子を伺って見ることにしました。


クレープたちはしばらく虚空を天翔けました。

2~3km進むと、かなり炎の出処は鮮明になって、それが只の火事ではなく、「災害規模の大火災」であることが、クレープの眼にもハッキリ分かりました。


「これは大変な事態だ。何かただならない凶事の予兆だ!」


その時既に、クレープの鋭敏な感性は、それが「破滅や不幸に繋がりかねない〝戦乱の予兆〟」であることをハッキリと把捉していたのです…


<続く>





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