第6話 そのひとことに救われる。

 私は会社に出勤してすぐ佐山さんに謝罪した。

「本当にすみませんでした! これから心を改めまして、気を引き締めて働かせて頂きます! よろしくお願いします!」

謝罪を受けた佐山さんは優しい笑顔で「わかりました」と言って、今日の仕事の説明を始めてくれた。なんていい人なんだ、仏の佐山だぁ!


「今日ご飯行くか?」

こんな私をご飯に誘ってくれたのは仏の佐山さんでした。

「疲れてたらいいけど、キツいのかなと思って。相談なら乗れるからいつでも言えよ?」

…仏。仏の佐山にはお見通しってことかぁ。優しい優しすぎる!

「相談は、その色々あって、その辛かったってだけで! あ、でもご飯行きたいです!」

「そうか、じゃあご飯食べ行こう! 何食いたい?」

あぁ、もう仏だぁー!


ありきたりなご飯屋さんで上司と食事…、うん、社会人!

「仕事は難しいか? 俺あんま教えるの上手くないからごめんな」

「いやいや! そんなことないです! むしろ、わかりやすいです!」

「そうか、ならよかった」

「むしろ、私なんか色々遅くてすみません。頑張ろうと思うと空回りしちゃうことも多くて…」

恋愛だってそう。頑張ろうとして「重い」って言われて、復縁するためにって自分磨きしてたけど、もう結婚してるなんてどうにもできない最悪なオチだ。遅かったってだけじゃないのなんてわかってるけど…。

「無理すんなよ。遅いんじゃなくて山口さんは丁寧に仕事ができてるの。空回りしたとしてもそれも経験だよ。山口さんらしく一生懸命に働いたらできるようになるさ」

と言いながら佐山さん頭撫でてない…? 天然たらしかな…。まぁいいや。すごく嬉しいこと言ってくれてるし。そうか、考え方次第で変わるものだなぁ。「私らしく」生きられたらそれがいいんだろうなぁ。

「まぁ、仕事には慣れも肝心だ。焦ることはない!」

「ありがとうございます!」

「あ、ってか頭撫でっちゃった。セクハラじゃん、俺! 訴えないで〜」

「全然大丈夫ですよ! 元気もらえました、ありがとうございます!」

「そうか、ならよかった」


「お疲れ様です!」

「おう、気をつけて帰れよ。また明日な!」

「はい! 今日はありがとうございました! 佐山さんもお気をつけて。また明日。」

美味しいご飯と素敵な言葉に救われた日だったなぁ。頭撫でてくれたのってもしかしたらセクハラ! って和ませようとしてくれてたのかな。仏は違うなぁ。明日も頑張ろう!

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