ビジョン

 ずっと、ビジョンがあった。悪夢にも楽しい夢にもなりうる、夢だ。けどなんかどっちにしろいつもずっとさみしいのは夢のなかであたしは変わらないな。リアルでは、もっと吐き捨てている。でも、夢だからさ。深層心理かな。……あたしはそう分析している。


 未来がもんのすごくペットをかわいがっていたのは、知ってた。なにかというと、コロ、コロ、コロ、って。べつにふつうの話なんだよね。どうでもいい話なの。覚えているのはともかくコロがいい子でかわいいってだけ。メス犬だって聞いたからさ、そんなの犬だし関係ないんだろうけど、なんだかなあ。それでいてなーんか写真は見せてくれないし。コロの犬種をたしかめてから、なーんて言ってたけれどもあれは意味がわからない。意味不明。


 だから、なぜか、あたしのビジョンのなかではコロは金色の毛並みの温厚なゴールデンレトリバーになってる。



 これ、夢の、はなし、ね。



 未来とコロはいつもどこかではしゃぎまわっている。人間と犬なのに、なんだかダンスを踊っているようで。あたしはそれをモニター越しに見ている。ぼんやりと。これがおまえのバイトだって言われるからあたしは目を逸らすわけにはいかない。背景がぼんやりとしたどこかで舞うひとりと一匹はべつに子ども向け番組でも流せるくらいの健全そのものの夢のはずなのに、なぜだかアダルトビデオみたいで、あたしはいつも目をそむけたくなる。


 でも、そむけることはかなわないのだ。バイトだし、それ以上に、……なぜか。


 楽しく踊りまわるなかにあたしは入りたかったのか?

 わからない。――そんな問いさえも、わからない。分析が不十分なのだ、まだ。


 けど、あたしはたぶん、……コロとかいう犬がずっとずっと不可解なバグの記憶みたいに残っているの、あたしはそう、分析している。



 だって。あたしを、振らせた、犬だ。……ある意味女よりタチ、悪い。

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