第13話

何も、本当に電流が流れたわけではなく、将来的に電撃文庫から刊行されたいという邪念の現れではない。言うなれば、最上級の悪い予感。凶兆である。手に取るように、ありありと一連のシーンが脳内を駆け巡った。というのも、我々ミステリー研究部は(というか僕と鈴木は)、作家志望の初代部長•鈴木 亮太りょうたの指導のもと、古今東西のミステリー作品を紐解き、その成功定式を書籍やアニメーションという形で己のミステリー作品に昇華させる活動を日々行っている(と同好会作成届には書いた)。その一環として、世間を騒がす実在の怪盗の犯行の分析も行なってきた。実体は、空き教室で本読んだりビデオ見たり宿題やったりしているだけではあるが…。当然、『犯行の分析』などというものも高校生ガキのお遊びレベルで、はじめは部室空き教室の黒板に白チョークで日本地図の外観を描き、犯行現場をぐりぐりと赤丸で塗り示したシンプルなものだった。しかし、それだけで終わらないのが鈴木という男。いつからか【予告状】や事件前後の新聞記事、ネットニュースを出力したものなどを黒板に貼り付けるようになった。僕との『賭け』の結果なんかをメモすることもある。

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