第12話

「大榮博物館にも、胡弓博物館にも、ルーヴィル美術館にだって『呪いのダイヤ』のひとつやふたつは眠ってる…。それだけの理由で世界最大級の天然ダイヤモンドを見逃したりはしねえよ…。えへん。宝石には、光を綺麗に反射させる為のカットを施すだろぉ?それが、何ともお粗末な出来栄えでだなぁ…。下手な上に大胆ってのがいけない。体積で言えばデカイんだが、いざ整った形に作り直そうとすると幾つかの小ぶりな石に分けるしかなくなるらしい。つまり、『呪いのダイヤ』の上に宝石としても二流ってわけ。」

ふむ。まさか、鉱物にシンパシィを覚える日が来るとは…僕の人生もわからないものだ。まあ、僕の場合不運は全て我が身に降り注ぐわけだが。スっと腕を伸ばして僕は最後の一枚を手にした。よく見ると、それは例の『穗須戸現代美術館』のものじゃないか。必要事項が箇条書きされたシンプルな作りで発行日は1ヵ月以上前のようだ。ナニナニ…募集人数は3〜5名。業務内容は主に外壁の清掃、かあ。日給も悪くない。なるほどなあ。何とは無しに文面に目を走らせながら、四隅を画鋲で穿っていく。えいやっと最後の画鋲を押し込んだとき、唐突に僕の体に電撃が走った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る