第11話

意外にも、安岡先生も手伝ってくれるということでA4紙の山を2つに割った。(忘れちゃいけない、もともと先生の仕事だ)。

しばらくは2人とも無言で親指に力を込めていだが、1人あたり20枚近くあった広告が半分程度になる頃に先生は口を開いた。

「あのダイヤはな、持ち主に不幸をもたらす、所謂『呪いのダイヤ』らしいんだ。」

僕は殊勝げに頷いただけだったが、先生は上機嫌だ。

「胡散臭さは筋金入りだぞ。何しろ、あのダイヤ自体、名前の通り水精の囁き声が結晶化したものなんだぞ、くひひ。囁いた水精てぇのが、大層色を好む男性、もとい男精であったらしくてな。女性の持ち主は老いも若きも幸運を授かり、男性は不運な事故や不審死に見舞われるそうな。」

『呪いのダイヤ』か…。そんなものが僕の自宅から5kmと離れていないところにあったなんてびっくりだ。僕はそうゆう迷信は信じないタチだけどね。だって信じたら怖いじゃないか。

「先生、今まで、男性の所有者はどんな不幸にあったんでしょうか?」

先生の目が泳ぐ。

「……………枚挙に暇はない。」

…知らないみたいだ。

「だ、だが、呪いの噂があるのは本当なんだぞ。『水精の囁き』がネックレスでもブローチでもなく、ティアラに埋め込まれているのだってなぁ、誤って男性が身につけないために女性用の宝飾具に仕立てたんだって……。」

こくり、と僕はまたひとつ頷いて、

「だから、真っ当な美術館には避けられたってことですか?」

すると。先生はちょっと気まずそうな顔になって、

「そうだったら話はおもしれえがな……。」

歯切れ悪く言葉を切る。

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