第10話

「いんや、これでポストって読むんだ。『ポスト現代』美術館って意味なんだろうな。」

安岡先生は『我が意を得たり』という顔つきで語り出した。

「S駅西側の、大通りの突き当たりにあるんでしたっけ…?」

「お、よく知ってるな!俺のおすすめはな、『水精の囁き』っていうでっけぇダイヤなんだぜ。こんな田舎の美術館には勿体ないぐらい貴重なシロモノでな。まぁ、逆に言えば『水精の囁き』以外はイロモノ揃いで大したことないわけだが。くひひ。古くは西欧の王侯貴族に受け継がれていたらしい、由緒ある一品がどうして『ポスト現代』つう名の美術館おもちゃ箱に展示されているか気にならないかぁ?お前さえ良ければ作業の続きをしながらでも教えてやっても良いが、どうする?ミステリー研究部の副部長さんよ。」

先生の最後の一言で疑惑は確信に変わる。『穂須戸現代美術館』の『水精の囁き』こそ、かの怪盗が予告した次の獲物であるらしい。頭の中に今朝の登校シーンVTRが再生される。『ミス研の心得(作:鈴木)』を朗々と読み上げながら興奮する鈴木。笑って取り合わない僕。二人とも自説を曲げず結局『賭け』に落ち着いた様子を思い出した所で、

「伺いましょう。」

僕は恭しく頭を下げる。コーラより怪盗の方が鈴木は好きだ。

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