第7話

「っ痛!」

画鋲で指を刺したんだ、と認識する頃には真っ赤な血がぷっくりと浮かび上がって来ていた。無意識ゆえに少々声量が高かったみたいで、“監督席”なるパイプ椅子に腰掛けてうつらうつらしていた安岡先生が飛び起きる。A3用紙を丸めて作ったメガホンが床に転がった。

「田中?どうした!?…なんだ、押しピンを指に刺しただぁ?ったく、近頃のガキは押しピンもマトモに扱えないのかよ。」

なんてぶすくさ言う先生を無視して、傷口をティッシュで押さえることに全集中することに決めたが、内心はなんだかもう半泣きだ。何が悲しゅうて放課後の廊下で、画鋲を指に刺して、若者代表で叱責されないといけないのか。グラウンドの方角からは運動部の「「S高、ファイオ、ファイオ……」」なんて掛け声が聞こえてきて、なお一層悲しい気分になる。きっと彼らみたいなENJOY青春★ボーイズが、僕の分まで代表して褒められているに決まっている!大体にして!僕が今さっきまで額に汗して掲示板に磔ていた貼り付けていたこのアルバイトの募集広告だって、彼らがデートの軍資金を得るためにあるようなものじゃないか!う〜、もう我慢出来ない!

「先生!僕もそろそろ部活がありますので!!」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る