第6話
結局、僕と鈴木は教室と職員室を二往復することになった。クラスで配布するプリントを体の前に抱える僕達に色々な先生方から声が掛かる。
「お疲れ様、頑張って!」
など温かいエールを受けることもあるがそればかりじゃない。
「君たち、1年B組の生徒だね?丁度良かった。この宿題のテキストも一緒に返却して貰えないかな(ニコニコ)。」
なんていうことも多々あってその度に両腕に掛かる40(人)×nグラムほど重量が増す。
そんな時は大抵、
「安岡センセのクラスは優秀な生徒さんがいて羨ましいですねえ。」
「いやいや、ホントに。教師冥利に尽きるってもんですよ。今日だってこいつら、自分から『何かお手伝いすることはありませんか?』って。常々ぇ主体性の大切さを指導しているのですが、少しは生徒の心に響いてるのかと思うと嬉しい限りですねぇ。」
「「あはは、おほほ」」
なんて会話がセットになっていて、鈴木なんかは小さく「ケッ」って漏らしていた。
15分後—教卓に手を付いて肩で息する僕の姿はまさしくいつも通りの光景といって良い。いつもと違うのは、同じ仕事したにも関わらず涼しい顔の鈴木が横にいること、
「二人ともありがとな!」
などと珍しく先生がダミ声で礼を述べたこと、そして、
「そうだ、田中には放課後にも手伝って貰いたいことがあんだ。」
僕って、今日ツイてないと思わない?まあ、ツイてないのはいつものことだけれど!
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