第4話

冷や汗を流しながら『真説 世界史』のページをパラパラめくる僕に、クラスメイトの視線が刺さりだす。クックッグフ、左隣から押し殺した笑いが聞こえるう…。スッと、前の席の女子が体を右にずらす。身体の影からラインマーカーがうっすらと光る教科書が覗かせ、トントンと長い指が下隅のページ番号を指し示す。

「田中ぁお前、ちゃんと授g」

「1851年にイギリスが工業社会の実現を誇ってロンドンでひらいた世界初の万国博覧会には、40あまりの国から……その後……さらに……国際オリンピックが始まった。」

「はい、そこまでぇ。」

我らが1年B組の担任でもある、社会科教師はちょっぴり不機嫌な顔で黒板に向き直る。どうやら正しい箇所を読み上げていたらしい僕は、ほっと安堵する。ふぅ。流石にそれからは授業を真面目に受け、程なくチャイムの福音が校舎に響いた。今日の授業もこれで終わりだ。

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